放課後は 第二螺旋階段で

「どうなるもこうなるも、なるようにしかならないのでは?」 筆者の気の向くままに書き連ねるクラシックスタイルのblogです。

2017年度のラジオ私的番組表・推薦リスト実績版

 毎年恒例「私のラジオ番組表」の更新版です。例年よりもかなり執筆時期が開いてしまいました。

 今回の特徴は「聴取実績版」であるという事です。単なる良番組を削減する事で厳選されています。さあどうだ!

 現況としましては、深夜アニメの限界を超えた増加と5年前では作られる事すら想像できない程の高クオリティ作品の乱立、さらにボイス付きモバイルゲームプレイ時間の増加などにより、聴取時間全体はかなり減少しています。

特筆推薦番組

カテゴリーごとに1番組だけを選ぶならこれです。ちょっと部門数が多い?

  • 休日の午後部門 NHK-FM 土曜 1400 アニソン・アカデミー

月曜日

  • 0920 NHK-FM 音楽遊覧飛行 (この曜日この時間帯は宮沢章夫の番組を聞いている事が多いです)
  • 1000 NHK-FM 片山杜秀 クラシックの迷宮[再](『音楽遊覧飛行』同様この曜日この時間帯は宮沢章夫の番組を聞いている事が多いです)
  • 1600 NHK-FM 音楽遊覧飛行[再](週替わりテーマ・サラーム海上の「エキゾチッククルーズ」がワールドミュージック系で非常に良。テーマにもよりますが紺野美沙子の「映画音楽ワールドツアー」もときどき良。ちょっとシーンが限定されますが、50代以上の方と車で移動している場合などはカシオペア向谷実の「ミュージックエクスプレス」が1970年代以降1990年までの邦楽洋楽中心、ダ・カーポ榊原広子「ふるさとのうた 心の旅」は童謡・唱歌・歌謡曲中心でウケが良いです。自分自身も改めて聞いてみるとなかなか楽しいです)
  • 1640 NHK-FM ゆうがたパラダイス はんにゃ金田と欅坂46のゆうがたパラダイス(女性アイドル全般。まあ聞いていてかわいいので‥‥)
  • 1800 NHK-FM 夜のプレイリスト[再](著名人が推薦アルバムを1日1枚紹介。夕暮れと夜の似合うしっとり落ち着いた番組です)
  • 2300 NHK-FM 松尾潔のメロウな夜(今年もおしゃれナンバーワンといっても過言ではないR&B番組。界隈の流れが見えて勉強にもなります。ちょっと切ない系の選曲が多く23時台の空気にぴったり)
  • 2300 NHK-FM Masayuki Suzuki Radio Show GOOD VIBRATION(毎月最終週の月曜日はこちら。鈴木雅之松尾潔と同じくR&B系メインですが、ちょっと古くて明るい選曲)
  • 2400 NHK-FM 夜のプレイリスト
  • 2430 AM 上坂すみれの♡(はーと)をつければかわいかろう上坂すみれトーク番組なのだから面白いに決まっているのです) (ローカルでの放送時間です)
  • 2500 AM 伊集院光の深夜のバカ力(オールタイムベストなトーク番組ですが最近は若干のパワーダウンと老成を感じてしまいます。当たり前の事ですが2000年頃のような暴走トークはあまり聞けなくなりました)

 月曜日は面白い番組が集中していて聞く方も大変なくらいです。

火曜日

  • 1000 NHK-FM MISIA 星空のラジオ[再] (毎年書いていますがトークの声が歌と違って可愛らしくて驚きます笑 ほのぼのとした雰囲気ながら音楽も高感度のハイクォリティ番組)
  • 1600 NHK-FM 音楽遊覧飛行[再] (繰り返しになりますが、週替わりテーマ・サラーム海上の「エキゾチッククルーズ」はワールドミュージック系で超マニアック、80年代初頭のインドのテクノ等まで聞けます)
  • 1640 NHK-FM ゆうがたパラダイス 三森すずことアニソンパラダイス(現在放送中の最新アニソンから最近10年内のアニソンを中心に、前Qこと前田久のワンテーマ解説コーナーを加えることで過去から現在に至る流れも学べるという非常によくできた番組です。三森すずこもベテランになったなあという感慨が‥‥)
  • 1800 NHK-FM 夜のプレイリスト[再]
  • 2400 NHK-FM 夜のプレイリスト[再]
  • 2500 A&G 洲崎西 (声優トーク系ではトップクラスの人気を誇るこの番組、下ネタ偏重がなくなり変化球が増え、また一段と面白くなっています)

