放課後は 第二螺旋階段で

モバイルでは下部のカテゴリ一覧を御覧ください。カテゴリタグによる記事分類整理に力を入れています。ネタバレへの配慮等は基本的にありません。筆者の気の向くままに書き連ねアーカイブするクラシックスタイルのなんでもblog。「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」

Fate stay/night Heaven's Feel 第一章 presage flower を最速上映で見る

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www.fate-sn.com



このblogはネタバレへの配慮はほとんどありません。何故ならば書いた自分でも忘れる位の未来に読んでも思い出せるようにするためです。(10年以上前に原作が出ている作品なのでネタバレも何もないかもしれませんが)

  • 鑑賞者の状況:DEEN版TVアニメ・ufotableUBWFate/zeroアニメ・Fate Grand Order終局特異点まで・PCゲーム未プレイ・2004年の発売当時はノベルゲームに全く興味がなかったが知人は皆プレイしているという空気を過ごしてきた。結論から云えば理解度が全く足りていません。
  • 今作の最速上映は2017年10月14日0時ちょうど開始。終了時刻は2時10分ごろ。Fateシリーズは作中の雰囲気的に夜に見たくて、可能な限り深い夜を目指して、結果この0時開始の回を見る事を決めました。特に最速狙いという訳でもなかったのですがしかし、非常によい体験となりました。
  • 劇場は0時開始とは思えぬ人の多さ。満席です。オタクはオタクが好きな映画を見に行くとオタクが多すぎて疲れてしまうのですが、今作はそれが特に激しい。そして非常に暑い。10月設定の空調が人の多さに負けているのか、室温最高28度は確実に超えていたと思います。あまりの暑さで終盤は「この映画がもうあと10分長かったら熱中症になっている‥‥」と思う程の状況。治安が良いとはいえない立地の映画館で深夜というのもあるせいか、Fate Grand Order で大幅に増えた新規女性ファンはほぼ0で男子が9.5に女子が0.5くらいの比率感。オタクの映画なので物販への意欲は旺盛。自分もドラマCD付き豪華版パンフレットを購入。


