放課後は 第二螺旋階段で

「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」 筆者の気の向くままに書き連ねるクラシックスタイルのblogです。

2016年の特筆曲リストはもはやスタグフレーション

 今年の音楽状況は「どんな曲でも聞けばだいたい面白いというのか、やりたい事が分かるけれど、かといって自分で思うがままに演奏できる楽器もなければ和音も出せないので何も再現できず、ただ巨大で高止まりした理解だけが押し寄せてくるままに流されている」と表現できる状況です。

 そして音楽メカニズムそのものに対する一体感が進むにつれ、楽曲個別の印象はどうにも薄くなってしまうのでした‥‥

 そんな状況ですが、紹介スタート。

(動画埋め込み16曲で極端に重い記事のため畳みます)

TOYOTAセリカ「死角をチェック」


 2016年は旧来の「深夜インターネットの空気」という空間の終わりがはっきりと見えるようになり、元々沈み調子だった気分がますます沈み、趣味嗜好はとことん後ろ向きになるという年でした。それを象徴する Vaporwaveの一曲です。

 この「深夜インターネットの空気の終わり」についてはデータ性のないただひたすら感情をぶつけたものでも一つのエントリにまとめたい所です。

宇多田ヒカル「二時間だけのバカンス featuring椎名林檎

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 大人になって久しく、もはや自分と同世代の新人が出現する可能性はほとんど見込めなくなって、周囲はひたすら身を固めるようになり、それでも自分は一人で世界の果てを目指そうという昨今の状況で、世紀末育ちのこの二人が活躍しているという事に救われます。

 しかもそんな情勢認識に合わせて来たかのような作品世界なのです。

 どう聞いても結婚し家庭を持った百合‥‥。エンドマークの後の世界を描く短編小説のようでもあります。自分が十分マンガが描けたなら、これをモチーフにした作品を即座に書いています。


binariaカミイロアワセ

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 Vaporwaveを初めに紹介する事で今年のメンタル的沈滞を表しましたが、それ抜きで今年一年間のベストソングを選ぶならばこれが一角を占めるでしょう。

 やなぎなぎ、Annabel、永尾ヨシヒサ、グラフィックデザイナーのXai(青井秋)による超エース同人音楽集団のメジャーデビューシングルです。

 私にとっておそらく最後の同世代カルチャー育ちメジャー新人である binaria、どこまでも高みへと駆け上がれ!

 そしてこの年代で「結成10周年」を迎えたという事で、自らの人生を顧み、大きな作品を残す力をつけられなかった今までの10年間と、これからのおそらく最後のチャンスとなる10年で一体何がやり遂げられるのだろう?という大きな悩みも生まれたのでした。

Apogee「流星」「Twililight Arrow」

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 私が今年新たに知ったミュージシャンの筆頭をあげるなら Apogee ではないかと思います。80年代サウンドを取り入れた、深夜にたまたま見た音楽番組の気だるさと寂しさと見知らぬ世界の広がりを感じさせる曲調です。この気分もまあ後ろ向きではあるのですが。


おしゃれテレビ「アジアの恋」

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 パスピエ・成田ハネダの推薦曲だったと思います。テクニカル&チープ&センチメントきらめきは数年に渡って終わりが見えそうで見えない80年代ベルエポック地獄と化した感性にぴったり。

KING「The Greatest」

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 この曲の究極の域に達した80年代趣味は音で2016年の新曲であると認識する事すらできませんでした。非常に素晴らしい「架空のノスタルジー」が体験できる作品に仕上がっています。

