内部にいる限りはユートピアのようなヤクザ社会も、法を破って無茶を通していたからには一般社会にもう戻れない。それでもカタギになろうとすると、一体どれほどの犠牲を払うことになるのか。人の命、そしてプライドである。
これって最近、深夜アニメで見たような…?
魔法少女まどか☆マギカで見たような…?
違法好漢ヤクザ☆マギカだ!
アクロバティックな組み合わせは芸術における「巨人の肩に乗る」技術で、この映画は本当にいい時期に見た感があります。
全体がリアリズムではなく寓話・神話的必然を重視した作中世界で、日常シーンは無理矢理にでもギャグを挟んでキャラを立てる構成となっていて、アニメ的な印象さえ受けるほど。序盤のヤクザ・ユートピア期の男同士でのイチャつき具合は仲の良さが行き過ぎて、弟の恋人のドジっ子描写はスラップスティックが強烈で、かなり笑いました。そして笑った分だけ、ハードな決断を迫られる終盤は身につまされます。
そしてその決断が複数のコンフリクトを解決する、たったひとつの冴えたやりかたであるというカタルシス。
返還前の香港は映画の街として本当にすばらしい。構造物の密度、きらめかないネオン*1、その質感で気分は20世紀へ。
冒頭の偽札を燃やしてタバコに火をつけるシーンは価値観転換の描写として見事で、今作の世界を象徴しています。