Amazon.co.jp: 海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA)
同著者の映画化されたりした有名な「玩具修理者」よりこっちのほうが自分はずっと好き。
ハードSF7篇それぞれの間にファンタジー的な語り部の話が入って、それによりばらばらな異界が繋がれて、各シナリオは昔話という定形になっているという印がつけられるのがちょっと不思議な面白み。
以下各話の読む前に見たら面白さが減る可能性がある種類のネタバレ感想。
- 時計の中のレンズ
異形のリングワールド。少年と部族は「歪んだ円筒世界」から「楕円世界」を目指す。なぜ旅を続けるのか。それは掟だからという・・・
「歪んだ円筒世界」がくっついているのは「楕円世界」の北極か南極方向で、「歪んだ円筒世界」のフチが「楕円世界」に最接近しているのが赤道付近。
「楕円世界」の引力と遠心力が釣り合う「カオスの谷」って、一体どれくらいの広さなんだろう。「狭くなっているので気流が激しくなることがある」という旨のことが書かれているので、相当狭そう。(広くても20kmくらい?)だから、楕円世界のフチが低引力すぎてグズグズと崩れてしまわないのかちょっと気になる。
- 独裁者の掟
この話はとくに好き。
やさしい少女と少年の物語と、残虐な独裁者の物語は一つに繋がり、2つの対立する宇宙船国家のエンジンとなる質量が減れば減るほど出力アップしてしまうブラックホールの出力を暴走させずに制御するために出されたたった一つの解答は・・・・
全てが逆転して楽観にオチる気持ちよさ。
- 天獄と地国
ダイソン球の外側らしき世界。遠心力により何もかもが天に向かって墜落し、重力を知らない人々は踏みしめられる地面がある世界を夢見る。
初代は一体なぜこんな世界に住むことになったんだろう?
- キャッシュ
死んでしまった人間を仮想世界で再現し続けるせいで、コンピュータの処理能力を消費しすぎてし尽くしてしまうというシチュエーションができるまでの発想に感心。よく思いつくなー、という驚きではこれが一番。
- 母と子と渦を旋る冒険
ロジックが分からなかった。。。。
- 海を見る人
これがこの本の一番のお気に入り。
星野之宣の「2001夜物語」という漫画で、「事象の地平面」に釘付けになった夫をずっと見て生涯を送り、最期にそこへ飛び込み再会する妻。そしてかれらの時間は動き出しそれで終る、という話があったけど、それに似たロジック。
それに至るまでの、相手を認識したりすることさえ難しく、会う度に時間差が広がって行く究極的な遠距離恋愛の話がとてもいい。
- 門
印象薄いすー・・・