水曜日

  • 0920 NHK-FM 音楽遊覧飛行
  • 1600 NHK-FM 音楽遊覧飛行[再]
  • 1640 NHK-FM ゆうがたパラダイス 赤い公園津野米咲のKOIKIなPOP・ROCKパラダイス(こだわり選曲の00年代以降J-POP中心番組です。ロキノン系?津野米咲の若干アニラジ系入ったパーソナリティも楽しい所です。ミュージシャンでもありバンドプロデューサーでもある状態ならではの独特なバランス感覚があります)
  • 1800 NHK-FM 夜のプレイリスト[再]
  • 2400 NHK-FM 夜のプレイリスト

木曜日

  • 0920 NHK-FM 音楽遊覧飛行
  • 1600 NHK-FM 音楽遊覧飛行[再]
  • 1800 NHK-FM 夜のプレイリスト[再]
  • 2400 NHK-FM 夜のプレイリスト

金曜日

  • 1800 NHK-FM 夜のプレイリスト[再]
  • 2300 久保田利伸ファンキーフライデー☆ (毎月最終週のみ。R&B系音楽番組です。最近の私は音楽の好みが「黒い」)
  • 2400 NHK-FM 夜のプレイリスト

土曜日

  • 1400 NHK-FM アニソンアカデミー (25〜35歳かそれ以上向けの渋い選曲のアニソン番組です。90年代からマニアックにアニメを見ているエヴァンゲリオン世代なら間違いなく面白いはず。ゲストが豪華なのも大きな魅力です。例えば最近の11月4日はTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの3人と米津玄師でそれぞれ1時間でした。田中公平先生は常連)
  • 1705 NHK-AM ちきゅうラジオ第一部(世界各地の日本人が電話やメールでその土地の暮らしや習慣を語ったりする番組です)
  • 1805 NHK-AM ちきゅうラジオ第二部
  • 1830 A&G 高森奈津美のP!ットインラジオ(解説は日曜午前の再放送版の方に書きました。この枠で聞く事は少ないです)
  • 2100 NHK-FM 片山杜秀 クラシックの迷宮 (サントリー学芸賞受賞者であるパーソナリティが毎回ワンテーマに沿って有名曲から珍しい曲まで作曲経緯含めて紹介し知的好奇心が満たされます)

日曜日

  • 1000 A&G 高森奈津美のP!ットインラジオ(スバル協力のアニメ『放課後のプレアデス』で主人公を演じた高森奈津美による、日曜午前にぴったりの車がメイン題材の珍しい声優ラジオです。なのにスポンサーはホビーのあみあみ。面白いけれどちょっと謎です笑)
  • 1600 NHK-FM 洋楽グロリアスデイズ(1970~80年代の大人の洋楽セレクションです)
  • 1700 NHK-FM miwaのミューズノート(主に洋楽の女性シンガー特集番組です。miwaの天真爛漫健康的雰囲気に、くすんだ自分は何か圧倒されるものを感じます)
  • 1800 NHK-FM サカナクション・山口一郎 Night Fishing Radio(もはや言わずと知れた理論派のこの方のラジオが面白くない訳がない。トークと音楽どちらもハイレベルで行きます)
  • 2005 NHK-AM パワーボイスA(この番組は知っている方が特に少なそうなので強調ピックアップしました。10代向けのとっても元気な声優ラジオです。特にアニメや声優を特集している訳ではない「SCHOOL OF LOCK!」AM版のような感じの中高生向け番組「らじらー」から独立したため、素のトークが多めなのが特徴です。パーソナリティは雑誌「リスアニ!」編集長の澄川龍一、声優の中村繪里子と武藤志織で、ゲストが毎回登場します)
  • 2100 NHK-FM サウンドクリエイターズファイル (月替わり、または半月替わりでミュージシャンが自らのルーツになる音楽と新曲について語る、興味ある方が出ているならば絶対に外すことのできない番組です。10月上旬の米津玄師と新アルバムBOOTLEGで2回は特に非常に素晴らしいものでした)
  • 2430 AM 上坂すみれの♡(はーと)をつければかわいかろう (東京での放送時間です)

