主人公の女の仕事は依頼人の家で本を朗読すること。依頼人は自分で本を読まないだけあって、少し変わった人ばかり…
緑の部屋と病院服、赤の部屋と撒かれる花びら、白の部屋とヴィクトリア調の幼女、そして真っ青な服を着ている読書する女…色彩センスのいい画作り。
お客さんごとの小エピソード同士をベートーベンの軽快なピアノソナタで繋いでいくリズム感も上手い。
隙間に小さな笑いを挟んだり、会話シーンでカメラを切り返したりカットを飛ばしたり。
小さい展開と展開を繋ぐテンポの良さに特に秀でている作品です。
エロチックな描写が軽い感覚で沢山出てくる気楽さもすてき。一時期ブームになった『アメリ』のように、変わったものを許す心があるのなら誰もが楽しめる作品と思います。ソフト化はVHSかLDでしかなされていないようですが…
終盤で共産主義者のお祖母さんと会った後に別のところでマルキ・ド・サドの本を読み、そこで「読書する女」の物語が終わってしまうのには「権力にとりこまれてしまったからゲームオーバー」というニュアンスがあったそうです。00年代の感覚が染みついていて、マルクスやレーニンの文献は世界を直接変えるエネルギーを持った「思想」というより、世界を一段と楽しむための「教養」となっている自分はそのことを感じることができませんでした。
ネット声優という趣味が存在する今の時代、Skypeの読書屋さんやustream朗読会なんていうのも楽しいのではないでしょうか。