放課後は 第二螺旋階段で

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数値化された第二次世界大戦機の運動性

 2005年12月13日に書いた、「大空への挑戦 ジェット機編」掲載の表によると、Fw190やスピットファイアのロール速度は零戦の2倍以上 の元になったNACAの報告書を見つけました。
http://naca.larc.nasa.gov/reports/1947/naca-report-868/
 このレポート(PDF)の166ページ。操縦桿に50ポンドの力をかけて測ったらしい。
 最速の「Fw190」は、最適速度だとわずか1秒で160度以上ロール可能。断ち落とし翼の「スピットファイア」がそれにやや遅れ、この2機種が郡を抜いた数字を記録。


 165ページの「Helix angle」(ラジアンで出てるのでたぶん旋回の角速度)*1でも、「Fw190」は無茶苦茶に優秀でトップ。追従できそうなのは断ち落とし翼の「スピットファイア」だけ。
 その運動性を速度や高度を失わずにどれだけ維持できるか?を考えるとまた違ってくると思いますが…

 この表だと、「最優秀」と言われることが最も多い「P-51」は運動性一点張りの機体と比べると大したことがない性能なので、「マスタングが一番簡単に落とせた」と言う日本軍エースがいた理由も何となく分かりました。「やられ役改」な「P-40F」よりも運動性が劣っているという弱点が有った訳です。


 零戦がロールだけでなくラジアンで旋回性能を出している表でも大したことがない数字なのは意外。これだと行動パターンの決定権を相手に握られがちで、どの機種が相手でも勝つのが辛いのでは。「得意の維持旋回戦に入れるかな?」というシチュエーションまでどうにか持って行けたとしても、急横転+急降下で簡単に振り切られてしまいそう。

なぜロール速度にこだわったのか

こんな具合のこと考えてた。

  • 戦闘機はとにかく「不利な状況から脱しやすいこと」が一番。次は「有利な状況に持ち込みやすいこと」
  • やられないようにするのに必要なのは「ロール速度」
    • ロールを切りつつ廻って、射線から完全に外れるか距離を取ることで攻撃をかわす。
    • ロールが遅い≒切り始め+切り返しが遅い=不利な状況から脱せない+有利な状況を失いやすい。旋回角速度も低いと切っても曲がらないでなおさら辛い。
    • 「横滑り」は進行方向を大きく変化させることができるわけではないので、たまたま敵機の狙いがちょっとズレてたとか、そのくらいで無効化されてしまうので、どうしようもない時の賭け以外不可。運任せの要素が強く、常用して生き残れる回避テクニックではない。
    • 「上昇力」で振り切った機種も無いことはないみたいだれど、降下攻撃の勢いを使って駆け上がる相手を振り切れるほど圧倒的でない限り無理。
  • ロールが速いと、落ち着きが無く長時間飛行で死ぬほど疲れる飛行機になってしまうけれど、それはここでは無視。

機種固有の話

  • 日本最多撃墜エースの岩本徹三は零戦を使用しながらも一撃離脱型。零戦は軽くて低速からの加速が良いようなので、それを生かしたのかな。どの国でも非一撃離脱型のエースは数少なく、いても大抵戦死している。(たぶん)
  • 水平最高速度より加速力。
  • 機動の変遷は平面旋回格闘戦→立体旋回格闘戦→一撃離脱(立体化されすぎて旋回戦と認識しにくい戦い)?

 紋切り型に言われていることでも、自分でもう一回考え直すと面白い。面白いけど間違ってるかどうかも分からないのが怖い。このへんのことをいっぺんに確認できる本とか出てないのかな。

*1:と思ったけれどHelixって言葉だからなんか違ってそう。