放課後は 第二螺旋階段で

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伝説的戦闘機最後の戦い 「F-14トムキャット オペレーション イラキフリーダム:イラクの自由作戦のアメリカ海軍のF-14トムキャット飛行隊 オスプレイエアコンバットシリーズ・スペシャルエディション01」 トニー・ホームズ 翻訳:平田光夫

 タイトル長い!

 F-14最後の戦闘任務である2003年の「イラクの自由作戦」を本書独占のインタビューと写真で綴る証言集です。当時厚木基地に駐留していたVF-154 ブラックナイツも大々的に取り上げられています。

 何故この本を読もうと考えたのかはあまりにも昔ですっかり忘れてしまいました‥‥。

 元々の開発目的である防空のシーンはなく、TARPS(Tactical Airborne Reconnaissance Pod System 戦術航空偵察ポッドシステム)とLTS(Laser Targeting System レーザー照準システム)そしてFLIRを使った泥臭いCAS(Close Air Support 近接航空支援)やFAC(A)(Forward Air Controller Air 空中前線航空統制)とその戦果確認といった地上部隊との緻密な連携を必要とする任務が続きます。AIM-54フェニックスのエの字も出ません。

 想定外の地上攻撃機となったF-14ですが、複座ならではの高い情報処理能力により錯綜した状況で攻撃と偵察を1ソーティでこなすなど大変な芸達者、八面六臂の大活躍で、本書に描かれた状況を知ることでF/A-18スーパーホーネットでも複座のF型が重用される理由がよく分かります。パイロットがミサイル回避や地上の大局的状況把握に専念している最中でも、後席のRIOが支援すべき地上部隊との無線周波数合わせや連絡を行ってくれるのです。

要素レベルのメモ

  • アメリカ空軍は大規模作戦時、空中給油など燃料マネジメントを専門とするAWACSを飛ばしている。
  • 空中での同士討ちを防ぐためか、SEADの効率改善のためか、イラク上空への突入路はある種の「空のハイウェイ」が設定されていた。
    • 闇夜のバグダッド上空、30kmは先行するF-16CJワイルドウィーゼル隊が放ったHARMが先を争うような物凄い速さで着弾するのが非常に良く見えたという情景が印象的。
  • レーザー誘導爆弾は臨機応変に目標を変更できるため現場で好まれた。GPS誘導のJDAMは事前調査による座標指定のため上層部に好まれた。動目標・固定目標で使い分けるのが理想像。
  • F-14のレーザーターゲティングシステムを用いてAH-64アパッチのヘルファイアを誘導するシーンが出てくる。非常に珍しい。このような相互運用性は設計段階から織り込み済み?
  • 「弾道対空ミサイルを上方に目視したので急旋回して回避した」といった趣旨の証言が出てくる。射程延伸のために一度超高々度まで上がって上から襲いかかるタイプの飛行プロファイルを持つミサイルを指している?
  • イラク戦争F-14は基本的に機首右側空中給油プローブカバーパネルを取り外していた。給油時に引っかかって脱落した際、エンジンインテイクに吸い込まれ停止する事故を防ぐため。対地攻撃優先で超音速域でのシビアな空力特性にこだわる必要がなかったのも大きいと思われる。
  • 翻訳はかなり堅く読みやすいとはとても言い難い。私的にはもう少し漢語を使って欲しかった。日本語は漢字という略称に適した文字が使える言語ですから。新聞報道などによる定訳も使って頂きたかった。ただしイラク戦争F-14最後の活躍を知る事ができる本はこれただ一つ。
    • OIF(Operation Iraqi Freedom)でなくイラクの自由作戦、OSW(Operation South Watch)でなく南方監視作戦またはサザンウォッチ作戦など。

次に調査したい派生分野は‥‥

  • F-14Dの地上攻撃用ポッドコレクション。DはF-14でも唯一JTIDS(統合戦術情報伝達システム)に対応している。
  • イラクの自由作戦のほかの固定翼機たちの動き。