放課後は 第二螺旋階段で

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小松左京の「見知らぬ明日」で日本における地球防衛絶滅戦争のはじまりを見る。

見知らぬ明日 (角川文庫)

見知らぬ明日 (角川文庫)


 文化大革命期の中国新疆ウイグル自治区に正体不明の強大な勢力が出現した。だが当時の中国は閉鎖国家であるため、世界は「それ」の正体を掴む事ができない。内乱なのか?漏れ伝わる情報から「それ」は人民解放軍を圧倒するほどの軍事力であり核さえも使用されたこと、中国国内では兵士が多数移動しており民間人が難民化していること、何より重要な点として「それ」に該当する軍事力を動員した国家はないということが判明する。

 今までの UFO 飛来情報などから国連は「宇宙人ではないか」という一応の結論を出すのだが、今度は宇宙人と最初にコンタクトを取った国家が人類唯一のチャンネルとなり「戦後」世界のイニシアチブを取るのではないかという明日への予測が牽制につながり世界情勢を混沌に陥れる。

 団結して抵抗するという合意形成後も、人類防衛のためとはいえ人の住む土地へ核を集中投下するという決断の重さ、罪が重くのしかかり再び交渉と葛藤が続く‥‥そしてここで日本に新たなる宇宙人が出現するとどうなるか。


 東西諸国共同の非常事態宣言と国連軍形成直前に行われる中国の演説内容が「ただ一カ国で宇宙人と勇敢に戦い続けた中国がその指導的立場に置かれるべき」という趣旨であること、新疆ウイグル地区から近いソビエトは侵攻を恐れるがアメリカにとっては中国とソビエトの潰し合い程度でしかない上にソ連との共同核攻撃ならば罪を背負う不安もないなど、対宇宙人における既存国家間の争いの表現に関して突き詰めた感があります。

 設定・展開から「マブラヴ・オルタネイティヴ」の大きな元ネタは間違いなく今作でしょう。アメリカ・ソビエト・中国・フランス・台湾・日本など各国がカリカチュアライズされながらも相互の国力消費動向に対して非常に敏感な点は Civilization 感覚です。割と団結感ある「高機動幻想ガンパレードマーチ」とは印象が全く異なります。

 今作は全体的には小説的でなく、アクションとリアクションの内容そのものに引きつけられるゲームリプレイ感覚で面白い本でした。個人レベルの書き込みは最低限程度なので、ここを物語的に強化する方向で色々な作品が出てくることがよく分かります。これ単体では短期連載打ち切り作品程度の話。