
Pー51ムスタング,D型以降 (世界の傑作機 NO. 79)
- 発売日: 1999/11/01
- メディア: ムック
「第二次世界大戦最良の戦闘機」であり、ただでさえ高性能だった P-51B/C のさらなる改良型です。わずかな空力性能と引き替えに視界を大幅改善、4丁だった機銃を6丁に強化しそれぞれの装弾数も増加、内部構造も洗練。
ただし量産開始は1944年2月と遅く配備開始からまもなく大戦の趨勢は決したため、戦争全体に与えた影響はそう大きなものではないでしょう。だめ押し、といった所でしょうか。表紙では何か Ta152 と戦ってます。
第二次世界大戦のみでは盛り込める情報がやや少ないためか、F-51 と名前を変えてからの朝鮮戦争での戦いはもちろんのこと、全面的に改設計された H型、同系統の軽量仕様を2機連結したような P-82ツインムスタング、はては1960年代の再生機キャバリア・ムスタングからターボプロップのパイパーPA-48エンフォーサーまで網羅されています。アメリカ以外での運用もしっかりカバーしていて、知ってるつもりだった有名機のマイナーな部分まで見られるちょっと渋めに仕上がった一冊です。
■P-51ムスタングの変遷ノート(D型以降)
- P-51D-NA
P-51Bを改造して作られたとみられるプロトタイプだが写真は一度も発表された事が無いらしい。(現在でも未発見か?)
NAはノースアメリカン・カリフォルニア州イングルウッド工場製を示す。
- P-51D-5-NA
これが最初の量産P-51D。P-51 は F-16 Block50 のように細かなブロックナンバーで生産管理されているのも特徴で、この点においても他国と隔絶した技術レベルがうかがえます。
- P-51D-10-NA
- P-51D-15-NA
- P-51D-20-NA
401号機以降はエレベータが全金属製。1201号機以降は 4.5インチ M10 3連装バズーカチューブ対応・ジャイロ照準器K-14搭載。1945年生産分は5インチ HVAR と AN/APS-13 後方警戒レーダー(何かがいる・いないのみを判別しランプで通知)に対応。この辺りで完成した感。
- P-51D-25-NA
- P-51D-30-NA
- P-51D-5-NT
NT はノースアメリカン・テキサス州ダラス工場製。
ブロックナンバーが同じイングルウッド工場製とほぼ同じ内容。
- P-51D-20-NT
- P-51D-25-NT
- P-51D-30-NT
- TP-51D-NT
P-51D-25-NT の外形そのままに改造して作られた複座練習機型。(複座型は全てダラス製)
- TF-51D-NT
第二次世界大戦後にテムコ社が P-51D-25-NT を改造した複座練習機。新造の大型キャノピーが特徴。今、航空ショー・体験飛行で使われているのはこのモデルか。生産数わずか15。
- P-51K
ハミルトン・スタンダード製プロペラの不足に備えて開発されたエアロプロダクツ製プロペラ装備バージョン。これも全てダラス工場製。ハミルトン・スタンダードは中空スチールの所、エアロプロダクツはソリッドアルミで、こちらの方が軽量かつピッチ変更速度も良好。しかし震動が多く飛行性能的に優れてもいない。
ヨーロッパより太平洋に優先して送られた。ヨーロッパにおいてはイギリス軍での装備率が高かった。
- F-6D / F-6K
写真偵察型。
- XP-51F
軽量化プロトタイプの1。制限荷重を7.33(アメリカ陸軍航空軍基準)から5.33(イギリス空軍基準・低すぎでは?)へ引き下げ・各部の簡素化・空力設計の洗練・オイルクーラーを冷却水ラジエータとまとめる等の基本的方針が固まる。
- XP-51G / ムスタングIV
軽量化プロトタイプの2。XP-51Fのエンジンを V-1650(マーリン)からロールス・ロイス RM.14.SM マーリン100 に換装。このエンジンは見た事も聞いたこともなかった。グリフォン・マスタングはエアレーサーのみ。
イギリスにも送られテストされた。最大速度は796km/hに達する。
- P-51H
第二次世界大戦終戦頃に開発された軽量化タイプの完成版。冷却システムのほぼ全てが内装レイアウトとなったため極度にのっぺりとした造形がユニーク。若干 F-86 を思わせる量感ある曲面を持った面構成。全機エアロプロダクツ製プロペラを装備。主に州空軍で使用された。朝鮮戦争では使用されず。
- XP-51J
軽量化プロトタイプの3。二段二速過給器を装備したアリソンV-1710-119搭載。この本では珍しい当機のレイアウトに関するちょっとした特集が作られています。
- キャバリアF-51
垂直尾翼をH型仕様の大型版に換装した再生P-51D。1967年と1972年にボリビア・ドミニカに供給。
- キャバリア・ムスタングII
エンジンをV-1650-7からマーリン620に換装、翼端燃料タンクを追加し機体強度も高め重武装化したキャバリアF-51。
- キャバリア・ムスタングIII
おそらくこれが一番の変わり種。エンジンをターボプロップのロールスロイス・ダートMk.510 1740英馬力 に換装したムスタングII。馬力的にはマーリンとさほど変わない。
- パイパー・PT-48エンフォーサー
キャバリア社から引き継いださらなる強化型。エンジンはライカミングT55-L-9 2445英馬力。1980年代までテストが行われた。T55 は CH-47チヌーク等で採用されている。
- P-82B-NA
1943年開発開始・1945年開発完了のツインマスタングの最初の量産型。D型ではなく軽量化系ベースの新開発延長胴体を連結した構造。ハワイ―ニューヨーク間無着陸飛行を達成。実戦配備数・時期ともにごく僅か。
- P-82E-NA
B-36 に追従できる長距離昼間護衛戦闘機として量産された。これよりエンジンは二段二速過給器となったアリソンV-1710。
- P-82C / P-82D
全天候戦闘機型ツインムスタングのプロトタイプ。C型は P-61ブラックウィドウと同じ SCR-720 レーダを、D型は AN/APS-4 を搭載。
- P-82F-NA / P-82G-NA
最初の量産型全天候ツインムスタング。レーダは F型が AN/APG-28。G型は SCR-720C でこちらが朝鮮戦争で敵機を撃墜している。(ただし昼間)
- F-82H-NA
P-82FとGの寒冷地仕様。暖房・除氷装置により重量が増している。アラスカ配備専用。命名規則変更後の開発で P で始まるものが存在しない。
■細々箇条書き
- イギリスとアメリカではねじ山の角度から異なっていたため、マーリンのライセンス生産はそこから始まった。英:55度 米:60度
- 図面も英:一角法 米:三角法(現在もヨーロッパ系とアメリカ系で異なるらしい)
- P-51B系と P-51D系では主翼付け根前縁の形が異なっているがその理由など詳細不明。この張り出しは H型で完全になくなった。
- 後日追記:翼内機銃を4丁から6丁に増やした関係と思われます。
- K-14ジャイロ照準器は回転する鏡を使う事でレティクルの位置を調整している。