GROUND POWER (グランドパワー) 2014年 02月号 [雑誌]
- 発売日: 2013/12/27
- メディア: 雑誌
M26パーシングの機関系を改善した M46、その砲塔を換装した M47 から離れた最初の完全戦後世代、最近注目度が高まっている冷戦戦車の初期に当たる M48パットン で一冊です。この雑誌、特集が本の90%程も占めているんですね。値段はかなり高く本体価格2238円ですが、まあ同じ位の内容の戦車同人誌が出たら買うかを考えると買うなという位の感覚で読むと質量ともに丁度良い感じです。
資料本なのでメモ感覚でまとめると
- ソビエトの T-54 が100mm砲を積んでくる時代に90mm砲でスタート。口径の指定は設計仕様に無かったが‥‥
- アメリカが何故か好む銃塔を採用しています。これのモデル名は M1キューポラ。デザインはSF的でユニークながら、ベトナムという実戦の環境下ではデザインが不適切で視界は狭かった。写真を見た印象でも、窓の面積が狭すぎて視界を360度を繋ぎづらいように思えます。細長いスリット状の窓が左右にそれぞれ2つずつ、ペリスコープが上面に一つ。
- ハッチはこれの後半分が後ろに開くもので曲面のパネル。
- 試作段階では同軸機銃が12.7mm。大口径同軸機銃はいかにも強力そうなのだがほとんど採用例はない。スペース的に厳しいのだろうか?
- 転輪配置は下部が小径の6コ、上部支持転輪はサブタイプにより異なるが基本3コというアメリカ戦車の定番感あるタイプのデザイン。転輪は大径化するほど高速走行適性が向上し、小径になるほど接地圧が分散しサスストロークも伸びて走破性に優れるため、走破性重視型?
- 初期型は上部支持転輪が5コと密度が高く、中期の生産型はリターンローラーを備えるなど、履帯の張りにかなりこだわったデザイン。
- 被貫通時に火災を起こしやすかった油圧の砲制御装置(砲塔旋回だけではなく俯仰も行う)はアナログコンピュータを使った FCS と一体化しているため変更困難。キャディラックゲージ製で、電気式のハネウェル製とのコンペに勝って採用された。
- グレーチングを台形に左右振り分けたようなエンジンデッキのデザインは、World of Tanks でしか見たことがない M4シャーマン代替試作中戦車の T20 と Tiger I 対抗の試作重戦車 T29 に酷似していて系譜が感じられます。
- 改良試作型と量産型の関係性が整理されておらず、かなり分かりづらい本になっています。
M48の基本サブタイプ・スペックノート
- M48
初期型。90mm砲・上部支持転輪5コ・誘導輪の前にリターンローラー装備・航続距離はわずか110km+程度のためソ連車のように車外タンクを搭載した。だがこちらはガソリンエンジン。燃えそう。
- M48A1
キューポラが銃塔型に改良されたタイプ。視界が狭い。
WoT では M48A1 は作中最大級の視界がありますが、実車はキューポラのデザイン不良で視界が狭い部類。これはM48A3 mod B になるまで継続。
- M48A2
エンジンとトランスミッションが改善された。外見上は機関室のデザインが異なる。航続距離が250kmを越えて車外燃料タンクが不要化。車体後面に排気グリルを装備。これは赤外線対策。ほか上部支持転輪が3コに減少。
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- M48A2GA2
西ドイツ装備分がレオパルトIの完成後に改修されたもの。
砲をロイヤルオードナンスL7(ラインメタル生産)に換装、FCSの国産化、光増幅暗視装置の採用、キューポラの銃塔を廃止してレオパルトIと同様のものに変更、車長用機銃は大戦型のようにキューポラ周りのリング状レールを移動して旋回と A5 に対しても優位な程にまで強化されている。
車長用の機銃配置は国により、砲塔上面に機銃マウントを立てるか、キューポラの周りに旋回レールを設置するかで好みが二分されているかもしれない?
ドイツではレオパルトII世代でもリング上を移動するタイプ。日本も10式戦車はこのタイプ。
- M48A2C
測距がステレオ式から合致式に変更。FCSを改善、加えてヤード・メートル併記からメートルに統一。兵器ならアメリカ人でもメートル法にも対応できる?外観上はリターンローラーが無くなった点が目立つ。
- M48A3
M60と同じFCS・ディーゼルエンジン・トランスミッションを導入。砲は90mmのまま。ほか、キセノン可視光・赤外線投光器も搭載。
- M48A3 mod.B
視界が狭い M1キューポラから M60 用の新しい M19キューポラ に変更。ガラスの面積が大幅に拡大されている。さらに銃塔用ターレットリング径を広げるためのコネクタを兼ねたオーバーハングした防弾ガラス10枚の全周視察窓を噛ませるように搭載。
キューポラの全高が異様に高いかなり無理のあるデザインで、鋼鉄の装甲板と大面積ガラスの質感がコントラストを成している点がユニークです。サイバーホビーの模型を作りたくなります。これでもベトナム戦争という状況のため標準的に使用されていたタイプになります。
本書の124ページに掲載されている予備履帯・弾痕残るガラス・ハッチを開けて周囲を警戒する車長で見上げるアングルの写真が格好良い。
- M48A4
M60 がシレイラ対戦車ミサイル対応の152mmガンランチャーに換装された場合余剰になる砲塔をそのまま搭載するタイプ。試作のみ。
ベース車はM48A1改造のA3仕様。
- M48A5
砲を105mmに換装、キューポラはイスラエル設計の低姿勢で銃塔のないタイプに変更、車長用機銃もイスラエル仕様と同様ハッチの前方にマウント設置、装填手ハッチ前にも7.62mm機銃を搭載しこれまたイスラエル仕様と同じアメリカの最終型。
イスラエルの マガフ1 は各タイプをこれとほぼ同様に改修したもの。2と3は M60 ベース。
- M67火炎放射戦車
主に海兵隊が使用。陸軍もやや短期間ながら使用した。
- M48装甲戦車橋
- M88戦車回収車
- M247サージャント・ヨーク
試作のみ。フォード・エアロスペース設計で、ボフォース40mmを2門搭載。レーダーと火器管制はF-16と同じ AN/APG-66 を搭載。空対空戦闘用とは必要な資質が異なりそうな印象を受けるのですが、バルカン砲関係の制御だけを取り出して見るとそれほど不自然でもないのかな?
これの設計案で GE は GAU-8 30mmガトリング搭載を提案していますが収まるのかな?
そこそこ有名な試作車ながら疑問点が残る車両。
車種に限らず戦車一般に関する発見
気になる翻訳語(左側は原文・右側は私の推測です)
- キセオン → キセノン Xenon
- ハニーウェル → ハネウェル Honeywell