放課後は 第二螺旋階段で

「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」 筆者の気の向くままに書き連ねるクラシックスタイルのblogです。ネタバレへの配慮等も基本的にありません。

不撓不屈の 魔法少女まどかマギカ 第10話 「もう誰にも頼らない」

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あらすじ

 必敗のワルプルギスの夜出現直前、物語は別の時間軸へ。

 赤いメガネをかけた内気な転校生、暁美ほむら。それは今まで登場していた戦闘機械じみた彼女とはまるで別人であった。

 心臓病による長い入院生活から復学したため珍しい転校生だと皆に囲まれるが馴染むことはできず、薬が必要な身体のため引き離されて保健室へと連れられていく。その役割を果たしたのは、保健係の鹿目まどか

 これが全ての始まりだった。

 暁美ほむらは「焔」という名前の珍しさ、格好良さを褒められるが「名前負けしています」と答えることしかできなかった。まどかはそれに対して「せっかく格好良い名前なんだから、ほむらちゃんも格好良くなっちゃえばいい」と明るく勧めるのであった。きわめて健やかな人格の持ち主である。

 一瞬の幸福の後、数学の問題は全く解けず、体育は準備体操だけで倒れ、全くダメダメな自分を思い知ることになるのだった。

「格好良くなればいいなんてムリだよ。何もできない。人に迷惑ばっかりかけて、恥かいて、どうしてなの……私ずっとこのままなの」「だったらいっそ死んだほうがいいよね」「死んでしまえば?」

 精神に割り込みをかけてくるナニモノカ。空間がピカソの『ゲルニカ』のように異様なものへと変化する。

 魔女の精神攻撃を受けた暁美ほむら。そこに駆けつけたのは鹿目まどか巴マミ魔法少女コンビ。サクサクとかっこ良く脅威を排除。

 「クラスのみんなには、ナイショだよっ!」

 その後マミの家に招かれたりしつつ、しばらく魔法少女の戦いに同行。


 そして最終決戦。マミは死んだ!たとえ一人で敵わない相手だと分かっていても、まどかは戦わなければならない。嗚呼、まどかが行く……望まれることなく、浮世から捨てられし彼女を動かすもの。それは生きる意志を持つ者の意地に他ならない。

 「さよなら。ほむらちゃん。元気でね」

 まどかは全ての義務を果たして死んだ。


 素晴らしき仲間と、何もできないほむら。まるで第9話までのまどかを引き写したかのような状況である。

 ワルプルギスの夜に破壊し尽くされた街のガレキの上で、涙を拭い雲間から射す光に向かって顔を上げる。

 暁美ほむらの願い、それは「鹿目さんとの出会いをやり直したい。守られる私じゃなく、守る私になりたい」であった。

 既に死んでしまった者との関係性を0から作り直すという願いの結果、彼女には時間操作の能力が与えられた……

あらすじ2周目

 退院直前の病院で目覚めた暁美ほむら。手元にあるのはソウルジェム。それは今までの経験が夢ではない証拠だった。

 復学と同時にまどかの元へと走り「私も魔法少女になったんだよ!これから一緒に頑張ろうね!」と皆の前で言ってしまい赤面させるのだった。

 放課後、ほむらはまどかとマミの前で時間停止能力の実験を行う。DIOのザ・ワールドが最強なのはDIO本人やスタンドの腕力が有力なためであり、ほむら自身にはこれといった長所は無い。ゴルフクラブでドラム缶を滅多打ちにする程度の火力しかなく、使い所の難しい能力である。

 とりあえず爆弾の作り方を研究し、これを得物とする。


 そしてほむらにとって初の魔女戦。洗濯紐の上というとてつもなく動きにくい足場の上でも平気で走り続けるまどかとマミのコンビ。ほむらはそれについていけない。

 戦闘の合間、まどかの放つ矢で作った隙を突いて「マミさん!今だよ!」「オッケー!」の掛け声とともに、マミのリボン技でほむらのためのネット状の足場が組まれる。

 ほむら、時間を止めて足場を走る走る走る……よろけても前へと走る……まるでOP映像のまどかのように。魔女の元までたどり着き爆弾を投擲。時間停止解除。爆破。撃破。

 喜びを素直に目一杯表に出すタイプのまどかは「やったぁ!スゴイよほむらちゃん!」と、ほむらに飛びつくようにしっかり抱きしめる。

 仲間たちと肩を並べ、それぞれの技能を生かし、認め合い、強大な敵を撃破する。『ベルセルク』でいえば黄金時代篇のような喜び。


 それでもワルプルギスの夜との戦いの結果、マミは行方不明、まどかは致命的ダメージを負って魔女化してしまう。

 「伝えなきゃ。みんなキュウべえに騙されてる!」

 皆を戦いの運命から根本的に引き離すため、時間を再び巻き戻す……

あらすじ3周目

 ほむらは皆のその後の運命を説明するのだが、誰も信じないのであった。

キュウべえがそんな嘘をついて、一体何の得があるわけ?」「仲間割れでもさせるつもり?」「杏子とかいう奴とグルなの?」と疑うのはさやか。さらに、接近戦タイプの自分にとってほむら爆弾は危険で嫌だとも語る。


