放課後は 第二螺旋階段で

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「ユリイカ 2004年4月号 特集:押井守 映像のイノセンス」

ユリイカ2004年4月号 特集=押井守 映像のイノセンス
Amazon.co.jp: ユリイカ2004年4月号 特集=押井守 映像のイノセンス


 ついに自分もサブカル蟻地獄へと足を踏み出した。
 「イノセンス」評論につられて初めて「ユリイカ」を読了。
 この号は「イノセンス」公開にあわせた特集で、「イノセンス」の読解を中心に、押井守監督の全作品を評論とともに紹介。「アヴァロン」以外の実写映画や「ご先祖様万々歳」というアニメ作品はこれで初めて知りました。
 この本を読んでいて評論の内容そのもの以上に思い知らされたことは、評論家と自分とでは見た作品の量に格差がありすぎて、自分は文章を書くということ自体に資格があるのかさえ怪しいということ。この本の読み方さえ、何だかおかしかった気がします。


以下各執筆者ごとの自分が特に気になった要素と感想。

茂木健一郎「魂に対する態度」

 「クオリア」の人の評論。「クオリア」の概念を理解できずにいる自分から見ると、内容以上にこの人の言語センスが素晴らしかったという印象。独特の詩的雰囲気とノリの良さがおもしろい。
 「クオリア」という概念についてはもっと知りたいと思っているのですが、同著者の解説本が多すぎてどれを読んだらいいのか分からずにいます……

森川嘉一郎「黄色い都市」

 イノセンス作中建築物の偶像性と、古来から宗教で禁止され続けた人形を作るということの意味と、イノセンス作中世界がなぜ黄色いのかについて。
 黄色にした理由が「そうすると大抵よく見えるから」だったのはシンプルすぎてショック(笑)

冲方丁「卵を割った人」

 「天使の卵」の思い出と創作につながる思考についての話。「マルドゥック・スクランブル」を卵尽くしにしただけある「卵」への思い入れぶりが素晴らしく、「天使の卵」がどうしても見たくなってきます。

大塚ギチ「『イノセンス』漂流」

 内容からすると異例な宣伝が為された映画「イノセンス」を劇場で見るということを描いた小説仕立てのノンフィクション。こういうのってアリ?面白かったけれども。

パク・ジュンスン「『攻殻機動隊』に見るアイデンティティ問題」

 「攻殻機動隊」で日本政府の重要な部局にいる素子やバトーが西欧型のボディを使っているのは何故か?自分の肉体も、アイデンティティも改編可能な世界で国家・民族・人種アイデンティティを確立できるのは何故なのかという問題提起と、作劇上の都合であろうという一応の回答。
この「徹底していない」という視点は言われて初めて気が付いた。目から鱗の発想。

特集以外の記事

 「詩と批評」という雑誌テーマの通りちゃんと詩が載っている!何故か驚きを感じる。自分も応募してみたいと思う。
 この号で結果と選評が発表されている「中原中也賞」の受賞者は自分と同い年で少しくやしかった。受賞に対するコメントで、詩で賞をとるだけあって突き抜けているから敵わないとも思いました。。
 巻末のエッセイは、小二病患者が頻繁に使用する「バリア」についての思い出と、「半透明で光るバリア」が実用化されたら世界は一つ美しくなるだろうということを割とまじめに書いたもので、感心しながら笑いました。