何であろうと需要があるのなら供給されるべきだ。ただそれだけにすぎない。
ギャングの抗争で銃撃戦が頻発するアメリカの貧民街で育ったウクライナ系移民の主人公は、偶然遭遇した銃撃戦をきっかけに、閉塞感溢れる街から抜け出すための仕事として「武器商人」を選ぶ。
非倫理的*1な存在である武器商人として成り上がっていく前半の、ブラックユーモアでいっぱいのロードムービー的な展開は非常に好きでした。
人を殺すために撃たれる銃から薬莢が飛び出すたにガチャンガチャンと鳴り響く、お金を数えるレジスターの音。
「怪しいところにはいつもお前がいるな」と言う国際警察捜査官との世界を股にかけての追いかけっこ。
チャーター機での空輸中に空軍から不審機として強制着陸させられても、武器だけでなく「輸送機まで」証拠隠滅することに成功。
そんな無茶苦茶さが爽快。
だから、妙に道徳的・倫理的になってしまう中盤から後半にかけての展開は、期待を裏切る紋切り型に見えて、ひどく勿体なく感じられました。
自分が売った武器が人を殺していくさまを散々見ているのに、たかが一人に自ら手を下したくらいであれほど動揺するなんて、主人公の倫理観は一体どうなっているのでしょうか?馬鹿なんでしょうか?*2
家族からの揺さぶりが効くということのほうは、いくらか納得できるんですが・・・・・・
皮肉なラストも、「何が起きたのか」という点では非常に強烈なものなのですが、そこへ繋げる方法はあまりにも倫理*3に頼りすぎていて強引に見えました。後から急にルールが適用し始められるということへの違和感。
主人公は弱みを見せず完全に上手く商売に徹していたはずなのに何故かやられてしまった、何故やられたのかもなかなか分からない、というくらいのほうが「真の最強の武器商人」の最強ぶりが強調されると思いました。
「お話としての面白さ」と「語りたいテーマ」の間に非常に大きなズレが感じられる作品でした。