放課後は 第二螺旋階段で

「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」 筆者の気の向くままに書き連ねるクラシックスタイルのblogです。ネタバレへの配慮等も基本的にありません。

発想は理論に対して常に先行する。それなら…… 「技術屋の心眼」 E.S.ファーガソン

技術屋(エンジニア)の心眼 (平凡社ライブラリー)
Amazon.co.jp: 技術屋(エンジニア)の心眼 (平凡社ライブラリー)


 技術的な問題は解析的に解決されると考えられがちで、教育システムもそれに最適化されているが、実際は図像的・幾何学的な発想、直感から答えが誕生している。それは定量的ではなく定性的な解決手法である。

 実は、エンジニアがある設計を行うにあたって好みによって下す判断の数は、芸術家のそれと変わらないほど多岐にわたっているのだ。

 そのため、設計法には「型」がある。型を知らなければ「型なし」だ。歴史的に著名な技術者が持っていた「型」の具体的な例をあげるならば、自転車技術者出身のライト兄弟が持つ「制御可能な不安定性・バンク・ロール機動」がある。

 「ハンマーを持つものには全ての問題が釘に見える」という言葉があるが、もしも全ての問題を釘の形へと上手く変換できるならばハンマーひとつで良いのだ。

 それほど十分な強度のある「型」を生み出すには実際の製作と運用の経験が必ず必要である。だがヒトの経験可能量には限度があるため、機構学により補われている。


 また、技術史は図像学・製図術の歴史でもある。ルネサンスの透視図から20世紀の完成された紙媒体製図、そして現代的なCADへ。

 コンピュータ援用設計はプログラマにより要素が切り分けられている。そのラインの適切性への留意は忘れぬよう。不適切な判断は不適切な解析よりも致命的な事態を引き起こしがちなものである。


 1916年生2008年没と20世紀のアメリカ工業と共にあった著者による広すぎるほどの話の展開と現代人に対する意識はまるでおじいちゃん先生のフリートークのようで、それそのものが愉快な本でもあった。

雑多なメモと感想の感想

  • 機構学の重要性はこの感想ほど強く書かれていなかったが、自分の読みと文章製作の流れによりこの形となった。「頭の中に工具箱をきちんと揃えて、使い方には熟練を」
  • ポール・グレアム系の人が書く「上手く出来るかは別問題でとにかく作れ」は、人類の目で定性的に理解できる美術的な図面を制作できないソフトウェア関係では格別に有効だろう。
  • エリア・ルールを発見したリチャード・ウィットカムは元々は超音速風洞の運用技術者だった。気流吹出ノズルの微妙な形状変更を8年に渡り続ける中で、超音速気流の性質―一種の機構学―を理解した。
  • 1828年英国土木協会憲章による工学の定義「自然界の主要な動力源を、人間の利用と利便のために支配する技である」