聴取終了番組に関する一言コメント

 今まで私にとってレギュラーだった番組は以下の通りです。番組終了そのものに関しては非常に少ない1年でした。

  • AM 爆笑問題カーボーイハガキ職人のギラつきがきつくなってきたのと、深夜アニメとの競争に敗れました)
  • AM 山里亮太の不毛な議論(下ネタの単調さで、深夜アニメとの競争に敗れました)
  • AM おぎやはぎのメガネびいき(パンチ力不足で、深夜アニメとの競争に敗れました)
  • AM 林原めぐみ Tokyo Boogie Night(ついに林原めぐみのラジオが全て放送終了しました。中学生だった1990年代から永遠に続くと思っていた‥‥)
  • NHK-FM 小原孝弾き語りフォーユー(編曲が優しさ一辺倒で単調に思えてきました。枠的にはそれが正しいのは分かります)
  • NHK-FM クラシックカフェ(数年かけてレパートリー一周分聞いた感があるのに加え、録音・録画消化との競争に敗れました)
  • NHK-FM 南波志帆のミュージックライン(新曲チェックの網羅性は高いのですが性質上どうしても薄味で、録音・録画消化との競争に敗れました)
  • FM スクールオブロック!(10代の青春パワーに感動させられる番組ですが箱番組の長大化でそこが欠けてしまった結果、録音・録画消化との競争に敗れました)
  • NHK-FM ピーター・バラカンのウィークエンドサンシャイン(何となくタイミングが合わなくて‥‥選曲がちょっと散漫な印象も)
  • NHK-FM 現代の音楽(何となくタイミングが合わなくて‥‥)
  • FM スカパー日曜シネマテークAVANTI のスタンことグレゴリー・スター出演)(何となくタイミングが合わなくて‥‥その間に放送終了)
  • FM 福山雅治 福のラジオ(土曜日に移動して「アニソンアカデミー」との競争に敗れました)
  • NHK-AM ちきゅうラジオ 日曜枠(NHK-FMの「miwaのミューズノート」と「サカナクション・山口一郎 Night Fishing Radio」との競争に敗れました)
  • NHK-FM ラジオ深夜便(BS洋楽グラフィティーと、録音・録画消化との競争に敗れました)

聞きたいけれど聞けていない番組

以上放送地域外。

以上ネット放送なのですが聞くタイミングがなくて‥‥

 アニメ番組系声優ラジオは本数があまりにも多すぎ、ほとんど聞けていません。配信期間がすぐに終わってしまい時間が足りず、追いつくこともできないので‥‥。インフラコストが実質タダになるYoutube公開版の増加・DJCDのDL版販売・低価格化が進んでもらうと、助かります。一枚3000円はちょっとね。1500円なら二枚買っちゃうタイプです。実質聞ききりなので音楽ソフトと比べるとこんな感覚になります。

Fate stay/night Heaven's Feel 第一章 presage flower を最速上映で見る

www.fate-sn.com



このblogはネタバレへの配慮はほとんどありません。何故ならば書いた自分でも忘れる位の未来に読んでも思い出せるようにするためです。(10年以上前に原作が出ている作品なのでネタバレも何もないかもしれませんが)

  • 鑑賞者の状況:DEEN版TVアニメ・ufotableUBWFate/zeroアニメ・Fate Grand Order終局特異点まで・PCゲーム未プレイ・2004年の発売当時はノベルゲームに全く興味がなかったが知人は皆プレイしているという空気を過ごしてきた。結論から云えば理解度が全く足りていません。
  • 今作の最速上映は2017年10月14日0時ちょうど開始。終了時刻は2時10分ごろ。Fateシリーズは作中の雰囲気的に夜に見たくて、可能な限り深い夜を目指して、結果この0時開始の回を見る事を決めました。特に最速狙いという訳でもなかったのですがしかし、非常によい体験となりました。
  • 劇場は0時開始とは思えぬ人の多さ。満席です。オタクはオタクが好きな映画を見に行くとオタクが多すぎて疲れてしまうのですが、今作はそれが特に激しい。そして非常に暑い。10月設定の空調が人の多さに負けているのか、室温最高28度は確実に超えていたと思います。あまりの暑さで終盤は「この映画がもうあと10分長かったら熱中症になっている‥‥」と思う程の状況。治安が良いとはいえない立地の映画館で深夜というのもあるせいか、Fate Grand Order で大幅に増えた新規女性ファンはほぼ0で男子が9.5に女子が0.5くらいの比率感。オタクの映画なので物販への意欲は旺盛。自分もドラマCD付き豪華版パンフレットを購入。