 劇場の様子は以上として本題の作品に移ると‥‥

温かな日々を夢見た。
薄氷の平穏。積み木の天秤。瓦礫の上の揺籃。
眠りにつけば二度と訪れないような、
残酷で優しい昨日。
─────Heaven's Feel

  • まず驚かされたのは上映時間120分超でも聖杯戦争や令呪に関する解説全カット。30分近くある長いアバンタイトル間桐慎二・桜・士郎の数年にも渡る微妙な関係を掘り下げた後に始まるOPの背景で処理するという合理化ぶり。こうしないと間に合わない上、そもそもFateルート・Unlimited Blade Worksルート(それぞれDEEN版アニメ・ufotableTVシリーズ相当)を知らずに見に来る人はいないという割り切りでしょう。それにしても大胆。
    • 描写を掘り下げた結果、慎二がかなり感情移入できるキャラクターになっています。自分自身の一般社会での有力さと、より強大なものの前での無力さを両方知っている。いっそ慎二が尊い
    • この前日譚部分がアニメオリジナルって本当ですか?
  • ちょっとした表情で複合的な感情が読める作画・演出の極まりようです。
    • 今作、すべてが「極わまっている」
  • TYPE-MOON追いかけてない自分では見るのに力不足の感ありました。
    • Fateの映画」というより「TYPE-MOONの映画」です。
  • 日常シーンがかなり落ち着いた雰囲気で少し古い00年代の深夜アニメのようなゆるやかさがあるところ、DEEN版の長所を取り入れた感です。藤村大河はすばらしいキャラクター。
    • 会話・描写のインモラル度高いのはR-18原作の劇場版作品らしくて良い‥‥。
    • 言峰が激辛麻婆豆腐を食べる場面が作中ほぼ唯一のギャグなのですが、それでもやたらとねっとり描かれると血と臓物にあふれる今作の世界を思わせるものがあるんですよね‥‥。完全には気を抜けない。
  • ufotable作品はデジタルエフェクトの使いすぎで「味の素かけすぎ」(綺麗だけれど何を見ても同じ)と思っておりましたが今作でバランスが良くなった感あります。
  • 光と影、夜の闇の描写がすばらしいufotableありがとう‥‥。
  • セイバーさんがワンパンでわるい慎二ライダーを撃破。ご飯いっぱい食べてるだけあってお強い。圧倒的なまでに高い戦闘力(この作画・演出の説得力がまた凄い)を持つセイバーはサーヴァントとの戦いで負ける気がしません。そのセイバーでさえほんの数秒耐える程度の抵抗のみで無力化してしまう不可思議な「影」のメタ脅威的な感覚。
    • 影に飲まれたセイバーが聖杯に気づいて突然目の色を変えるその不気味さも良いです。
  • ランサーvs真アサシンのバトルはPVで使われているだけあって凄すぎです‥‥作画好きでも手描きの良さとCGの良さをうまく合わせた今作のような凄さを言い表す言葉はまだありません。
    • パンフレットにメイキングを収録してくれてありがとう‥‥。
  • Fate Grand Order CCCイベントに出てきたエネミー、シェイプシフターがこう恐ろしい脅威だったとは‥‥。虚数魔術で全てを消し去っていく。SF的で「見慣れた街の誰もいない夜闇の中で人知れず戦っている者たち」という今シリーズのイメージとかけ離れています。
  • クーフーリンのキャスター要素、もしかすると今作で初めて描かれたのでは‥‥?*1ほか「矢避けの加護」の表現が非常に格好いいです。
  • アサシンの宝具「妄想心音」(ザバーニーヤ)が発動してから回避不能の必殺ぶり。
  • 復活したライダーさんの三次元的な戦闘力、一体誰がマスターなんだ‥‥。
  • 真アサシンが偽アサシンを体内から食い荒らすという異様な出現方法からの圧倒的なまでの殺傷能力(≠強さ)によるサーヴァント多数の退場の早さで、Fateワールドを閉じるために作られたシナリオである事を強く印象付けられました。
    • キャスターのルールブレイカーが「触れるだけでマスターとサーヴァントの関係を断ち切る」という最も危険なものであると分かっても、しかしほとんど何の役にも立たず倒れていく‥‥
  • 間桐臓硯がこれほどまでに圧倒的強敵だったとは‥‥。ギルガメッシュですらしょせんゲームのコマにすぎない。
    • 今作「だったとは‥‥」が非常に多い。英雄であるサーヴァントでさえほとんど抵抗する余地すらないままに次々葬られていく。今までの全てを覆すように。
  • すべてのサーヴァントとの関係が絶たれ命拾いした士郎の元に桜だけが残って終わるのはつまり「正義の味方を目指すのではなく、普通の人間としての幸せを噛みしめて生きろ」という意味でしょう‥‥。
    • いい所で区切っています。
  • 雪の中一人待つ桜は幻想的で美しいが、しかしあの服装寒すぎでは?
    • 「寒い中で待っている私」に自惚れるような桜だという意味合いも?
  • テーマ曲の Aimer - 花の唄 が素晴らしい。作詞作曲編曲:梶浦由記

花の唄/ONE/六等星の夜 Magic Blue ver.(期間生産限定アニメ盤)
花の唄/ONE/六等星の夜 Magic Blue ver.(期間生産限定アニメ盤)(このバージョンにのみイントロが短く初めからクライマックスの映画版アレンジが収録されています)

花の唄

花の唄

  • Aimer
  • J-Pop
  • ¥250


  • 第二章 lost butterfly が明日や来月ではなく2018年だなんて‥‥待ちきれない。
    • Fateルートですら長すぎるなんて思わないで、手元にあるPC版をラストまで完走しなければ。

*1:追記:ufotableのアニメUBWの終盤で遠坂を探すために石に魔術をかけて動かすシーンがあるようです。

冷戦の答え合わせ 「米ソ原子力艦隊 光文社文庫ミリタリー・イラストレイテッド5」

 これは米ソ冷戦もクライマックスに差し掛かった1984年刊行の本です。スターウォーズ計画こと SDI計画が発表されたのが1983年といえばその時期が分かるというものでしょう。当時10代だった方の思い出トークによく出てくるので読みました。

 当時分かっていたソ連海軍情報が集約されていて、結果今の感覚とかなり異なった装備体系が採用されている様子がよく見てとれるのが面白いところです。


 この本で最大の脅威として取り上げられている空母クレムリン(現在のアドミラル・クズネツォフ)が建造されたのはこの頃なんですね。「クレムリン」は今までにない5万tクラスの超巨大空母であり、さらに原子力ミサイル戦艦キーロフ級への驚きから、この技術を空母に転用すれば1990年代後半には原子力空母さえ出現してもおかしくないという感覚があったようです。

 艦載機は偵察衛星の写真に写っていたMiG-27艦載型・沿岸任務を重視するソ連であるための回転翼対潜哨戒機・何らかの固定翼早期警戒機程度が想定されており、その後にMiG-29という「F-16を意識した戦闘機」になるのではないかとされています。*1現実には当時未発見のSu-33フランカー*2とシュトルモヴィク系のSu-25となりました。ところで、現在搭載されているSu-25は沿岸任務で揚陸部隊を撃破するといったシーンを想定しているのでしょうか?艦載機としては航続距離もスピードもなければ搭載兵装の射程も短い機種なので気になる所です。

