何者かに追われ、逃げ込んだ密室で必死になってメモをつける青年。彼は「もしもぼくがこの日記を読んでいるのなら、それは『失敗した』ということだ」と書き留める。
そしてそれから13年前。青年はまだ少年で、なぜか意識がしばしば瞬断を起こし、その前後では世界の繋がりが切れてしまうのだった・・・・・・
この現象は一体何なのかという疑問から、観客にとっての物語が始まる。
これは素晴らしく面白い作品です。
事前情報はあまり仕入れず、画面に食らいついて、謎や疑問を一つ一つしっかり持つようにするのが楽しむコツだと思います。
初めのほうは主人公の意識の流れと共に展開も混乱が続いてやや辛いのですが、開始から約1時間経って「選択」に全てを賭け始めるあたりから爆発的に面白くなり、そこからラストまでは怒濤のラッシュ。
- 未見者複数人でおしゃべりしながら見るとさらに一段と面白くなります。見落としたポイントも回収できますし。
- 一人で見るのなら、ラストまで見終わった後に5倍速以上の速さでもよいのでもう一度見ると同じような効果が期待できます。
- 派手な映像効果は、複雑な展開を分かりやすくし、進行速度にも圧縮がかかり非常に良かった。ショックでハッとして集中力が上がっているわずかな間に大量のエピソードを押し込む。
- 伏線が伏線であることも教えてくれる。
- 主人公が最初に「選択」する場面で、ラジオ番組「伊集院光深夜の馬鹿力」の「ミスチョイああ我が人生に悔いあり」コーナーで使われていたのと同じ曲が使われていて驚き。このコーナーは、投稿者の人生の分岐点になったのかもしれない日常の選択と、それが起こした意外な結果や後悔について話すというもので、その先にある欲望はこの映画で描かれるものと全く同じです。
- 映画が元ネタなのかと思ったら、ラジオコーナーは2002年まで、映画は2004年公開でラジオのほうが先と分かってさらに驚き。「ミスチョイ」が好きだった人ならこの映画は絶対にはまりますよ。
- 脚本家が「デッドコースター」と同じエリック・ブレス&J・マッキー・グラバーだとわかり納得。この人たちは大仕掛け映画が得意なのでしょう。自分にとって打率100%コンビ。
以下自分向け・視聴後向けの強度ネタバレメモ
一応畳みます
- 自分にとって爆発的に面白くなり始めたのは、刑務所で聖痕を作ってみせる瞬間。ここから過去への介入が急激に意識的で積極的なものになっていく。論理的には全然辻褄が合ってないんだけど、やることの過激さで驚いている隙に突破される。
- 主人公の父の思考は先の先の先の先を読んでいて何が何やら・・・・・・って状態。そんな状態での判断が後で効果を発揮するのが凄い。「バタフライ・エフェクト」を読み切った人類。
- 二度目には是非入院している父の思考に注目してみてください。
- 彼女を救うハッピーエンドにたどり着くために主人公が選んだ最後の選択肢は、整合性、意外性、結果の幸せさと苦さ、全てがお見事。
- その選択肢は「『そばに来るな。近づいたら、家族みんな殺してやるぞ』と言い、初めから出会わない」。ジョセフ・ジョースターもびっくりの先読みっぷり。
- 映像化されなかったエンディングには「主人公が胎児に戻りそこで生まれる前に自殺する」という「ハッピーにするエンド」があったらしい。ここまで意外な展開にしていたら、壮絶で面白いといえば面白いけれど、やりすぎですね。