放課後は 第二螺旋階段で

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「駿河城御前試合」 南條範夫

駿河城御前試合 (徳間文庫)
Amazon.co.jp: 駿河城御前試合 (徳間文庫)

無惨・無惨・無惨!
 旧装版を古書店で買ってじっくり読んでいるうちに、新装版が出てしまったぼくが特に。
 というわけで、この文章は旧版を読んでから書いたものです。

 名剣術家たちが、勝者も敗者も無事では済まない真剣による御前試合に至るまでの因縁を描く残酷時代劇。「シグルイ」の原作本。

「無明逆流れ」

 「藤木源之助vs伊良子清玄編」
 漫画「シグルイ」で描かれたエピソード。
 みんな普通の人すぎてびっくり。虎眼先生は頭がちゃんとしていて、牛股権左衛門は無為に斬られたりしないし、舟木兄弟も登場しない。特濃だった漫画が基準になっているから、ずいぶんと淡々としていて驚き。

「被虐の受太刀」

 男女問わず美しい人から斬られるのが快感、そしてそれを斬るのがまた快感という剣士の話。変態度ではこの話が一番だと思うので、漫画化がたのしみ。

「峰打ち不殺」

 タイトル通りな剣士の話。ショートショート小説的なつくりで、ラストでびっくり。

「がま剣法」

 投げられた兜を空中で叩き斬る「兜投げの奥義」の舟木道場が登場。でも「ぬふぅ兄弟」は出ません。
 江戸時代のキモメンストーカーは強すぎて怖い話。

「相打つ獅子反敵」

 出オチになっていて、そこに至るまでの印象が薄いです。。。

「風車十字打ち」

 忍者と陰謀もの。御前試合以外の比重が大きい。

「飛竜剣破れたり」

 因縁よりも試合の勝敗や技の比重が大きい、かなりスポーツ寄りな話。至高の二刀流vs究極の避け技。
 真剣勝負とは、一撃で殺れなきゃ殺られるということです。

「疾風陣幕突き」

 トンチと冗談みたいな展開。
 でも、結果はやっぱりぶった斬られて惨死。無駄殺し。無惨無惨!

「身替り試合」

 甲冑を身につけ馬に乗った完全装備の者同士での異色の戦いが行われる仇討ちもの。
 ミステリー小説的な面白さが多い話だと思うので、コメント省略。

「破幻の秘太刀」

 剣の道が頭打ちになると物凄く誰かが好きになり、思いを遂げるとすぐに女など眼中に無くなる剣士の話。
 好きになる「誰か」は選べないから、他人の女に手を出して因縁の真剣勝負へ。
 試合相手の「石切り」の剣士も渋くてカッコ良く、この話はわりと普通に面白いです。

「無惨卜伝流」

 この話だけ他の倍以上の長さ。モテ過ぎの女の人は怖いよ!

「剣士凡て斃る」

 タイトル通りに完・・・

総評

  • 漫画「シグルイ」の脚色の濃さが凄すぎて、濃い話を期待して読んだぼくは肩透かしを喰らった格好になった。
  • 女がらみの末の真剣勝負多すぎです!
  • この小説って何となくライトノベル的な印象。キャラクターの面白さの比重が大きいのと、擬音や言葉遣いからそう思ったのかな?「くそッ、逃さぬぞッ」とか、そういう調子のセリフが結構多い、軽めの文体。

後日追記

新装版は旧版についていた、石井富士弥による解説が省略されているようです。
旧版の解説によると、この本に収録されていた話は全て掲載雑誌が異なり、切れ切れに発表され、全話完結までには7年以上を要したとのこと。