 次の魔女は第9話までの時間軸通り、さや魔女。杏子・まどか・ほむらのチームで挑む。ほむらは射太興業というヤクザの事務所で手に入れた銃で鉄輪攻撃を弾くことでまどかを救い、爆弾でさやかを焼殺することで勝利……

 通常空間に戻った後、友人を殺し続けなけばならないと分かった杏子とまどかが嘆く中、マミは突然ほむらをリボン技で縛り、杏子は射殺。

魔法少女が魔女を生むなら、みんな死ぬしかないじゃない!あなたも、私も!」

 そのマミをまどかが射抜き殺す。ドミノ倒しのように三人が一度に脱落。生存者、わずか二名。

「もうこんなのは嫌だよ」と嘆くまどかを「二人で頑張ろう、一緒にワルプルギスの夜を倒そう」と励ますほどに強くなったほむら。

 この経験は、さや死体を持ち帰る杏子に対する注意が非人間的であると指摘された際の「もちろん違うわ。貴方もね」の元となるものであった。


 そしてワルプルギスの夜襲来。二人は致命的なダメージを負いながらも、何とか勝利には成功。

 ほむらは「二人共々怪物になって世界を破壊し尽くすのも、それはそれで良いと思わない?」と提案してしまう。諦めないまどかはそれでも「守りたいものがある世界」を残すため、最後に残った一つのグリーフシードのエネルギーでほむらを回復させ、魔女化を防ぐために介錯を頼む。

 耐え切れず慟哭の中漏れた「まどか…!」という呼びかけに対して「やっと名前で呼んでくれてうれしいな」と返すまどか。

 これで、元ダメダメ人間ほむらはまどかと並ぶ所までたどり着く……

あらすじ4周目

 「誰も未来を信じない。誰も未来を受け止められない。だったら私は……」

 ほむらはマジカルレーシックで視力を回復しメガネを外す。髪を解き、一人で戦い抜く決意を固める。

 戦闘機械と化した今回は自衛隊の基地から火器を盗み、さらなる火力向上。

 魔女と接敵。即時間停止。迷いなくボルトを引いて初弾装填。M249ミニミ軽機関銃を腰だめフルオートで連射。即魔女キル。次の魔女と接敵。即時間停止。グレネードを投擲して即キル。


 一人の力で魔女を瞬殺し続ける程の戦闘力になっても、ワルプルギスの夜は手強かった。ミラーガラスのビルを投擲され炎弾を受け、第一話の夢の中のように苦戦するほむら。ここでエピソード終了し、第1話につながるかと思わせる。

 だがその時、1000m程はあろうかという遠方で、まどかがほむらを救うためにキュウべえと契約しようとしているのを発見してしまう。

 「まどか、そいつの言葉に耳を貸しちゃダメェェェェェ!」という絶叫、届かず。まどかは最強の魔法少女となり、ワルプルギスの夜を瞬時に撃破。同時に最大最悪の魔女化。

 努力の限りを尽くしたこの回も失敗に終わった。ほむらはそれでも戦い続けるとキュウべえに告げ、時間を巻き戻す。

あらすじ5周目以降の世界

 第一話の世界に到達。

「同じ時間を 何度もめぐり たった一つの 出口を探る あなたを 絶望の 運命から 救い出す道を」

 最後に流れたOPの後、ようやく鉄塔の上に全員が集結。

 無数の死と絶望と時間軸を越え、最終局面へ!


回想と感想

 2011年3月11日に発生した東日本大震災とその報道により、この回は関東圏ではTV放送休止。3月17日のニコニコ動画配信で見る人が多数派でした。震災前にこのエピソードを見てネタバレしないように心がけていた先行放送地域関西の方々は偉大です。

 元々放送地域外の私にとっては、関東と同タイミングになりネタバレの受け方がきわめて少ない状態となりました。


 初見時のメモはほとんど残っていません。あまりにも強烈で圧倒された状態でした。

 シナリオ・映像・演技・音響音楽等々、全てが極限まで高められていて、こんな回は製作チーム全員の心が一つにまとまらなければ到底作ることができないでしょう!

 最高のエピソードをありがとうございました。


 全ては伏線でそれを回収するという意思がはっきり見える展開で、暁美焔という名前が格好良すぎる所まで使いにかかるのには驚きました。

 また今回の、自分なんて何をしてもダメダメという自信の無さからの絶望感、束の間の幸福、決意、孤独なヒーローへの流れと感触は、中学生頃の世界観を思い起こさせる表現で、時間が経つにつれ自然と出来上がってしまう心的多重防御を内部から突破するような力がありました。言語化が特に困難な種類の感情移入です。

 その他、ワルプルギスの夜襲来後の世界は建物が破壊され水没しているので「津波である。そのため終盤2話は再製作となり非常に遅れた」と放送時は考えていましたが、今第10話を見ると、必ず「悲しみの雨」が降っているので、竜巻、スーパーセル等の大気系で正解です。


