![王立宇宙軍 オネアミスの翼 [Royal Space Force-The Wings of Honneamise] [Blu-ray] 王立宇宙軍 オネアミスの翼 [Royal Space Force-The Wings of Honneamise] [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/61TD0ETU5LL.jpg)
王立宇宙軍 オネアミスの翼 [Royal Space Force-The Wings of Honneamise] [Blu-ray]
- 発売日: 2008/07/25
- メディア: Blu-ray
この映画を見るのは少なくとも3回目。HDマスター・サウンドリニューアルになったのは今回が初です。
制作当時のスタッフとおおむね同じ年代になると見え方が変わりました。これほどのものを仕上げるとは一体どれだけの才能と人がこの一点に集中していたのか、そして皆の才能を引き出させた信じる力は一体何だったのか。
誰からも信じられていないロケット科学と、誰からも褒められはしなかったアニメがリンクして伸びることにより一体構造の映画となっています。
この映画のストーリーは岡田斗司夫の「遺言」*1を読む(もしくは元になった連続イベントの記事を一通り読む)ことで理解が一段明解になりました。
「宇宙へ行く人間に必要なものとは何か?」
これは問われるべき問題です。
最初に宇宙へ行った生物は人類ではなく猿や犬だった。つまりそれは宇宙飛行には何の技能も必要ないということを示している。それなのに何故わざわざ人類が宇宙に行くのか?その意義は何なのか?ヒトにしか持てないものとは何か?
現実世界のノンフィクションでは「ライトスタッフ」(正しさの資質)のためであるとした。
今作では「それはある種の宗教的なもの、信仰心、祈りではないのか」と答えているのです。
ラストシーンの後にシロツグが地球に帰還できる可能性は0です。なぜならば、最初の方で事故死者が出てもあっさり目に流すような人命観の世界であると示されていること、その方がストーリー全体の完成度が高まること、再突入関係の技術開発レベルが0であるためです。死後も永久に軌道上に存在する一つの人工衛星となります。
制作関係の作品中心からやや離れた感想
大学を出たばかり位の者にこれほどの作品を任せた1980年代中盤の日本は本当に豊かでしたね‥‥誰でも士官になるお気楽な感じに時代性が出ています。この辺り、ゴールデンエイジだったと言わざるをえない所です。
王立宇宙軍といえばメカ
メカニック関係の描写が単に上手い細かいのではなく「フェティッシュ」
モチーフの力が最高に発揮される構図・カット・シーンを選択して描いている。
映像メディアではなく文字SFで育った世代が生み出した最後の恐竜なのかもしれない。
- 不思議と全然注目されていない素晴らしいメカ描写があるのが、冒頭の水軍空母艦上のシーン。
- 離着艦時、艦は日本海軍空母のように高熱排気が通る煙突内に水を入れて冷却し、海面に捨てる。(気流安定のため)
- ハンドラーが人力で艦載機を方向転換する。
- マントレットに守られた指揮所から士官が光信号で通信する。
- カタパルトが発艦用意位置まで下がってくる。
- 空港のようなパタパタ(反転フラップ式案内表示機というらしい)の絵が変わって発艦ヨシを伝える。
- 甲板脇のカタパルトオフィサ(?)がボードで大気諸元(?)を伝える。
- カタパルト離艦と共にブライドルが海没。
- 宇宙軍の面々が空軍見学に行き初めて間近に見るスチラドゥに興奮している所、セリフ無く整備パネルをバンと閉めるだけで「いいかげん、仕事始めようか」と無言で示すメカニック。
- スチラドゥのスポイラの動作テストをする際、3分割の構造が立ち上がるほんの僅かな時間差がありながら、翼面と面一から滑走路面が見える穴あきフォルムへ一瞬で変化。実際の旅客機などもこんな感じですがやっぱり絵になります。
- スチラドゥがスロットルを全開にして離陸加速を始めた瞬間、キャノピーについた雨滴が風圧で後ろへとささささっと流れる表現の細やかさとタイミングのセンス!
- 非常に有名なクライマックスの空戦で、敵機がキラキラと陽光を反射しながら次々降って刺してくる視覚のリアル感。
- クライマックス水際の戦いで、しぶきを表現するスパッタリングがいい。これは今でもデジタルだといまいち味がありません。
- 全てのプロダクトが何らかのコンセプトに基づいてデザインされていて、目移りしてしまいます。全体的な基本コンセプトは「片持ち」(特に鉄道の架線)
- 「機動戦士ガンダム・逆襲のシャア」に出てくる戦艦のカタパルト先端部付近には人が入るのに丁度いい大きさの離着艦指揮所があって、それとの対比でスケール感とメカを運用するリアリティを表現していました。それに近い感覚のこだわりが全編にあります。
- バイクでの自由はコンピュータでの自由よりもずっと絵になる。
- 設計といえばドラフター。
王立宇宙軍といえば作中文化
- リイクニが信じている新宗教は、たとえ教えがニセモノでも信仰心は本物という具合の非常に独特な描き方。これがラストまで繋がっています。
- 無駄なエネルギーをどんな装飾に使うのかという所に文化が出る。鉄道模型が走りまくり、ネオンきらめき、巨大模型ディスプレイが動く。
- 大臣クラスの人間はラテン語(?)を喋らなければならないという描写はそこまでするかという凝りよう。
- 客船が港を離れる時、ケーブルで吊された板を小さなハンマーでカンカンと叩いて打ち鳴らす風習が。
細々感想
- 映画は長距離から撮る。ロングショットか望遠か。
- もしも自分が何かアニメ的なものを作るなら、ネオンの制作をしてみたい。デザインの抽象化とパターンのタイミング感だけでアピール。
- 宇宙軍のリーダーをしているおじさん(カイデン・ル・マシーレ)が「いい先生」をしています。旧世界の上司が持っていた教師成分が出ていて、何だか古き良き時代という気分になりました。
- 会社人の経験無いまま書いたからこそという味がある人です。
- このパッケージ画に写っている美人は何なの(リイクニと思われる)
- OPEDの墨のような味のあるイラストは大西信之によるもの。
- 空軍の出撃前ブリーフィングの最後に「アンタバライ!」(幸運を祈る!)
以下、このBlog過去の「王立宇宙軍」関係のメモ集積
王立宇宙軍 オネアミスの翼(何故か何度も見てしまう)
http://d.hatena.ne.jp/kanabow/20070630/p2
今日は一日 ○○三昧(ざんまい)
http://d.hatena.ne.jp/kanabow/20060503/p1
NHKはサブカルチャー的なものが好きすぎますね。すばらしい。これを放送している最中に、BSでは「アニメ夜話・王立宇宙軍オネアミスの翼」を放送しているところも凄い。というかやりすぎです。。。