 劇場の様子は以上として本題の作品に移ると‥‥

温かな日々を夢見た。
薄氷の平穏。積み木の天秤。瓦礫の上の揺籃。
眠りにつけば二度と訪れないような、
残酷で優しい昨日。
─────Heaven's Feel

  • まず驚かされたのは上映時間120分超でも聖杯戦争や令呪に関する解説全カット。30分近くある長いアバンタイトル間桐慎二・桜・士郎の数年にも渡る微妙な関係を掘り下げた後に始まるOPの背景で処理するという合理化ぶり。こうしないと間に合わない上、そもそもFateルート・Unlimited Blade Worksルート(それぞれDEEN版アニメ・ufotableTVシリーズ相当)を知らずに見に来る人はいないという割り切りでしょう。それにしても大胆。
    • 描写を掘り下げた結果、慎二がかなり感情移入できるキャラクターになっています。自分自身の一般社会での有力さと、より強大なものの前での無力さを両方知っている。いっそ慎二が尊い
    • この前日譚部分がアニメオリジナルって本当ですか?
  • ちょっとした表情で複合的な感情が読める作画・演出の極まりようです。
    • 今作、すべてが「極わまっている」
  • TYPE-MOON追いかけてない自分では見るのに力不足の感ありました。
  • 日常シーンがかなり落ち着いた雰囲気で少し古い00年代の深夜アニメのようなゆるやかさがあるところ、DEEN版の長所を取り入れた感です。藤村大河はすばらしいキャラクター。
    • 会話・描写のインモラル度高いのはR-18原作の劇場版作品らしくて良い‥‥。
    • 言峰が激辛麻婆豆腐を食べる場面が作中ほぼ唯一のギャグなのですが、それでもやたらとねっとり描かれると血と臓物にあふれる今作の世界を思わせるものがあるんですよね‥‥。完全には気を抜けない。
  • ufotable作品はデジタルエフェクトの使いすぎで「味の素かけすぎ」(綺麗だけれど何を見ても同じ)と思っておりましたが今作でバランスが良くなった感あります。
  • 光と影、夜の闇の描写がすばらしいufotableありがとう‥‥。
  • セイバーさんがワンパンでわるい慎二ライダーを撃破。ご飯いっぱい食べてるだけあってお強い。圧倒的なまでに高い戦闘力(この作画・演出の説得力がまた凄い)を持つセイバーはサーヴァントとの戦いで負ける気がしません。そのセイバーでさえほんの数秒耐える程度の抵抗のみで無力化してしまう不可思議な「影」のメタ脅威的な感覚。
    • 影に飲まれたセイバーが聖杯に気づいて突然目の色を変えるその不気味さも良いです。
  • ランサーvs真アサシンのバトルはPVで使われているだけあって凄すぎです‥‥作画好きでも手描きの良さとCGの良さをうまく合わせた今作のような凄さを言い表す言葉はまだありません。
    • パンフレットにメイキングを収録してくれてありがとう‥‥。
  • Fate Grand Order CCCイベントに出てきたエネミー、シェイプシフターがこう恐ろしい脅威だったとは‥‥。虚数魔術で全てを消し去っていく。SF的で「見慣れた街の誰もいない夜闇の中で人知れず戦っている者たち」という今シリーズのイメージとかけ離れています。
  • クーフーリンのキャスター要素、もしかすると今作で初めて描かれたのでは‥‥?*1ほか「矢避けの加護」の表現が非常に格好いいです。
  • アサシンの宝具「妄想心音」(ザバーニーヤ)が発動してから回避不能の必殺ぶり。
  • 復活したライダーさんの三次元的な戦闘力、一体誰がマスターなんだ‥‥。
  • 真アサシンが偽アサシンを体内から食い荒らすという異様な出現方法からの圧倒的なまでの殺傷能力(≠強さ)によるサーヴァント多数の退場の早さで、Fateワールドを閉じるために作られたシナリオである事を強く印象付けられました。
    • キャスターのルールブレイカーが「触れるだけでマスターとサーヴァントの関係を断ち切る」という最も危険なものであると分かっても、しかしほとんど何の役にも立たず倒れていく‥‥
  • 間桐臓硯がこれほどまでに圧倒的強敵だったとは‥‥。ギルガメッシュですらしょせんゲームのコマにすぎない。
    • 今作「だったとは‥‥」が非常に多い。英雄であるサーヴァントでさえほとんど抵抗する余地すらないままに次々葬られていく。今までの全てを覆すように。
  • すべてのサーヴァントとの関係が絶たれ命拾いした士郎の元に桜だけが残って終わるのはつまり「正義の味方を目指すのではなく、普通の人間としての幸せを噛みしめて生きろ」という意味でしょう‥‥。
    • いい所で区切っています。
  • 雪の中一人待つ桜は幻想的で美しいが、しかしあの服装寒すぎでは?
    • 「寒い中で待っている私」に自惚れるような桜だという意味合いも?
  • テーマ曲の Aimer - 花の唄 が素晴らしい。作詞作曲編曲:梶浦由記

