妖精を見るには 妖精の目がいる
南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。反撃を開始した人類は、「通路」の彼方に存在する惑星フェアリイに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに、孤独な戦いを続ける特殊戦の深井零。その任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情かつ冷徹なものだった―。発表から20年、緻密な加筆訂正と新解説・新装幀でおくる改訂新版。
様々なものを愛し、ほとんどに裏切られ、多くを憎んだ。愛しの女にも去られ、彼は孤独だった。いまや心の支えはただそれのみ、物言わぬ、決して裏切ることのない精緻な機械、天翔ける妖精、シルフィード、雪風。
妖精の舞う空
続巻の「グッドラック―戦闘妖精・雪風」のほうが第一巻かと勘違いしそうになってた。「グッドラック」のほうがずっと分厚いし、真っ直ぐなタイトルだと思ったから。
非常に面白かったので続巻も読みたい。というより読んでこの先を知らないと気が済まない。
以下読むと面白みが減ってしまう可能性が高い種類のネタバレ。
進歩し、人間を追い越し、ついには人間を翻弄し、性能アップのボトルネックになっている部品として切り捨てる地球の機械たち。
深井零にとってのたった一つの心の支え、最強の航空機「スーパーシルフィード」への思いも一方的なものだった。
感情や意思というものは、それを読み取ろうとする側の者の中に現れる確率論的な幻で、読み取られる側の本質はそんなことお構い無しに動いていってしまう。
そして、ジャムたちが戦いを仕掛けているのは地球機械であり、人類はそれに貼り付いている有機物だとしか認識されないという疎外。
人類と機械の間の失恋物語。
章初めの文章と、章最後の一行はどれも綺麗に決まっていて素晴らしい。「フェアリィ・冬」や「全系統異常なし」は特に。
自分で小説を書いてみたいと思ってプロットをいくつか作っていて、そのうちの一番のお気に入りがこの本に収録されている「フェアリィ・冬」によく似たものだったので、読むより前にどこかから強すぎる影響を受けていたと気づいて、それがちょっと残念でした。(非常に個人的な話)