 実際の80年代ソングと今の80年代調ソングは、単体で区別できなくても、続けて聞き比べるとアレンジの厚みなどが実際は全く異なっているんですよね。

DATEKEN「彼方此方」


 今年の私的ベストボーカロイドソング。どのような魅力なのかは紹介するまでの曲の並びで語っています。

チルアニメビート

https://soundcloud.com/chillanimebeats
 一体全体正体不明ながら今年のベストチルアウト提供者。トラックでなくプレイリストの曲は「チルアニメ」でなく単に「チルアウト」のはずですが、80年代90年代セルアニメの懐かしくも柔らかい画面と動きのリピートに不思議な相乗効果があります。
はてなダイアリーに Sound Cloud の埋め込みができなかった‥‥)

HENTAI DUDE「Tokyo Chopp [prod. Lord ~ Kyo] [ft. Shiki(TMNS)]」


 この曲にはまったのは2015年ですが、未掲載だったためチルアニメビートに続き Sound Cloud 日本アニメの世界観勢の一角として紹介します。宇多田ヒカルをこう使うなんて日本人には絶対に思いつかない!ネオ同人音楽感。

さユりそれは小さな光のような

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 アニメ『僕だけがいない街』EDテーマ。2016年ベストアニソンの一角になります。ノイタミナ枠かつソニー系という一般層向けの色が濃い環境と、深夜アニメと実写が融合した2.5次元的なキャラクター付けの組み合わせが何というのか「今風」です。こうやって、どう考えてもインターネットがなければ生まれてこない言葉使いや世界観を、インターネットや同人出身でないミュージシャンが使っていく事にそれほど新味がないのだから、自分は「深夜インターネットという空間は終わった」と寂しさを感じてしまうのです。

 それはともかくとしてこの曲そのものには強力な「深夜感」があります。梶浦由記が書いた曲には不思議なくらいに夜の空気がつきまといます。何故なのか解き明かしたいものです。

 石浜真史によるTVアニメED映像も一目でそれと分かる非常に素晴らしいものでした。ここでは石浜真史OP・ED映像特集の記事を書く必要が出てくるため簡単なものにとどめます。

Cero「Orphans」

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 もうこれ以上はないのではないか?という程に後ろ向きな気分で、なおかつ最近上げ潮のラップ・ヒップホップ系の流れを極端に苦手にしているため、もはや「今風」の音楽にキャッチアップする事そのものが恒久的に不可能ではないかとさえ悲観していました。そんな日々の中、ネット上の知人内で大流行していたため聞いてみたところ自分も好きになった珍しい一曲です。一言で説明するのが非常に難しい作風。

 ところで、ラップ・ヒップホップ系が苦手なのはおそらく肉体拒否・生命拒否的な感性由来のものであると自己分析しています。ベッドルームミュージック的な孤独感と他者の不在・身体性のなさが基礎にあるエレクトロニカ・フォークトロニカ系は相性良好。

 そして、同じような路線でいにしえのインターネット空間が好きだった。


悠木碧新居昭乃サンクチュアリ・アリス」

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 人類の歴史すべてが思い出になった終末の世界で静かに暮らしている感じの曲が定期的に供給されている感‥‥。超越的な印象のある悠木碧の声と組み合わせてくれてありがとうといった所です。セルフカバー版と合わせると楽しみが2倍。ここからの流れで楽器を使わず悠木碧の声だけで作った新アルバム「トコハカノクニ」が気になっています。

新居昭乃奇跡の海」(カバー・オリジナルは坂本真綾

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(オリジナル版を知っている方はイントロからすさまじきインパクトがあるため是非Amazonで試聴して下さい)

 これは新居昭乃を知った時から是非歌って欲しかったという一曲です。収録アルバムの曲目リストに載っている段階で「録ってくれてありがとう」といった感情がまず第一。そして聞き始めると大胆なポストロック調アレンジに驚かされます。1998年の曲を2010年代中盤にパワーアップしてリバイバルするならこれだといった感じです。1998年オリジナル版2015年カバー版ともに編曲は同じ保刈久明で、長年に渡り共同制作している新居昭乃とのエレクトロニカ路線はこれで一つの頂点に達した感があります。

