曖昧だったミッドウェー海戦の戦死者数とその状況をつきとめ、彼らとその家族の人生を取材し調べ書き上げた、戦争ノンフィクションのひとつの決定版。
単に海戦の様子が一番詳しく書かれている本として見てみたら・・・・重すぎな話でした。
1.友永大尉の「真実」
ミッドウェー海戦の日本側第一波攻撃隊指揮官で、一度目の攻撃のあと「第二次攻撃隊の要あり」と片道の燃料で再攻撃を行い還らなかった友永丈市の人生の話。彼には妻とは別に芸者との子がいたがそのことを知らず、友永氏の死後遺された者たちは・・・・
夫を失い、生きるために医学校を受ける戦争未亡人は学習意欲の上がらないダメなわたしから見るとあまりにも素晴らしすぎです。。。
2.いのちが宝
沖縄出身の兵とその家族の話。艦で戦死した者の家族も沖縄での地上戦や艦砲射撃で大勢が亡くなっていて、あまりにも救いがない・・・・3.インディアンの血
低性能のTBDデバステーター艦上攻撃機装備の米側第一波攻撃隊指揮官、ジョン・C・ウォルドロン少佐の話。この部隊は全機撃墜され生還者はわずか一名でした。攻撃命令拒否は不可能なことではなかったけれどそれをせず、独自に防御機銃の連装化改造をしてあくまでも任務を果たそうとするウォルドロン氏は強い人間すぎる。
4.空母「蒼龍」艦橋
空母蒼龍の艦長、柳本柳作大佐とその周囲の人々の話。この艦は爆撃を受け沈没、乗艦者数の23.3%の711名が戦死し、艦長は艦と運命を共にしました。ここまで読み進むと、「よくある悲劇さ。」というような割り切りが私のほうに出てきた。。。
5.生きのこること
ミッドウェー海戦で撃墜された米軍機の搭乗員で、日本軍の捕虜になりその後生還した者は一人もいなかった。艦が沈められ、生き残るために手段を選ぶ余裕がなかった人々と、大火災を起こしたにもかかわらず機関科以外の戦死者が少なかった空母「赤城」乗員の話。漂流中近くに味方の駆逐艦を見つけた嬉しさでニコニコして手を振る水兵を発見したものの、爆撃を避けるために無視して増速撤退しなければならなかったという話や、自分が溺れないために仕方なくしがみついてくる仲間を振り払ったときの感触が忘れられないという話を見ていると、戦場から生きて還った人々がよく言う「自分だけ生き残って申し訳ない」という感情がなんとなくわかってきました。。。
6.「ハマン」からの声
日本軍機の雷撃で大傾斜行動不能になるも沈まなかった空母「ヨークタウン」に横付けしての修復作業に従事中、イ168潜水艦が発射した魚雷4発中2発を受け真っ二つになり轟沈、乗員241名中84名が戦死した駆逐艦「ハマン」に乗っていた十代の水兵の話。階級が低いと、どこでどう戦死したのか幾ら調べてもわからないというのは無性にコワイ。
#この章の主役の船はシムス級のDD412 "Hammann"ですが、この名はカタカナ表記だと「ハンマン」が一般的なようです。