1975年。
日本国N***県、なんだかよく分からないうちにソビエト連邦と協力し分離独立す。
突如無政府状態となりソ連軍が駐留するようになったN***県。そこでうごめく人々の、どろどろした生と力の顛末。
無政府状態になったのを機に、町工場の主人だった父は一大闇ブローカに、母は駐留ソ連兵相手の売春宿の主人に。
そして私と友人は中学生から独立政権ととりあえず戦ってるゲリラに。ゲリラとなって出会った伍長は、私的制裁のために戦い続ける。
町の権力者は、風見鶏のように有利になりそうな方へ向かっていく。
戦争状態という箍が外れたでっかいお祭りの中で、それぞれ生きる目的を見つけ、それを成し遂げるために手段を選ばず好き勝手に暴れ回る人々の元気のいい面白さ。
しかし、祭りには始まりがあるように終わりがある。
祭りに依存した生き方になってしまった人間たちの、おもろうてやがて悲しき祭りの後。
この作品に頻繁に登場する「地方権力者の力」は、そういうものを実感したことがない自分にとっては、それから発生する事態そのものがちょっとしたファンタジー。
三番目は、覚えておいでかどうか知りませんが、ロッキード事件で有罪判決を食らった田中角栄が常の倍近い二十二万票で当選した衆院選の時の雰囲気です。中央のマスコミがどう報道したとしても、私が肌で感じた空気は、反乱前夜、ともいうべきものでした。
田中に天誅を下すべく同じ選挙区で立候補した野坂昭如氏が、選挙運動中に包丁持った暴漢に襲われたりしておりましたが、地元じゃ誰も同情しなかった。東京から来た奴は敵、という空気があったと思います。
これが現実にあったことだなんて。
ぼくが読んだ新潮文庫版は絶版で、今売られているのは下段のハードカバー復刊版。