ショートあらすじ
弾道弾警戒システムの誤作動、38度線の緊張、演習中の偶発的戦闘、それぞれに歯止めがかかれども流れは止められず、世界は理由なき全面戦争へと雪崩れ込む。
開戦から核が着弾するまでの僅かな間に日本人は何を思うか?
感想
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 公開に備えて東宝特撮見たシリーズのひとつ。
正直に言ってしまうとシナリオの詳細は頭に入らない作品だった。戦後16年という時代的に仕方がないと思うが、平和教育映画然としすぎている。そのため全体性のないまま良いシーンの連続体として記憶に残った。
古き良き昭和の日本と『渚にて』を思わせる黙示録的核戦争が結びついて化学反応を起こしたユニークさが今作最大の特徴である。子どもたちが歌う「お正月」と洋上で生き残った外航船員の取り合わせには心動かさずにはいられない。そんな時代さえも現実には核よりも強力な時間の炎に焼かれて今があるのだから、泣けてきてしまう。
この映画が作られた1961年は戦略核ミサイルが発明されてから僅か2年後の世界であり、1960年代の動きの速さには驚かされる。ラジオはあれどテレビは無いくらいのメディア環境なのに弾道弾は持ってるという当時の人類は、戦闘力に対するの配分比率がおそろしく高い状態である。また、1973年に制作された『アメリカン・グラフィティ』は1962年を対象とするノスタルジー作品だったが、今から9年前といえば2003年で、懐かしさはそれよりも格段に小さなものであろう。
細か目の感想・円谷英二による特撮の感想
- キューバ危機は1962年。この映画の翌年の出来事である。
- 航空機からパラシュート投下されたソノブイからディスコーンアンテナがシャキッと伸びてパチッと固定されるシーンが妙に印象的。アニメならば「タイミングが良い」と表すところ。
- 戦闘機同士がすれ違う際、背面で低高度の敵機を見下ろすようにしながらカメラも移動するシーンには不思議とリアルな飛行感覚がある。
- 空対空核ロケットが登場。誘導弾ではない所が狭間の時代。
- 核攻撃を受けた東京を銑鉄を流れるように破壊する表現がすさまじいと思ったら、その通りの再現方法だった。バシャバシャと泡立つくらいの勢いで波打つ溶鉄には特有の迫力がある。
- 地を這うように炎が広がるシーン(ミニチュアを上下逆にして、さらに圧縮空気で炎を押し付けることで撮影されたという)さえ全然どうでも良くなる位。
- 溶けた鉄で破壊され大地と建築物が岩のように一体化した滅亡後東京はこの作品で作られたものがおそらく初出。日本滅亡シーンがある多数のマンガ、アニメ、映画、ドラマで見たものと同様である。この描写は一体どういう破壊方法をとればその絵になるのか長年疑問だった。
- 今作のフィルムは既にHDテレシネされているため時期不明ながらBDが発売されると思われる。(HD放送のCSにて視聴)