放課後は 第二螺旋階段で

「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」 筆者の気の向くままに書き連ねるクラシックスタイルのblogです。

生きている超・後退翼―「世界の傑作機 No.85 スホーイ Su-7 Su-17 フィッター」

世界の傑作機 No.85 スホーイSuー7/ー17“フィッター” (世界の傑作機 NO. 85)
Amazon.co.jp: 世界の傑作機 No.85 スホーイSuー7/ー17“フィッター” (世界の傑作機 NO. 85)

 Su-15 フラゴンの号から続けてスホーイ設計号を読みました。

 亜音速 Mig-15 の35度後退翼から 超音速 MiG-17 の45度後退翼、そしてさらなる高速を目指す流れとしてデルタ翼ではなく戦闘爆撃機に適した60度の後退翼を選んだのが Su-7 です。これはアメリカでは採用されなかった急角度であり、同じ後退角を持つデルタ翼は MiG-21 へと繋がりました。

 ソビエトの設計局は風洞を持たず TsAGI が空気力学的基本設計を済ませるシステムであるため、このようにメーカーの壁を越えた大きなデザインの流れが生まれたようです。

 部隊での運用においては、着陸速度290km/h 離陸速度380km/h にも達しながら前線の不整地飛行場での離着陸を想定し、ホイール側方に土への突き刺さり防止のためのソリが取り付けられるなどかなり先鋭化したものとなっています。

 これでは離着陸に関して非常に難があるため、外翼部を可変後退翼に改造したものが Su-17 となります。Su-7 と Su-17 を合わせると生産は1950年代からソビエト崩壊直前の1990年まで続き、長きにわたって主力戦闘爆撃機として存在しました。

 中途半端なデザインながらも低高度での最大速度が 1400km/h にも達し、レーザを使った精密誘導爆弾もしくは対地ミサイルを主力武器とする隠れた有力機です。

■派生型メモ

 改良点はこれが全てではありません。BKL などのサブタイプ名が何の略なのかはグラスノスチソビエト崩壊から20年以上経った今でもよく分かりません‥‥

  • Su-7

 極初期の戦術戦闘機型。

  • Su-7B

 戦闘爆撃型の基本形。主翼内にインテグラルタンクを設置して燃料搭載量を3365Lに増加。パイロンは4。

 エジプト軍機として第三次中東戦争に参加。

    • Su-7BM

 主翼内のインテグラルタンクを大型化し燃料を3657Lに増量。翼面荷重・翼幅荷重の高さにより低高度での最大速度1350km/hに達する。

 インド軍機としてインド・パキスタン戦争に参加。

    • Su-7BKL

 1965年生産開始の最終型。主脚にソリが追加されて不整地対応能力が向上した。胴体タンクのインテグラルタンク化を進める事により燃料は3926Lに。生産途中から主翼パイロンが2つ増やされて合計6。

      • Su-7BMK

 Su-7BKL の輸出型。主脚のソリなし。


  • Su-17

1969年生産開始の可変後退翼化の最初期型。主翼の重量増400kg。ハードポイントは大型境界層板と一体の2、内翼前方2、胴体下2の計6を維持。

 大型の Su-24 フェンサーはこれとほぼ同じ年代の機体。

    • Su-17M

エンジンを AL-7F から AL-21F に変更。エンジンが細くなったのに合わせ内部構造も見直し燃料搭載量4448L。胴体下ハードポイントを増やす事により通常2つのパイロンを小型兵器用4つとする搭載方式が選択可能に。

 低高度での最大速度は1400km/hに達する。

      • Su-20

 17M の輸出型。R-3S赤外線誘導空対空ミサイルの搭載機能が追加されている。

 エジプト軍機としてヨム・キプール戦争に参加。

    • Su-17M2

 外観としては機首が20cm延長されてコクピットのレイアウトも変更。

 MiG-27 用に開発された航法・火器管制システム KN-23 とそのためのドップラー航法装置、レーザー測距システムを搭載。空対地ミサイルの指令誘導装置はスペース確保のため機内からポッド式に変更。機銃掃射ポッド SPPU-22、対レーダーミサイル Kh-28、ミサイル爆弾問わずレーザー誘導兵器全般の搭載に対応。(レーザー照射機能はポッド式)

 この兵装システムの爆発的進歩が何故発生したのか気になる所。

 燃料搭載量は4648L(?)

