今作が作られてから21周年であるが、そんな半端な数字と無関係にこの連続レビューを開始する。当時の「毎週金曜夕方放送」にできる限りテンポを合わせる予定である。
■ストーリー
汚染された地球を脱したはずの人々は未だ戦いを止められなかった。そして今ユーゴスラビアを思わせる街ウーイックが戦火につつまれる。主人公の少年ウッソはこれを守るためにモビルスーツを駆る。
一方少女カテジナは「こんな街など燃えてしまってせいせいした、市民は特権階級にしがみつく堕落した存在」などとカルト宗教信者じみた感想を持つのだった。
■コメント
本来第4話として製作されたため若干コメントし難いエピソードである。早い段階に盛り上がるのは確かに良いが、それにしても前提となる情報が少なすぎる上に作中用語も多すぎる。最近のアメリカのドラマはこれに近い後から理由付けするような手法がとられているらしいのだが。
戦闘の描き方は第1話から「ビームライフルが組み込まれたワイヤートラップにかける」という凝りようである。富野由悠季監督作の特色の一つはこのようなトリックのユニークさであろう。子供でさえ無線傍受を意識して通信を行ったりとメカニクス的なアイデアが詰め込まれている。
絵的には結構テレビまんが的とでもいうのだろうか、リアリティではないアクションが多い。空中で手足をバタバタさせると何本にも見える等である。これがメカマニア的なアイデアと悲愴な世界観に組み合わされてやや掴み所がない印象を受ける。だが、ロングからアップまで幅広く取る距離感がある構図のせいか不思議と違和感はない。
あまりにも大量の物語要素を一気に投げかける構成のため有機的に結びつけるのが難しい状態のまま、ひとまず第2話へと続く。
■サウンド
- クロノクル・アシャー役は最近若くして亡くなった檀臣幸である。茶風林はこの段階ですでに老人・おじさんの中でも年齢層高めの役だが当時まだ30代前半。ナレーションは声の分野においてはほとんど新人の中田譲治。ウッソ役の阪口大助は20歳の新人にしても演技が幼すぎて、役割の重大性を思えば鉄拳制裁やむなしの感を否定しきれない。
- シリーズを通して千住明とワルシャワフィルによるオーケストラ音楽がすばらしい。「革命機ヴァルヴレイヴ」と同じ作家の手によると分かる金管楽器の音の割れを使った表現が特徴。
■断片
- 幼児の名前はカレルレン。エンジェルハイロゥと「幼年期の終わり」はこの段階ですでにはっきりと目標として定められている。
- ウーイックとカサレリアの名の由来は不明。
- 今回の連続レビューは制作時間と読み終えるまでの時間を共に短縮するため言い切り傾向を特に強めています。