放課後は 第二螺旋階段で

「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」 筆者の気の向くままに書き連ねるクラシックスタイルのblogです。ネタバレへの配慮等も基本的にありません。

あまりにも数が少ないため名前付きで個体識別されている『世界の傑作機 No.147 ツポレフ Tu-160 "ブラックジャック”』

世界の傑作機No.147 ツポレフTU-160“ブラックジャック”
Amazon.co.jp: 世界の傑作機No.147 ツポレフTU-160“ブラックジャック”

 人の造りし白鳥 ツポレフTu-160
 翼下搭載物無しのクリーン状態で航続距離1万kmを越える量感ある美しい姿。
 人類史上最大の可変翼。それを支える強固な構造。
 搭載エンジンである クズネツォフNK-321 のアフターバーナー推力は2万5000kgと世界最強。
 主翼最後退位置で胴体にかかってしまう翼後縁部は境界層板あるいは増加垂直尾翼として上面に折立てしまう大胆な発想。
 ステルス塗料により黒く塗装されたエアインテイクはアクセントとなる。

 製造34機で可動状態にあるのはわずか14機という数字は時代性のズレに翻弄された悲劇か、あるいは喜ばしき武装解除か。

 第一線現役機のため曖昧な部分もありますが、しかしそれでも本書は日本語圏で最も詳しい資料本でしょう。

 核弾頭搭載を前提として設計された戦略空対艦・空対地ミサイルまとめ記事も付属しています。

  • 現存機が少ないため個体名が存在する珍しい航空機。他には B-2 くらい?
    • ソビエト崩壊時のウクライナ残存機がアメリカの要請により次々と解体処分されたのはロシアに感情移入して見れば悪夢以外の何ものでもない!
      • 現在は全機が長距離航空兵団直下の 第6950航空基地(エンゲリス) に配備中。
  • おそらく北極迷彩の白い塗装はひたすらに美しい*1。試作機時代は無塗装銀でこちらは過去との連続性、ツポレフの歴史を感じさせる。
  • マッシヴとさえいえるこの機体内部の一体どれほどの部分が燃料タンクになっているのか、デザインにおいてステルス性はどの程度考慮されているのかについては未解明。
  • 垂直尾翼もオールフライングテールという珍しいデザイン。ただし水平尾翼より上の部分のみ。
  • 可変翼機が空中で受けている荷重は可動橋並という表現は言われてみれば納得。
    • 可変翼による空力最適化は巡航高度と速度の幅が広い攻撃機のためにある。
      • 亜音速域での揚抗比は ボーイング747 の 17 を上回る 18.5〜19 に達するという。数十年後に開発されるであろう ボーイング797 はブレンデッドウィングボディ、もしかすると何らかの可変翼となりうるかも?
  • 設計審査でツポレフ以上の有力候補だった スホーイT-4MS*2 は一見奇抜なデザインをしているが、概念的には ツポレフTu-160 との差が僅かかもしれない。胴体部の幅を縮小、外翼部を延長、コクピット部のフラットさを軽減、尾翼を十字型に修正すればそれだけで(それだけで?) Tu-160
  • ロシア機伝統のコクピット扇風機はガード類など一切無しで周囲にスイッチが配置されているので少し怖い。与圧はされても冷房は無い?
  • Kh はロシア語のミサイルを表す頭文字 X を転写したもので「ハー」と発音される。
  • MIG-15 そっくりで長年気になっていたミサイルは KS-1 (AS-1 Kennel) と判明。
  • Kh-55SM (AS-15 Kent) はミサイルにもかかわらずコンフォーマルタンクが付属するという行き着くところまで行ったデザインにより3000kmの射程を達成。
    • さらに一段改良された三角形断面の Kh-65SE はコンフォーマルタンクを機体構造と一体化して搭載燃料を増加したものと説明されていますが、射程は SALT II による制限を受けないために3000kmから600km程度まで意図的に短縮されていて飛行速度も飛躍的に向上しているというわけではなさそうなので、ステルス性向上のためのデザインなのではないかと思われます。

*1:3ページの意外と珍しい真上から撮影された姿は特に!

*2:こちらのサイトを参照。 http://www.testpilot.ru/russia/sukhoi/t/4/ms/t4ms_e.htm