放課後は 第二螺旋階段で

モバイルでは下部のカテゴリ一覧を御覧ください。カテゴリタグによる記事分類整理に力を入れています。ネタバレへの配慮等は基本的にありません。筆者の気の向くままに書き連ねアーカイブするクラシックスタイルのなんでもblog。「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」

「奇想天外な戦争の話―信じられない戦場の出来事40話」 広田厚司


 同著者が多数出している「信じられないが、本当だ」モノの第4号。
 今回は、信頼性確認不能なものの戦争の大勢とは関係のない気軽に読める欧州戦線のスパイ中心にエピソードが全40。昭和時代に出ていた雑学本のような、ちょっと懐かしい感覚。
 有名な作戦の裏にはスパイが必ずいた…それが役に立ったのかどうかは分からないけれど。いることはいた。

 ヒューミント系のエピソードを多数まとめて見て、借金をしている人間はおもしろいくらい簡単確実にカネで操られるのに気づいた瞬間、心が少し、ざわ…ざわざわ…そういう噂が立っている人間を狙い撃ちで落としています。

以下、まとまりがあまりない本に従ってのまとまりのない一行メモ+感想集

 諜報関係のドイツ軍機はモスクワ近くまで侵入し、連合国軍機はポーランドまで侵入し、離着陸までして乗員や資料のやりとりをして、それでも迎撃を受ける描写が全くといっていいほど無く、防空システムの隙間がかなり大きいのは少し不思議な感覚。


 以前このシリーズの本について「ドイツのスパイはあまりにも簡単に識別されてバカみたい」という旨の文章を書いたのですが、これはドイツのスパイ養成学校の教師にイギリスのスパイが混ざっていて識別のきっかけになる動作を埋めこまれていたのが原因であって、ドイツ人スパイ全員が元からの間抜けではなかったようです。(けれども、習ったことは何でも疑わず正直に再現してしまうのはバカ正直すぎるか…)


 一部で有名な「猫爆弾」は日本ではこの本が元ネタのようです。猫は水を嫌うので対艦航空爆弾にぶら下げれば戦艦に向かって着地しようとして確実に命中するはずという兵器。イギリスの動物学者のアイデアで本国では却下され、アメリカで猫を高所から突き落とすテストを行ったところ気絶してしまい、仮に動けたとしても爆弾の質量に対して猫は軽すぎるので効果がないという結果。(猫の動きを感知しての操舵など無く、単純に体重移動のみ)


 邦訳単著『ドイツ夜間防空戦―夜戦エースの回想』もある夜間エースパイロット、ウィルヘルム・ヨーネンのBf110が航法ミスでスイスに侵入し強制着陸、その際に暗号書と新型レーダーリヒテンシュタインSN2を搭載していたため機体を爆破するというスコルツェニーの失敗した特殊作戦も登場。この事件はBf109Gを21機売却と引き換えに駐在武官の目の前で焼却処分され完結。中立国に着陸したという情報入手と同時に亡命抑止のために乗員の家族を国家反逆罪容疑で刑務所に入れるというナチスの即決アイデアに感心してしまいます。


 アルデンヌの戦いに現れたスコルツェニーの偽米軍で集めるのが最も難しかった兵器は、ただのジープ。M10戦車駆逐車はパンター改造でそれらしくできるもののジープは無理で、鹵獲品は走行性能の高さから前線兵が手放そうとしないため。


 スターリンの息子として有名な空軍士官ヴァシリー・スターリンが戦後最初に与えられた任務は、オイゲン・ゼンガーの誘拐。大気圏と宇宙の狭間を水切り飛行するスペースプレーン爆撃機「シルバーバード」の研究をしていたロケット学者。勝手に死亡と判断して報告書を送り、パリで遊んで暮らしてる間に技術はアメリカ側へ…
 スターリンの息子が空軍士官だったことは、ステパン・ミコヤン(政治指導者アナスタス・ミコヤンの息子・Migのアルチョム・ミコヤンの甥)の回想で知りました。特殊作戦は苦手でも管理職としては非常に信頼されていた模様。
「兵士たちとの対話」 ステパン・ミコヤン


 Amazon.co.jpのカスタマーレビューに「表紙カバーと帯には「マニラ戦の日米人質交渉」が書かれていますが、何故か本文にその記事はありません。」とあるのですがこれは誤りで、実際には収録されていますます。第28話「米第一騎兵師団ブラディ中佐の奇妙な体験―サント・トーマス大学構内の米人抑留者を救え」がそれです。

同著者による「信じられないが、本当だ」ものの感想エントリ

第一作:「恐るべき欧州戦―第二次大戦知られざる16の戦場」 広田厚司 - 放課後は 第二螺旋階段で