■ストーリー
地上でのリガ・ミリティアの動きに協調するかのように、宇宙では連邦軍がカイラスギリー艦隊に対する攻撃を開始した。これにより連邦軍全体とザンスカール帝国の対立は戦争状態へと発展する。
この頃、ジブラルタルのマスドライバー公社庁舎において両陣営合同の葬儀が営まれ、ウッソとシャクティは一緒になってマヘリアに死に化粧を施すのだった。
マスドライバーの長マンデラは「リガ・ミリティアとベスパを一緒に葬ったからこそ中立でいられたと思っていただきたい」と冷静に語るのだが、葬儀の場に現れたクロノクルに対しては「この上空でモビルスーツ戦までやっておいて、何が話し合いだ」と全く対話の余地を与えない。そもそも厚顔無恥にも話し合いに来るクロノクルが甘すぎるのだろう。
この後部隊に戻ったクロノクルはファラにより「カイラスギリーによる艦砲射撃が始まる前に降伏させるのが善意だ」と説得され、武力制圧を開始する。
ウッソが出撃前ブリーフィング中に開いたカテジナからの置き手紙には「ウッソ君のようにチャレンジしてみたくなったんです」と書かれていた。つまり、シャトルで宇宙へと旅立つというのだ。
このマスドライバー使用権をめぐる戦いの中で新たに現れたザンスカールの新型機のパイロットは、どこか優しいところのあるファラやクロノクルと違い残忍だった。レールを破壊しケイト機が支えに入って動けなくなった所を狙って「機体はそのまま、パイロットは死んでもらう」とビームサーベルで焼き殺す。
その瞬間、ウッソはニュータイプの直感でケイトがやられたことに勘づく。これが今作最初のニュータイプ表現映像だ。
同じ頃、海上ではファラのリカールがマーベットのトップファイターに敗れつつあった。ファラは部下のメッチェに脱出を進言されても「脱出か‥‥もういいよ、メッチェ」と士気も喪失している。リカールは轟沈。飛び出した脱出ポッドにはファラだけが乗っていた。駆けつけたクロノクル機に拾われ、マスドライバー・シャトルに取り付いて、そのまま宇宙のカイラスギリーへと上がって行く。
暗く狭い脱出ポッドの中、皆に救われたファラは「メッチェがくれたこの命もどうなることか‥‥」とつぶやく。
シャトルが上がり戦火の止んだ後、ケイト機の見分に来たウッソはその死に責任を感じながらもただ泣くことしかできない。
「僕がケイトさんに敵を任せたばかりに、ケイトさんは1人で死んじゃって‥‥」
「ふざけたことを言うんじゃない!ケイトは、あんたよりプロだったんだ!チビちゃんがやれる相手ならケイトがやっていたんだよ!そういう自惚れたセリフを言うのは、10年早いんだ!」
「怒らないでください‥‥ジュンコさん‥‥ごめんなさい!ぼくだって‥‥一生懸命‥‥」
「そんなこと、分かってるからひっぱたきに行けないんじゃないか!‥‥だから、気が済むまでそこで泣いてな!それが‥‥ケイトへの供養ってもんだ!」
叱責するジュンコもまた号泣し、この悲劇はひとまず幕となる。
■コメント
「機体はそのまま、パイロットは死んでもらう」で死んだケイトとウッソの慟哭が非常に有名なエピソードであるが、これの攻撃側陣営にいるファラのギロチンの呪いに負けたかのような虚脱感もまた見どころである。リカールと共に沈んだメッチェにしてやれることはあるのだろうか?失態続きでカイラスギリーにいる本隊へと向かうことになる。処分やいかに。
クロノクル・アシャーの善良さはシャアの持っていた弱さをさらに強調したものに思える。シャアの甘さについては機会を作って何らかの文章にまとめたい所だ。言葉に反して全然冷静になれない、理想主義者になろうとして破滅したタイプである。