魔法少女まどか☆マギカ 6 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
あらすじ
無数の時間軸を渡り歩いた旅人ほむら想いの戦いの結果生まれた特異点まどかの願いは、究極の高みへ! 神さえ砕く力で叶えられるまどか最後の願い、それは
「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で」
そして「さあ、叶えてよインキュベーター!」と自ら語りかけるのはつまり、全てを理解してのものである。
生と死の狭間へと存在が変化したまどかはマミ部屋でマミと杏子と再会する。最初に作った魔法少女ノートを返却された時には思わず人間らしく照れ笑い。しかし、願いの意味と重さについて改めて問い直されると
「希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私そんなのは違うって何度でもそう言い返せます。きっといつまでも言い張れます」と強い意志を持って回答するのだった。
過去現在未来の魔法少女を今その場で救い歴史に介入するまどか。あのワルプルギスの夜さえも救いの対象となった。「もういいんだよ、誰も呪わなくていいんだよ」全ての因果が受け止められる。
ワルプルギスの夜消滅の衝撃で気を失ったほむらが目覚めたのは、月面のような異空間だった。彼女は巨大な黒い彗星を見る。それは宇宙すべての呪いを背負ったまどかのソウルジェムだという。だが、ハイパーアルティメットまどかは自らの行った救いそのものを自らの救いとして救われ続ける救いの永久機関と化し、宇宙スケールの絶望さえも越えて行く。
時間を越える存在になったまどかは、遂にほむらの時間を越えた旅を知る。
「ほむらちゃん、ありがとう。あなたは、私の最高の友達だったんだね」
因果地平の果てで、新世界でまどかの記憶をただ一人持つことになるほむらは、リボン一つを手渡され、長い別れへ。
救いの神と化したまどかはさやかを救う旅へ。場所は上条くんのヴァイオリン・コンテスト。演奏される曲は『アヴェ・マリア』
最後の演奏に満足したさやかは上条くんを仁美に譲り、この世を去る。
「行ってしまったわ。円環の理に導かれて……」
さやかが死んだ。魔獣との戦いで力を使い果たして。だが今回ははっきりとした救いのある最期だった。
魔法少女の最期にまどかの救いが訪れるという記憶を持っているのは、世界でもほむらただ一人。救いの恩寵に嗚咽するほむらに対して、マミと杏子はただ「誰?」と問うことしかできないのであった。
ほむらは新世界のまど家族と出会う。まど弟(この世界では一人っ子となった)は大人になると忘れてしまうイマジナリーな存在としてまどかの存在を察しているという。まど母はほむらが身に着けているまどリボンを好みだと語る。それはほむらの記憶以外にもまどかの存在がこの世界に残っている証だった。
相変わらず誰にも世界システムをきちんと説明しないほむらは、キュウべえにだけまどかの救いを教え、あらためて新たな世界システムの優しさをかみしめる。
そして、まどかが守りたかった世界のために再び孤独な世界へと飛び立つ。魔女の代わりに現れるようになった人の呪いの実体化怪物・魔獣を倒す旅を続けなければならない。
手にするのは、魔法少女たちの犠牲の上に生まれた現代科学兵器ではなく、まどかから受け継がれた魔力の弓矢。
交わした約束 忘れないよ
ClariS - コネクト
目を閉じ確かめる
押し寄せた闇 振り払って進むよ
しかし、時間操作能力者・永遠の戦士ほむらにもついに終わりが訪れる。砂漠化した世界。魔獣による攻撃を魔力ではねのけながら、巨大な力を持つ黒の翼を広げて闇へと飛び立つ……
Don't forget. Always, somewhere, someone is fighting for you. As long as you remember her, you are not alone.
忘れるな。いつも、どこかで、誰かがあなたのために戦っている。あなたが彼女を想う限り、あなたは独りではない。
そしてフィルムが終わる。
回想と感想
最終話の展開は「ぼくの名前はエンポリオです型END」*1の典型例という印象で、しっかりまとまったとも言えるし、飛躍にいまいち欠けていたとも考えます。
このENDは、苦闘の結果ただ一人の登場人物を残して全員が倒れるも、奇跡により世界全てが少しだけ良い形に作り直され、その前に起こったことを覚えているのはただ一人。その一人が旧世界最後の瞬間に発露した「前進する意思」を受け継ぐというものです。エンポリオほむら。
そのほむらも時間にすり減らされて、まど神についての記憶も概念もこの世からついに失われてしまうのか。いずれにせよ素晴らしいスケール感の物語。
以上がリアルタイム初見時の感想です。
再見すると、この回は初見時以上の謎が残る回となりました。急激なスケールアップにより永遠の受難と救いがあらゆる部分に大量出現していてちょっと訳がわかりません。国語問題的な読みの正確性段階でも非常に難しいという感触を持っています。
死に意味と救いを与えるのは宗教の一側面なので、この終わり方はまどか教誕生物語ということになるのでしょうか……?
