スホーイSuー15“フラゴン” (世界の傑作機 NO. 120)
- メディア: ムック
積読の一番上にあったからという程度の感覚で読みました。増えすぎちゃってどこから手を付ければいいのかもう全然分からない状態なもので‥‥
近年では推力重量比が1を優に超える凄まじいパワーの持ち主である事が知られている機種ですが、この本が出た2007年当時は注目度が低かったためか、機種固有の記述はかなりあっさり目のものとなっています。Su-9・Su-11と基本的に同じ主翼を使いながらもエアインテイクをサイドに移し、機首に大口径レーダーを搭載できるように改善されたのが特徴で、あとは生産中期より外翼部の後退角が小さくなったという位のもの。
その代わりとして、スホーイの個人史とデルタ翼史を学ぶ事ができます。ツポレフの弟子にあたる人物なんですね。
箇条書きのメモ
- Yefim Gordon なくしてソ連機研究なしの感があります。この人は一体何者なのだろうか‥‥
- デルタ翼もドイツの発明。新機軸はだいたいドイツの発明。
- この機種はほぼ防空軍専用機。MiG-25の場合、迎撃型は防空軍、偵察型は空軍のもので両軍の支持を得ていました。
- 最大G制限を6G程度に抑え、さらに軽量に仕上げやすいデルタ翼を採用する事で記録的上昇力を発揮。
- G制限厳しい戦闘機でも軽量さにより縦の空戦には強いかもしれない。
- 原型となった Su-9 と Su-11 は真横から見ると完全に鯉のぼりで、ただの円筒形のような胴体のどこに燃料が入るのかよく分からない位です。空気と燃料の二階建て(一階は空気、二階は燃料)もしくは二枚重ね(外は燃料、中は空気)の構造でしょうか?
- Su-11 の場合、空気力学的には MiG-21 のように前すぼまり気味のラインでも問題ないのですが、レーダー容積拡大のためにショックコーンが大型化され、インテイクも大口径化したため直線的なラインとなっています。
- Su-15 のエアインテイクはやや上広がりに角度を付けた配置になっています。大仰角飛行時の効率が良いらしいのですが、ほんの僅かなので効果があるのか疑問です。しかし理論的裏付けはありません‥‥
- エンジンの型式名の最後につく3桁の数字は運転時間寿命。R-13-300なら300時間。短いです。
- ルックダウン・シュートダウン能力が未開発でセミアクティブレーダー誘導ミサイルをルックアップで撃つために Su-15T で電波高度計を使った簡易地形追従飛行機能が追加されています。そんな解決法があったのかという所ですね。
- 一部の機で搭載された GP-9 ガンポッドのぬるっとしたラインが格好良いです。銃身部と機関部それぞれを最小限のカバーで覆って滑らかに繋いだようなデザイン。中身はガスト式の Gsh-23
- 揚力面理論は、機軸に対して直角な翼断面の空気力を前端から後端まで合計したものであるという概要を理解しました。
- 無尾翼デルタは前後のモーメントアームが短い中で狭い後縁に高揚力装置とエレボンを置かなければならないため、着陸速度が高速で、ピッチングの周波数も高く、トリム抵抗も大きくなりがち。尾翼有りにすればこれらの問題を一挙に解決。
- 翼と別個にピッチトリマーを備えたF4Dスカイレイはこの点で一歩先を行っていました。
- かなり後に出現したミラージュ2000はなぜあのデザインに‥‥高揚力装置と動翼の一体化など制御系に絶対の自信があったのでしょう。ミラージュF1で一度は尾翼有りになっていますし。
- 大韓航空機撃墜事件についてかなりのページ数を割いていますが、この機種固有の問題ではないため感想省略。こういう末端の一個人に負担をかけるモノの見方が嫌いなんですよね。大韓航空のマネジメントとボーイング747-200の航法システムが最大の問題で、次がソビエト防空軍の体制、ずっと遅れて Su-15 がやってきます。それにしても曳光弾を全く搭載させなかったとは一体何を考えていたのか?
- エマニュエル・トッドの「最後の転落 ソ連崩壊のシナリオ」を読むとソ連の工業界システム勘がつくため、軍用機の開発と運用を理解する一助となります。