生きている限りこの世はある
この世の主役はいつでも私だ
水星の人々と地球連邦が敵対している宇宙時代の世界が舞台。
水星の平行宇宙移動探査機「マーキュリー」と、それの世界記述知能「メイワクイチバン」は、平和的な世界や異なる物理法則を持つ世界を見つけるために平行宇宙を移動し続けていた。その最中、地球軍の迎撃機に遭遇、撃破回収されてしまう。
しかし、それを回収した迎撃隊の人々のほうが「メイワクイチバン」が記述するちょっとずつズレたおかしな平行宇宙に飛ばされて続け、振り回される。軍隊が民営化されようとしている世界、自分が死んでしまっている世界へ。「メタバタ」な物語。
どんな世界に行っても、手だけの物体になっても、狸の縫ぐるみポムポムになったりしながら世界をめちゃくちゃにしても、それでも何にも考えてない能天気な「メイワクイチバン」は可愛くって可笑しくって、かなり気に入りました。
でも、「メイワクイチバン」が宇宙を記述する度に地球の迎撃小隊の人たちが違った平行宇宙へ飛ばされてしまうという展開は、あまりにもメタフィクション的すぎて、「そんなのアリ?」って感覚。「記述」という作業が行われたその瞬間に一撃でシナリオが切断されてしまうのは、あまり好きではない。
この作家の「言葉が世界を規定する」という発想は好きだけど、この作品は出かたが生のまま過ぎたという印象。