放課後は 第二螺旋階段で

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読者も特殊戦の一部 / 「アンブロークンアロー・戦闘妖精・雪風」 神林長平

これは死に等しい状態だと深井零は感じる。仲間からの断絶、コミュニケーションを断たれた状態だ。通常、完全にそれを実現するには、死ぬしかないだろう、他人のすべてを一瞬にこの世から消滅させる力が自分にない以上は、自分が消えるしかない。

雪風にとって、この世界は、無人だ。人間に向けた意思、志向がない、と言うべきか。そうだ、人間だけでなく生物一般に対する志向というものがまったく感じられない。この視界はそれを反映したものだ。

 ヒトと戦闘機。

 異質な存在は対ジャム戦というただ一つの目的のために複合材のように一体化して新たな力を得た。

 だが雪風は満足しなかった。

 雪風、遂に人類に搭乗。

 深井零はどうしようもなく人間であり機械にはなれない。機械知性体との異質さから生まれる強度を失うため無意味でもある。ならば人としての性能を上げる他ない。

 雪風にとって最高の対人偵察システムとしての任務を果たすために「おれには関係ない」から「知りたい」へと踏み出す。

自分は、クーリィ准将という人間を、まったく知らないのだ。自分の生命を預けている指揮官だというのに。

 リアル世界という新たな世界認識と雪風の世界認識は非常に読みづらいが、しかしその辛さは作中世界で起こる戦い―世界を生み出す意識の構造―と通じるものであり、読者もジャムと戦うことになる物語である。