Amazon.co.jp: 秒速5センチメートル [Blu-ray]
2008年以来。もう一度。
2009から2010年にかけて、私は全身義体化したのかというほどに人格を変容させたので、このような寄り添う物語に触れ直すと感覚が異なるはずである考えた。
あと、TVもHD化されたしね。
極度に個的な感覚を生かした物語なので、ヘッドフォンを用意して環境遮断して見ましょう。
前回の感想。2008年09月11日。
第一話 桜花抄
東京の小学生、少年少女の二人は共鳴するように惹かれ合っていたが、中学進学で少女は遠くの栃木へ、そして半年、少年は種子島への引越しが決まる。東京での最後の冬、少年は栃木まで鉄道で旅をするのだが、雪に阻まれただ時間だけが過ぎてゆく…
今回も、このエピソードが全体から突出して優れていると考える。
物凄くフォトリアルな、いや、それ以上の画で驚きである。光をRGBで直接扱えるデジタル技術により印象派絵画の思想が再興したのではないかという感覚だ。空気感の描写に全力を尽くしていて、画面レイアウトもキャラクターから外し気味にして、美しき場を見せるというスタンスで描いている。
雪国の鉄道に初めて乗った少年が、ドアの開閉ボタンを知らず駅到着停車中に開けたままにして、ロングシート端に座るおじさんは手を伸ばしてボタンを押して閉める。少年はその構造を知らずに「すみません」と謝るが、おじさんは無言で「構わんさ」と無言で手を軽く上げる。そんな風に、世界の感触はひたすらにやさしい。
雪国を走る列車の窓の端にたまる雪、車内の結露、それに映る風景。田舎の駅の待合室の、ストーブの上の金ダライの水がぱちりと静かに沸く音、その湯気さえも、彼は一生忘れないだろう。
第二話 コスモナウト
種子島の少女は東京から来た少年が好きになったが、そのことを伝えることができない…
このエピソードに関しては前回の感想で書いた「届かない宇宙に一番近い町」が我ながら素晴らしい着目点で、新たに言うことはあまりない。
今の感覚で見ると、このエピソードは他のパートと比べると一段上手くない。女性キャラクターの内面を描くのにいまいち身が入っていない印象である。雪国を描くのは見事でも、南国は理由不明ながら雰囲気があまり出ていない感覚もある。
空色の緑の宇宙が、星たちが、ロケットが、山からよく見える映像イメージは各方面であまりにも多数回引用されたため、力が少し摩耗してしまっていた。
私が東シナ海で実際に見た海が、この宇宙の緑に近い色彩だった……実際に南へ行ったから、この映画を見なおそうと、思ったんだ。
第三話 秒速5センチメートル
少年少女は大人になった。踏切ですれ違う。気づくのは少年の側だけ。真新しくなった街に響く盲人案内チャイムが時代の変化を伝える。
だが少女も忘れたわけではなく、昔の手紙を見つけて思い出していた。
それでも二人は決して触れ合わない。
狭視眼的な東京2008年とロングで広角な種子島1999年で見せ方が違っていて、街と時代に対する感覚が現れている。
第三部は音楽と歌詞に頼りすぎて物語がやや引きずられている印象もあり。
今作の人気・知名度・感情移入度全てがネットで極度に高いのは、もしかしたら、主人公が東京でがむしゃらに働いているSEだから?
新海誠に関する雑談
2011年04月23日、『星を追う子ども』公開直前の渋谷アニメランド・ゲスト新海誠の回に非常に感銘を受けたので、録音がもしあれば是非聞いてみたいと思っております。
放送当時の私のtwitter投稿。
新海誠さんがヨーロッパにしばらく滞在していたとき、語学学校に入って、アジア人なので若くは見られるけれど35歳くらいの自分が18歳くらいの年下の生徒たちに混じってクラブに行ったり野球をしたり、そして宿題をしている間に中高生の時のように自分の見たい物語や絵のことを考えていた話良かった
— kbw (@kanabow_tw) April 23, 2011
新海誠さんの話って、ごく普通に何があったのか回想して説明しているだけでも不思議と叙情的。
— kbw (@kanabow_tw) April 23, 2011
語学学校って言葉が通じきらないから、そこがまたいい。
— kbw (@kanabow_tw) April 23, 2011
秒速5センチメートルの制作者ノート
文賢熙という方は今作でしか見たことがないけれど作監クラスで一体どういう人物なのか…?
第三部で数秒だけ登場する、1コマ打ち(2コマかも)の滑らかさで黒髪ロングと襟をなびかせるセーラー服少女の絶対正解的な画は細田直人担当カットとのこと。
全体的にそれなりの人数で制作されているように見えましたが、それでも少人数なほうで製作期間は1年半……
- 第二話スタッフ