花の唄/ONE/六等星の夜 Magic Blue ver.(期間生産限定アニメ盤)
花の唄/ONE/六等星の夜 Magic Blue ver.(期間生産限定アニメ盤)(このバージョンにのみイントロが短く初めからクライマックスの映画版アレンジが収録されています)

  • 第二章 lost butterfly が明日や来月ではなく2018年だなんて‥‥待ちきれない。
    • Fateルートですら長すぎるなんて思わないで、手元にあるPC版をラストまで完走しなければ。

*1:追記:ufotableのアニメUBWの終盤で遠坂を探すために石に魔術をかけて動かすシーンがあるようです。

「米ソ原子力艦隊」で冷戦の答え合わせ

米ソ原子力艦隊―今も両超大海軍が静かな戦いを繰り広げる! (光文社文庫―ミリタリー・イラストレイテッド)
Amazon.co.jp: 米ソ原子力艦隊―今も両超大海軍が静かな戦いを繰り広げる! (光文社文庫―ミリタリー・イラストレイテッド)

 これは米ソ冷戦もクライマックスに差し掛かった1984年刊行の本です。スターウォーズ計画こと SDI計画が発表されたのが1983年といえばその時期が分かるというものでしょう。当時10代だった方の思い出トークによく出てくるので読みました。

 当時分かっていたソ連海軍情報が集約されていて、結果今の感覚とかなり異なった装備体系が採用されている様子がよく見てとれるのが面白いところです。


 この本で最大の脅威として取り上げられている空母クレムリン(現在のアドミラル・クズネツォフ)が建造されたのはこの頃なんですね。「クレムリン」は今までにない5万tクラスの超巨大空母であり、さらに原子力ミサイル戦艦キーロフ級への驚きから、この技術を空母に転用すれば1990年代後半には原子力空母さえ出現してもおかしくないという感覚があったようです。

 艦載機は偵察衛星の写真に写っていたMiG-27艦載型・沿岸任務を重視するソ連であるための回転翼対潜哨戒機・何らかの固定翼早期警戒機程度が想定されており、その後にMiG-29という「F-16を意識した戦闘機」になるのではないかとされています。*1現実には当時未発見のSu-33フランカー*2とシュトルモヴィク系のSu-25となりました。ところで、現在搭載されているSu-25は沿岸任務で揚陸部隊を撃破するといったシーンを想定しているのでしょうか?艦載機としては航続距離もスピードもなければ搭載兵装の射程も短い機種なので気になる所です。

