- 作者:東 大作
- 発売日: 2010/07/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
ベトナム戦争終結から20年以上が経った1997年に行われたロバート・マクナマラらアメリカ・ベトナム間代表者対話を取材して作られた本書で、逆説的に「アメリカの帝国主義」と呼ばれるものが何なのか理解できた。
政体崩壊の可能性がある対象国にとって決死的なものである内政の重みを理解できないまま外交や経済の合理性のみに着目して他国へ干渉する行為の危険性。それによる衝突とすれ違いは介入側の意図と無関係に発生するため、受け手の目に「帝国主義」と映るのを避けようとしても避けられない。本土を攻撃された民主国家は、経済が完全に破壊されない限り、政体維持のために攻撃側の意見に従うという選択は不可能。
そして本土攻撃経験のないアメリカにその重さを理解できない。
戦争目的については、アメリカにとってのベトナム戦争は巨大な共産主義集団の一端との戦い。
ベトナムにとってのベトナム戦争はフランスとそれを支援するアメリカを排除するための独立戦争の延長。その目的のために手を組む相手が共産主義か資本主義かは重要ではなくフリーハンド。*1国内さえ未統一で軍は自らの判断で自由に敵軍と戦闘を続けている。
この違いが誤解の要となった。
戦争遂行の決定打となった南ベトナムのアメリカ軍基地攻撃も、ベトナムにとっては「たまたまアメリカの軍がいた」程度の問題で故意ではない偶然とアメリカに伝えられず、たとえ伝えていたとしても背景が異なりすぎて理解できなかったと予想される。
ベトナム戦争の休戦作業長期化は「目的やリスクが違う者では擦り合わせる要素も全く異なり、Win-Winの関係となる行動が存在するとしてもそれを実行はおろか認識もできない」ということによる失敗の歴史的実例である。
関連書籍メモ
果てしなき論争 ベトナム戦争の悲劇を繰り返さないために ロバート・マクナマラ 仲 晃 株式会社共同通信社 2003-05 |
平和構築―アフガン、東ティモールの現場から (岩波新書) 東 大作 岩波書店 2009-06-19 |