放課後は 第二螺旋階段で

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冷戦とUFO 「エリア51 世界でもっとも有名な秘密基地の真実」 アニー・ジェイコブセン

 原爆・水爆・U-2・SR-71・F-117、そしてロズウェル事件‥‥本書は世界を一変させる研究が行われたエリア51を通してアメリカから見た冷戦史を描いています。これを読んでおくとアメリカ人が持つ史観に対する理解が進みます。戦史系の必読書かといえばノーですが、文化史として興味深い一冊です。

 雑誌連載をまとめたせいかコラム集的で項目により描き方にばらつきがあり、情報量で全体像が何となく見えてくる種類の構成となっています。

 一応のメインは U-2 から A-12 を経て SR-71 へと至る戦略偵察機の開発史と運用史です。

 A-12オックスカートから SR-71ブラックバードへの流れでは、CIA管轄 A-12 と空軍管轄 SR-71 の開発で全く動きが協調していないように描かれているのですが、これが現実の歴史にどの程度対応したものなのかよく分かりません。

 アメリカも縦割りの官僚組織なので、CIAのA-12オックスカートが飛行しているのを空軍が捕捉した場合、一般兵にはそれが何であるかを確認する術がなく、調査結果も非公開で終わるため UFO と結論づけられるような構造ではあったようです。

 サイドストーリーとしては、ラスヴェガスのウェイターという華やかな世界と隣り合わせながら不安定な生活を変えるため軍に入り家もクルマも買ったある一人の父親のエピソードや、見知らぬ沖縄でベトナム対空陣地偵察を待つ不安な日々の夜に家族へのおみやげとして買った戦車のプラモデルを作るSR-71パイロットのエピソードなど、個人史と社会史の交点を積み重ねていく手法がアメリカの歴史本らしい。

細々とした要素レベルのメモ

  • 夜間のエリア51は着陸直前のごく短い時間だけ滑走路灯を点灯し、それ以外の時間帯は真っ暗。
  • 原子力ロケットNERVAは臨界状態の原子炉に液体水素を通してそれが気化膨張する力により推力を生み出すという構造。こんなものが試運転されていたとは。
    • 水素の供給システムにちょっと滞りがあれば即メルトダウンです。しました。
      • 核爆弾により推進するオリオン計画もそれほど危険ではない?
  • 原子力万能時代は原子力発電の確立前で、エネルギーの利用法がまだ定まっていない状態での模索であると解釈するのが実態に近いように思えます。
  • 核実験やメルトダウン経験から、アメリカの放射能汚染除去技術は日本と全くレベルが違うのではないかと思える所がいくつかあります。
  • 神の杖計画は貫通型核爆弾でさえも貫けない地下指揮所の破壊を狙ったものであるという。
  • グレイ型宇宙人はヨーゼフ・メンゲレの開発した改造人間で、ソ連とホルテン兄弟が開発したUFOのパイロットであるという最後の最後のエピソードはあまりにも滅茶苦茶で何故これを執筆したのか意味が分からない‥‥
    • ホルテン兄弟はペーパークリップ作戦の対象にならず、戦後長い間行方不明だったいうエピソード単体では気になる要素です。
      • クルト・タンクも捕まっていなかった。
  • 超能力スパイ等のオカルト系テクニックは情報源秘匿か資金の使途を誤魔化すための方便だろうと思いますね。