映像系の感想

 この回は絵的に難しいシーンが多数なのにどれも上手く見事なので『魔法少女まどか☆マギカ KEY ANIMATION NOTE vol.5』を買いました。高額書籍ですがほぼ全シーンの原画が載っている上に、100枚以上の画で構成される複製カット袋*1まで付属している相応の一冊です。

 キャラクターごとに違う走り方、身体の使い方、いわゆる女の子走りの重心の高さ、物干し綱の上でのバランスを取りながらのアクション、指関節の動きの柔らかさと、全ての動きから最高のクオリティに仕上げようという気迫を感じます。

 さや魔女戦でのまどかの女の子走りをしながらのギリギリ鉄輪回避アクションなども素晴らしい。


 メガほむとマジカルレーシック後ほむで、同一キャラクタでも動きが全く違う所も見所です。

 宝塚で男役を演じる方は、肘の動きを外々に取ることを心がけるように教えられるそうですが、メガほむは内々で、ループが進むにつれ段々と外へと寄っています。


 毎週1話放送しなければならない厳しい締め切りがある作品なのに、洗濯物(委員長)の魔女、リボンの橋、世界滅亡後の瓦礫斜面に立ち風に吹かれる等々の絵的発想力もまた素晴らしい。


 光と風を操るレイアウトがオールタイム・ベスト級でした。

  • シリーズ・レイアウト設計:牧孝雄*2
  • 絵コンテ:笹木信作*3
  • 演出:八瀬祐樹*4

 素晴らしいと思う度に素晴らしいと言っていたら、隙間なしに言い続けなければならない位の状態です。


細か目の感想

  • あらすじ、略す気無し。
    • 非常に忙しい展開で感想部との分割が困難。
  • 悠木碧の声特有の微妙なザラつきを生かして、いわゆるロリババァ系キャラに当てる作品が数年内に作られなかったら世界の損失です。(オーバー)*5

  • 斎藤千和の泣き嗚咽で絶望されたら、もう世界滅亡止める術なし間違いなしです。
  • 僅か1話の時間で展開の密度がこれほどまでに高められたのは、今までのエピソードの力です。
    • 名シーンでない部分が1秒もないくらいの極まり方。
      • 「この回の好きなカットコン」がおそらく可能。
  • 1周目の絶望メガほむが下を向いて歩く際、地面の見え方がオーバーハング気味になる表現(90度以上の下向き、真下よりも進行方向先のほうが若干目に近い)で石田徹也の絵を連想しました。
    • この画家の作品は奇妙さと暗さに注目されがちですが、極度に緻密な構図のとり方も特長です。
  • 地面を透明なものとみなして靴の裏を中心として見上げる広角構図(俯瞰の逆)や、つけPANで画面斜め奥上方向に走り続けるカット等もユニーク。
  • メガほむ最初の魔女戦でのよろけ走りと、OPのまどか走りは同じ阿部厳一朗が作画。
  • アクションディレクター:神谷智大
  • 今回の魔法少女川柳「同じ時間を 何度もめぐり たった一つの 出口を探る あなたを 絶望の 運命から 救い出す道を」
    • 七・七・七・七からのリズム感。川柳より都々逸に近い?
      • 「たった一つの 命を捨てて 生まれ変わった 不死身の体 鉄の悪魔を 叩いて砕く キャシャーンがやらねば 誰がやる!」(こちらは七・七・七・七・七で「キャシャーンが〜」で崩れて、最後に五で締める)
  • ラストでオープニングテーマが流れるアニメは名作。
    • 作詞作曲:渡辺翔、編曲:湯浅篤、主題歌協力:外村敬一 の『コネクト』はこの物語の背骨として存在。

多元的で数エピソードを圧縮したかのような今回から1冊の原画集が誕生しました。

魔法少女まどか☆マギカ KEY ANIMATION NOTE vol.5
魔法少女まどか☆マギカ KEY ANIMATION NOTE vol.5
 原画を800点収録し、付属品は矢を放つまどかの「クラスのみんなには内緒だよ」を複製したカット袋(内容物100枚以上)丸ごとという行き着くところまで行った感のある内容です。


2013年11月25日の追記:この作品は2013年12月25日にBDBOX版が発売されます

魔法少女まどか☆マギカ Blu-ray Disc BOX(完全生産限定版)
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*1:「クラスのみんなには、ナイショだよっ!」で矢を射つ2秒程。公式サイトにgif版掲載あり。 http://www.shaft-web.co.jp/items-3.html

*2:作画@wiki - 牧孝雄 http://www18.atwiki.jp/sakuga/pages/722.html

*3:演出@wiki - 笹木信作 http://www19.atwiki.jp/enshutsu/pages/134.html

*4:アニメ@wiki - 八瀬祐樹 http://www7.atwiki.jp/anime_wiki/pages/1951.html

*5:『ダンス・イン・ザ・ヴァンパイアバンド』のミナ・ツェペッシュがそれ系であるという情報を得ました。