 同じく『ロードス島戦記 英雄騎士伝』でEDとして使われた「光のすあし」のセルフカバーも聞きたいところですが、これは作曲した時期と今で年代があまりに離れているためさすがに声の感覚が変わっていそうな気がします‥‥音源が現存していればどれほど録音状態が悪くともレコード会社直販のみの「VHmusic」のような形でも聞いてみたいものですが‥‥

Velsipo「Lastina」

SHARDORAhttp://amzn.to/2hf88wB
 新居昭乃+はまたけしのユニット Velsipo によるアルバム「Shadora」からベストの一曲を。終末の安らぎを感じます。精神的にプレッシャーのかかる状況が多かった今年、リラックスしての安眠ソングとしても大活躍の名盤でした。

やなぎなぎ春擬き(アナザーアレンジバージョン)」「ビードロ模様(アナザーアレンジバージョン)」「三つ葉の結びめ(アナザーアレンジバージョン)」

Follow My Tracks(初回限定盤)(特典CD+Blu-ray付)http://amzn.to/2imaN53
 このアルバム特典版、正直に言ってオリジナルよりもはるかに好きなアレンジなので困惑しています‥‥。

 ライブでも Ambivalentidea → 真実の羽根 → 白くやわらかな花 → アクアテラリウム と同人から聞いていると嬉しくなるようなラインナップだったりしますし‥‥。メジャー曲はせっかくの個性を潰した普通のアニソンになってしまっているけれどカップリングで良曲を出してくれるので満足というちょっと奇妙な状況に陥っております。作風が広がるのは良い事でしょうけれど、一抹の寂しさが?

やなぎなぎ瞑目の彼方

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 3DCGにより再びTVアニメ化された『ベルセルク』のEDテーマ。鷺巣詩郎の手堅い曲はもちろんのこと、作品と共に聞く「歌」として優れています。1980年代末期に連載開始して2016年の現在もまだ終わっていないガッツの果てしなき戦いの旅を描く。

「einherjar さよならを 知ること出来ない 悲しみ」

 宇多田ヒカル「二時間だけのバカンス」で触れた通り、人々が戦いの場から去っていく中、自分だけが終わりの見えない永遠の旅に身を投じていくという気分にフィットする一曲となりました。

 曲調としては英語版の方が好きなのですが、『ベルセルク』はドイツ〜ポーランドスウェーデンモチーフの地域で展開する物語でゲルマン語かスラブ語の世界で英語を使う人はいないというイメージの齟齬はあります‥‥。

aiko「恋をしたのは」

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 映画『聲の形』EDテーマ。「OP・EDテーマはその作品が見ている夢のようなもの」なのです。ブレスで始まる所がまた素晴らしいんですよね‥‥。そしてそれだけでもブルースの音になるaikoの不思議な力。

牛尾憲輔「laser」

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 映画『聲の形』は感想を書く事でこの作品から受けた印象を傷つけてしまうのではないかという、歴史上最も優れた宝石の原石にカットの刃を入れるのがためらわれるかのような感覚を覚え、語る事のできない究極的なまでに素晴らしい作品でした。

 音楽もまた「補聴器というアンプを通して聞く世界」「アップライトピアノの中の世界」で内へ内へと潜っていくような、重くても真正面から描いていく空気を醸し出しています。

 そんな中から異色でイタロディスコ調の一曲をピックアップ。私的80年代ブームで聞いて好きになっていた小林麻美「雨音はショパンの調べ」とこれでジャンルとしてはっきり認識ができるようになりました。過ぎ去った世界を想う雰囲気をもっと聞いていきたいところ。

イタロディスコの参考動画:雨音はショパンの調べ 小林麻美 ソニー製BDレコーダーによるハイレゾ

Pat Metheny Group「Minuano (Six Eight)」

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 まだ言語化できない良さがあります。つまり自分にとっての新領域です。発表時期は古いですがノスタルジーとしての良さでもない。この状況は希望です。

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