      • Su-22

 Su-17M2 の輸出型。エンジンを リューリカ AL-21F から ツマンスキー R-29 に変更。これは輸出型の MiG-23 と同じもの。直径が大型化するのに合わせて後部胴体のデザイン変更。

    • Su-17M3

 1976年テスト開始。戦闘爆撃機型と練習機型双方のために前部胴体が6度下向きになり前下方視界が9度から15度に改善された。特徴的なフロントビューはここから生まれた。

 クリョーンレーザー照射装置を内蔵。主翼に赤外線空対空ミサイル R-60 専用の小型パイロンを追加。

 燃料搭載量は4880L。

      • Su-17UM

 Su-17M3の練習機型。

      • Su-22M

 Su-17M3 の輸出型。エンジンは R-29 のまま。レーザー照射装置などを省略することによりダウングレードされている。

 1981年のシドラ湾事件においてはアメリカ海軍の F-14 と交戦し敗北。

    • Su-17M4

 最終型。1981年頃から1990年まで生産された。固定式マッハコーン・TV誘導ミサイル対応ほか電子装備が大幅に強化されているが詳細不明。垂直尾翼の冷却インテイクが外見上の特徴。

      • Su-22M4

 17M4 の輸出型。1984年から生産された。エンジンはソ連型と同じ AL-21F。

■搭載兵器メモ

  • NR-30

 固定武装の30mm機関砲。2門搭載され各60〜80発。

  • 通常爆弾

 100kg、250kg、500kgの三種類。100kgと250kgはマルチエジェクターラック対応(外翼・胴体下パイロンのみ)

  • 空対地ミサイル

 Kh-25、Kh-29 の指令誘導・レーザー誘導・TV誘導・対レーダー誘導など各種に対応。対レーダー用の Kh-58 にも対応。

 ソ連式の誘導装置とロケット弾部分を別体系にするシステムは合理的だと思うのだが今はない。

  • 57mmロケット弾ポッド

 整備員一人でも交換できそうな程の小さな小さなロケット。威力不足に悩まされた。

  • 80mm・122mmロケット弾ポッド

 大型のロケット。翼下面にのみ搭載可能。

  • 機銃掃射ポッド SPPU-22

 GSh-23L を30度まで下向きにできるガンポッド。首振り機構が FCS に組み込まれているため一目標に対する収束射撃能力を持つのが特徴。

  • 偵察ポッド KKR-1

 カメラ三台と照明弾152発と電子情報収集装置が内蔵されている。出撃の度に152発のフレアを再装填するのを想像すると、なかなか手間がかかりそうである。

  • 特大サイズのチャフ・フレアディスペンサー

 アフガニスタン侵攻の際、地対空ミサイルの発射を探知するより前から散布を始めそのまま攻撃しなければ間に合わないと分かったため、ヒレ型のものが多数追加装備された。M3用のものは2列で短く、M4用のものは1列で細長いという外見上の違いがある。

 この機のスピードなら歩兵携行地対空ミサイル程度ではほとんど当てられないのではないかという疑問があります。

■細々メモ

  • Su-7 と 17 の初期型で使われているエンジン、リューリカAL-7F は最後部軸受けよりもかなり後ろにタービンが搭載された独特な設計が行われている。シャフトの振動など問題はないのだろうか?この方式の利点は?
  • 珍しい機種として有名なアメリカ海軍の超音速水上機であるコンベア XF2Y-1 は同じデルタ翼の YF-102 より先に初飛行を行っている。開発時期を考えればかなり先進的な優秀機かもしれない。

■関連エントリ

 同じスホーイ設計局が防空戦闘機の任務に合わせてデルタ翼を選んだ場合。

 これより一つ前の後退角35度と45度世代。

 デルタ翼の MiG-21 を設計する前に比較対象として作られ技術試験機のみで終わった、 Su-7 によく似た後退翼機 MiG-21フェイスプレート(Ye-2) を性能仮想敵としていた1950年代アメリカ軍テストパイロットの回顧録。