放課後は 第二螺旋階段で

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1990年代東京映像文化遺産「劇場版 X」

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 CLAMPの大人気コミックを『幻魔大戦』のりんたろう監督が映画化。1996年作品。

 とはいえ私は当時の『X』の人気をよく覚えていない…

 CLAMPが描いているマンガが時代の空気となっていたことは何となく覚えている。絵が飛び抜けて美麗だったことも。

 今作は、シナリオの意味が分からない映画ワースト3を作るなら、1位が『幻魔大戦』、2位が『劇場版X』となりそうな程に展開が分かりにくい作品である。原作読者でも理解できるとは思えないほど。2回以上見ると大づかみで言語化不可能なフィーリングながらもかろうじて理解できる。そうでなければ、登場人物が現れては殺し合い血みどろになり死んでいくばかりの物語。


 映像的には突出して素晴らしいものがあり、1990年代の街がどんな雰囲気でどう見えていたのか(アニメは絵で作られているため制作者の解釈が強く現れる)没頭して体験することができる。

 夜の闇の黒さ。あまりデザインされていないモダニズム建築の四角いビル群とその最後の恐竜たる東京都庁新庁舎。個人携帯電子機器の普及直前期。コンクリート支配のピーク。冷たさが真新しかった日々。

私的スタッフノート

  • キャラクター色彩設計:すずきたかこ
    • BLOOD-C』は登場人物まで自覚するほど変な色にしか思えないが、ほとんど同じ配色の今作は不思議としっかりして見える。
  • 美術監督:平田秀一
    • 小林七郎に並ぶ黒の置き方の見事さ。緻密な上に、ビル屋上の大型空調ファンのような生きている都市のインフラ・メカニズムまで表現している。
      • リピート作画を使った機械の表現はCG時代のいま衰退傾向にあるが、リミテッドアニメであまり動かない人間と同じセルに描かれて黙々と動き続ける様にはフェティシズム的な魅力がある。
  • 音楽:清水靖晃
    • サックス一本のメロディになりそうでならないような不思議な音楽が不可解なシナリオと合っている。
  • テーマ音楽監督:YOSHIKI
    • 知らぬ者のない X JAPAN の『Forever Love』は今作のテーマ曲として製作された。それと知らずに見たのでエンディングでは大いに驚いた。