「今から見ると噴飯ものの、冷戦下40年〜50年代にかけてのニュースフィルムやアメリカ政府製作の広報フィルムだけを素材に、ナレーションを一切加えずに編集の妙技だけで見せ切る、クールかつブラックなエディトリアル・ドキュメンタリー。冷戦期から現在まで脈々と続く大衆プロパガンダの恐ろしさが、ノー天気なポップソングと政府広報フィルムのコラージュの隙間から立ち上ってくる。
またその精緻な編集テクニックはその後のアメリカン・カルチャー全体に隠然たる影響を与えた。新しくはマイケル・ムーアが監督ケヴィン・ラファティを師と仰ぎ、この映画からの影響を公言している。」
核兵器はそれほど危険ではありません!
Duck&Cover!姿勢を低くし隠れましょう♪そうすれば大丈夫♪
核兵器による攻撃後、その地域を歩兵部隊が占領する新戦法の実験。
「放射線が危険だと言う者もいるが、皮膚で反射されるから放射能が傷口や口から体内に入らない限りは大丈夫。」
「放射能で重病になったりする心配はいらない。その前に熱や爆風で死んでいるからだ。」
こんな説明をされる「アトミックソルジャー」たち。
「放射線を浴びすぎると髪が抜けることがありますが、そのときはカツラを用意すれば大丈夫。」
核兵器の機密を漏らした疑惑で処刑されるローゼンバーグ夫妻の死の様子を仔細に解説するラジオを聞く人々。
「アトミック〜」というネーミングの流行。「アトミックタクシー」「アトミックカクテル」。
チープな安全対策を紹介するフィルムの直後に、それが吹き飛ばされる記録フィルムを繋ぐのを何パターンも繰り返し、トドメとして廃墟になった広島を写した直後に、プロパガンダフィルムに出てくるお父さんの「核攻撃のあと落ち着いたら、割れたガラスとかを片付けようね。」って台詞を合わせるオチは嫌過ぎで笑った。
昔、無数の死人が出るようなものに対してこう無邪気だった文化があったのかという驚きが面白かった。