 対するアメリカ海軍の新型艦艇の目玉はオハイオ級戦略ミサイル原潜となっております。


 アメリカ海軍の水上戦闘艦は現在のようにオールイージス化がほぼ完成してアーレイバーク級とタイコンデロガ級ばかり、空母もニミッツ級ばかりといった単純化された編成でなく、テリア・ターター対空ミサイルシステムからスタンダードに換装した原子力巡洋艦群が主力となっています。今はもう絶滅した艦種ですね。ほか、その下に多数のスプルーアンス級オリバー・ハザード・ペリー級、ノックス級など対潜特化・対空特化に分かれた艦艇多数が続きます。

 攻撃型原潜はこの段階ですでにロサンゼルス級に集約されているのだから、このクラスを使った対水上戦能力への自信は相当なものだったと思われます。アメリカ海軍は2017年現在でも対艦ミサイルは音速超えられないハープーンで済ませていますしね。水上艦艇はまず潜水艦、次に空母艦載機で沈める。この考え方が徹底しているのでしょう。


 ソ連海軍の艦艇はクリヴァク級やウダロイ級など対潜特化型に力を入れているようです。核を搭載した潜水艦が何よりも脅威であるため当然といえば当然の方向性ですね。ですが現在の感覚では防空能力のあまりの低さに不思議な印象を受けます。対艦ミサイルの飽和攻撃が有効であると明らかになったオケアン70演習から13年程度の段階ですが、ソ連が2000年まで続いていれば対艦戦闘特化型のスラヴァ級が多数建造されていたのでしょうか?それでも物足りないとキーロフ級が大量建造されていたのでしょうか?巡航ミサイル潜水艦を多用する独特の編成がさらに進んでいたのでしょうか?今となっては分かりません。


 SLBMに関しては、今標準化したトライデントD5やR-39のような射程8000km超級ではなくポセイドンC3など5000kmクラスのものが多いため、戦略ミサイル原潜はやや前進気味に配備されており、それを攻撃型原潜・対潜水上艦・対潜哨戒機部隊で迎撃するといった想定が多いのが現在の感覚と異なっている印象です。本国の近海で防空圏内の「聖域」に潜るか、対潜哨戒機も届かない大洋の中にいる動きはまだ一般的なものになっていないようです。


 潜水艦関係で何よりも異様なのは、SALTの規制がかかる前に全速力で核弾頭搭載型巡航ミサイルの配備数を増やして既成事実を作ろうとする様です。規制対象となる「核兵器の運搬手段」には、ICBMSLBM爆撃機が含まれていても巡航ミサイルは除外されていたのです。第二次世界大戦以前、ワシントン海軍軍縮条約以降・ロンドン海軍軍縮条約以前の重巡洋艦量産無規制時代のようですね。攻撃型潜水艦に搭載されている巡航ミサイルは投射弾量の少なさの割に高コストではないかと感じていたのですが、元々はこういった流れがあったのですね。

ほか小ネタ

  • 600隻艦隊構想における戦艦の復活はベトナム戦争での艦砲射撃の有効性の影響大。核搭載の巡航ミサイルも多数装備し圧倒的対地攻撃能力を誇ります。
  • 海上自衛隊設立当時アメリカは日本に軽空母を供与するつもりでいて、S2Fトラッカーを使った着艦訓練まで受けさせたという話が気になります。これは維持費のあまりの高額さでなくなりました。
  • 潜水艦母艦が洋上でジェームズ・マディソン級戦略ミサイル原潜ダニエル・ブーンのトライデントC4を交換する写真が掲載されているのですが、この種の大規模な潜水艦母艦は現在も運用されているのでしょうか?
  • ソ連の典型的対潜哨戒機、IL-38メイは今どれ位運用されているのでしょうか?Tu-95の対潜哨戒型Tu-142が主流となっている印象があります。この機種、プロペラ機ですが想定巡航領域を考えるとP-3CよりもP-8あるいはニムロッドに近いですよね‥‥多分。
  • このblogにおけるミリタリー系の話題の空白期間に、私の関心が第二次世界大戦そのものから戦後すなわち第二次世界大戦の総括、そしてそれを踏まえての米ソ冷戦体制の確立へと移っていったため、若干孤立した記事になっています。

*1:MIG-29の西側における発見は1986年のフィンランド。それ以前は情報があいまい。

*2:Su-27の西側における発見は1987年のノルウェー