 対するアメリカ海軍の新型艦艇の目玉はオハイオ級戦略ミサイル原潜となっております。


 アメリカ海軍の水上戦闘艦は現在のようにオールイージス化がほぼ完成してアーレイバーク級とタイコンデロガ級ばかり、空母はニミッツ級ばかりといった単純化された編成でなく、テリア・ターター対空ミサイルシステムからスタンダードに換装した原子力巡洋艦群が主力となっています。今はもう絶滅した艦種ですね。ほか、その下に多数のスプルーアンス級オリバー・ハザード・ペリー級、ノックス級など対潜特化型・対空特化型の艦艇多数が続きます。

 攻撃型原潜はこの段階ですでにロサンゼルス級に集約されているのだから、このクラスを使った対水上戦能力への自信は相当なものだったと思われます。アメリカ海軍は2017年現在でも対艦ミサイルは音速超えられないハープーンで済ませていますしね。水上艦艇はまず潜水艦、次に空母艦載機で沈める。この考え方が徹底しているのでしょう。


 ソ連海軍の艦艇はクリヴァク級やウダロイ級など対潜特化型に力を入れているようです。核を搭載した潜水艦が何よりも脅威であるため当然といえば当然の方向性ですね。ですが現在の感覚では防空能力のあまりの低さに不思議な印象を受けます。対艦ミサイルの飽和攻撃が有効であると明らかになったオケアン70演習から13年程度の段階ですが、ソ連が2000年まで続いていれば対艦戦闘特化型のスラヴァ級が多数建造されていたのでしょうか?それでも物足りないとキーロフ級が大量建造されていたのでしょうか?巡航ミサイル潜水艦を多用する独特の編成がさらに進んでいたのでしょうか?今となっては分かりません。


 SLBMに関しては、今標準化したトライデントD5やR-39のような射程8000km超級ではなくポセイドンC3など5000kmクラスのものが多いため、戦略ミサイル原潜はやや前進気味に配備されており、それを攻撃型原潜・対潜水上艦・対潜哨戒機部隊で迎撃するといった想定が多いのが現在の感覚と異なっている印象です。本国の近海で防空圏内の「聖域」に潜るか、対潜哨戒機も届かない大洋の中にいる動きはまだ一般的なものになっていないようです。


 潜水艦関係で何よりも異様なのは、SALTの規制がかかる前に全速力で核弾頭搭載型巡航ミサイルの配備数を増やして既成事実を作ろうとする様です。規制対象となる「核兵器の運搬手段」には、ICBMSLBM爆撃機が含まれていても巡航ミサイルは除外されていたのです。第二次世界大戦以前、ワシントン海軍軍縮条約以降・ロンドン海軍軍縮条約以前の重巡洋艦量産無規制時代のようですね。攻撃型潜水艦に搭載されている巡航ミサイルは投射弾量の少なさの割に高コストではないかと感じていたのですが、元々はこういった流れがあったのですね。

ほか小ネタ

  • 600隻艦隊構想における戦艦の復活はベトナム戦争での艦砲射撃の有効性の影響大。核搭載の巡航ミサイルも多数装備し圧倒的対地攻撃能力を誇ります。
  • 海上自衛隊設立当時アメリカは日本に軽空母を供与するつもりでいて、S2Fトラッカーを使った着艦訓練まで受けさせたという話が気になります。これは維持費のあまりの高額さでなくなりました。
  • 潜水艦母艦が洋上でジェームズ・マディソン級戦略ミサイル原潜ダニエル・ブーンのトライデントC4を交換する写真が掲載されているのですが、この種の大規模な潜水艦母艦は現在も運用されているのでしょうか?
  • ソ連の典型的対潜哨戒機、IL-38メイは今どれ位運用されているのでしょうか?Tu-95の対潜哨戒型Tu-142が主流となっている印象があります。この機種、プロペラ機ですが想定巡航領域を考えるとP-3CよりもP-8あるいはニムロッドに近いですよね‥‥多分。
  • このblogにおけるミリタリー系の話題の空白期間に、私の関心が第二次世界大戦そのものから戦後すなわち第二次世界大戦の総括、そしてそれを踏まえての米ソ冷戦体制の確立へと移っていったため、若干孤立した記事になっています。

*1:MIG-29の西側における発見は1986年のフィンランド。それ以前は情報があいまい。

*2:Su-27の西側における発見は1987年のノルウェー