「戦争」「戦場」ではなく「戦場ジャーナリストで生計を立てること」をテーマにした珍しい一冊です。
その始まりは実在しない通信社名を使った偽造記者証明書でも構わない。実績を積めばいずれ本物の取材許可証が手に入る。誰でも始められる。結果が全て。
表紙はエルサルバドルのゲリラから信頼をうけ、バスジャックに同行取材した際に撮影したもの。この状況に到達する前に、街中での検問で感じた些細な違和感から、ゲリラと繋がりのある学生活動家集団に浸透していた政府側スパイをあぶり出すことに成功済み。
ユーゴスラビア取材では、弾痕から射線を割り出し地図上にプロットし安全地帯を計算、迫撃砲の音を聞いて着弾タイミングを割り出して回避、鏡を使った複雑な偽装で退避場所の安全を確保しするなど、加藤健二郎は驚異的コミュニケーション能力と機転ので取材チャンスを逃さない。
こういった才能やセンスを持って動いていなければ死亡していた状況をさらりと書いてみせて、今までカッコいいことを言っていた他の有名戦場カメラマンたちがみな大したことがなかった、平凡だったと相対化されています。
細部メモ
- この本の雰囲気を一言でいうとシニカル。
- コソボ・ユーゴスラビア滞在のために作った取材申し込み文書によると『軍事研究』は日本のリーディング月刊軍事雑誌で公証発行部数は4万部。
- 一眼レフを戦場に持ち込むとジャーナリスト然としすぎて警戒されやすい。小型のカメラは検問突破が容易。
- 兵器の詳細を知らなくても、とりあえずでディテールが分かるものを撮っておくとミリタリー誌に売れる。芸術性、報道性、趣味性のうち1つしか満たせないのなら3枚撮ればいい。
- デジタル写真時代のカメラマン。
- たとえ逮捕追放されようとも体験記が売れる。
- 人間の盾になっても記事が売れるし特等席で戦争が見られる。
- 手段など選ぶ必要なし。柔軟になること。
- 人間の盾になっても記事が売れるし特等席で戦争が見られる。