むかし、ガイナックスのボツ企画『ウィザード』の概要だけでたいへん感動したことがあり、この作品の救いの概念化ENDから受ける印象に若干近いものがあります。
『ウィザード』とは何か?はリンク先を参照してください。
- 冒険野郎マクガイヤーの人生思うが侭ブログ版:続・岡田斗司夫の「遺言」第六章 http://blog.livedoor.jp/macgyer/archives/51340585.html
- 「岡田斗司夫の遺言6」レポート提出_序 - 端倉れんげ草 http://d.hatena.ne.jp/eg_2/20080601
魔法が生み出した奇跡であろうとも結局のところは人の感情を動かすだけのものでしかない。音楽はマナを消費し尽くした世界に残った魔法の残滓。だから人は音楽に感動するという物語。
そして今作では「まどかって何?アニメのキャラとか?」と、アニメの登場人物自らが語ります。その通り、アニメのキャラなんです。アニメのキャラでしかない存在が人間に力を与える不思議が面白いんです!
しかしながら、実際に勇気づけられる、救済されるのかというと、現存人類は魔法少女ではないので別にそうではない。この限定的な表現が今作終盤のちょっと訳のわからない描写の一要素となっています。魔法少女は現実に存在するが誰も知らないだけで、それが救われているとするのが伝奇的に上手い見方になるのでしょうか。
死者の救いはまどか、生者の救いはほむらが担い、二人が世界を支えています。
物語全体の最後端となるほむらの最期については特に解釈しがたく、未だによく分かっていません。
工業化時代は去り、現代型人類も滅び、世界が完全に砂漠化するほどの長い時間の果て。永遠の戦いの結果、精神はもはや人類から完全に逸脱し、魔法少女でも魔女でも魔獣でもない「何物か」として、まど神についての変質した記憶と救いだけを信じている狂信者になっているという解釈をしました。これは、弓矢を失い、イヌカレー空間化した黒の翼を発生させていることから受けた印象ですが、一般的な見方ではないでしょう。
映像表現として異様に不穏な描写と「時間操作能力により新世界に唯一残ったまど神以前から続く存在であること」がほむらの最期に対する引っ掛かりへと繋がっています。この不安定さはおそらく劇場版第三部まで解決されないと考えています。
細か目の感想・文章化困難感想
- ハイパーアルティメットまどか登場って……!ノリノリである。
- 月面で最終決戦が行われるアニメは名作。
- 「こんな場所にまでついてきてくれるほむらちゃん」もはやペテロか何かみたいです。
- いくら無数の人々を救ったとしても、誰にも存在を知られないなんて、そんなに悲しいことはない。
- 今になって見ると同作者の『Fate/Zero』に登場するケイネス・エルメロイ・アーチボルト「結界24層、魔力炉3基、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、廊下の一部は異界化させている空間もある」ビルもろとも爆破して衛宮切嗣「どんな魔術結界で防備を固めていても……助かる術は無い」系の解決策?
- さやかの最期、上条くんのコンサートで「仁美巨大化」と言われたシーンはカメラ固定でカットを割るごとにズームが一段強くなるだけの表現でした。
- 放送当時はカメラ(さやか)が現世から段々と遠ざかりつつもそれ以上の早さでレンズのズームが強くなっていたという印象。(見分けられる理由不明。直感による)
- 演奏終了後さやかに気づいた上条くんが今までになく繊細に描かれているのが良かった……精神にややアンバランスな所があるこの人までも救われたと分かる表情です。
- 深夜、建築中ビルの虚空に張り出した鉄骨の端に腰掛けるのはダークヒーロー。ほむらは当然そうする。
- 渾身の傑作をありがとうございました!
- 魔獣とほむら編が大いに気になったまま、劇場版の新作部にあたる第三部待ち。
2013年11月19日追記:「劇場版の新作部にあたる第三部」である「劇場版 魔法少女まどかマギカ新編 叛逆の物語」を見ました。
今までの一連のシリーズレビューに書いた内容予想が的中している驚きと共に、予想を超える驚きにも充ち満ちた傑作。
http://d.hatena.ne.jp/kanabow/20131119/p1
2013年11月25日の追記:この作品は2013年12月25日にBDBOX版が発売されます
*1:『ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーン・オーシャン』参照。最初にこの作品で発見したためこの名となった。