放課後は 第二螺旋階段で

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アメリカン・イーグルス part1 「第8航空軍のP-47サンダーボルトエース オスプレイ世界の戦闘機エース 12」 ジェリー・スカッツ 翻訳:武田秀夫


 ヨーロッパにおけるアメリカ航空戦力を代表する第8空軍。その活動の初期を支えた P-47 部隊の活動をまとめた一冊です。

 スピットファイア装備のアメリカ人義勇部隊「イーグル」から発展した第4戦闘航空群、第56戦闘航空群 通称ゼムケのウルフパック、第78戦闘航空群など初期からの航空群に加え、第352、第353、第355、第356、第361の最大9つの航空群の活動が一纏めに時系列通りに紹介されています。

 著名な登場人物は、第56戦闘航空群指揮官のヒューバート・ゼムケをはじめとして、朝鮮戦争にも参加したポーランド系のフランシス "ギャビー" ガブレスキ、第一次世界大戦アメリカ人トップエースであるエディ・リッケンバッカー越えの27機撃墜をヨーロッパで初めて達成したロバート・ジョンソンなど。

 本全体としてはミクロなエピソードをただひたすらに詰め込んだ背骨のない構成で、情報密度こそ高いものの非常に読みにくいものでした‥‥何年何月何日の空戦のリザルトがこうだったと辞書的に分かるのは良いのですが、それが一体何の作戦で何故その土地の上空にいたのかほとんど説明がないのです。

要素レベルのメモ

  • 全体を通して P-47 の被撃墜時のパイロット生残性・脱出成功率の高さと8丁の12.7mm機銃の破壊力が印象的だが、これは典型的な生存者バイアスかもしれない。
  • 上昇力に関しては高度3万ftまでスピットファイアMk.IXなら12分30秒ほどの所、P-47Cは20分もかかってしまうほど。第8空軍の作戦パターンはイギリスからヨーロッパ大陸へ侵攻するものばかりであらかじめ高々度に上がる余裕があり、防空は全く行う必要がなかったためこれでも問題なかったのかもしれない。
  • ノルマンディー上陸作戦前、任期満了者が多数現れ高練度パイロット不足が予想された時期に、航続距離の短さから出番のないイギリス軍スピットファイア乗り亡命ポーランド人をガブレスキの提案で引き抜いてアメリカ軍に再入隊させたエピソードには驚いた。たとえ任期満了しても帰る祖国はなく、ナチスがまだのさばっているのなら確かにこれが最良の行動になるはずだが。ガブレスキはポーランド語に堪能で、イギリス空軍第315飛行隊の自由ポーランド部隊に一時加わっていたためにこのアイデアを思いついたとのことである。
    • 亡命ポーランド人の戦いが非常に興味深かったためさっそくこれを購入。

  • フランシス・ガブレスキは1944年7月20日に地上掃射中の操縦ミスによりプロペラを接触させ不時着、捕虜となった。
  • ヒューバート・ゼムケは1944年8月に第56戦闘航空群を去った。この後部隊は9月18日のマーケットガーデン作戦・アルンヘムの戦いで対空砲に対する地上掃射という無理な任務を割り当てられ多大な犠牲を出した。
  • 初期にP-47を使用していた第361戦闘航空群はP-51に機種転換した後その塗装により「イエロージャケッツ」の異名を取った。Vガンダムの元ネタ?偶然?
  • バブルキャノピーのP-47で敵機を撃墜した者はかなり少ない。これはP-51B/Cとほとんど同時期に出現し機種転換してしまったため。模型化されているのは第二次世界大戦全体をサンダーボルトで通した第56戦闘航空群所属機がほとんどなのだろうか?
  • アメリカにも献納機がある。SPIRIT OF ATLANTIC CITY N.J. 等のように、募金を行った州・都市名が書き込まれている。
  • 初期の P-47 はアメリカ機ながら無線ノイズが深刻だった。
  • 地上掃射による敵機の破壊も撃墜にカウントされるが、性能不足と戦況変化によりもはや出撃の機会を失った爆撃機や旧式機を打ち壊しただけであまり意味がないものが少なくないのでは?という著者の見解は一理あると思う。