放課後は 第二螺旋階段で

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伝説巨神イデオン 第13話 「異星人を撃て」

伝説巨神イデオン Blu-ray BOX
伝説巨神イデオン Blu-ray BOX(2013年発売)

 遺跡の星ルインズ・スターを離れたソロシップとバッフクラン軍。

 航行するは小惑星帯ニンバス・ゾーン。

 バッフクラン軍人グハバ・ゲバは指揮官ハルル・アジバから「刺し違えてでも倒して見せい。その暁にはグハバの一族郎党はドバ・アジバの名の元に護ってやろう」とまで命ぜられる。

 トミノが何かに「名誉と信頼とは本人一代のものではないのだ」といった旨のことを書いていたのを思い出します。


 一方のソロシップ。

 反バッフクラン感情が特に強いユウキ・コスモやイムホフ・カーシャ以外には受け入れられた感のあるカララ・アジバ。

 しかし、他にも受け入れられない者がいた。それはソロシップ内の緑地で農作業を行う、落ち着いた家庭人たるバンダ・ロッタ。

 「畑に生えた雑草は摘み取らなくっちゃね…」


 ソロシップ内で目に見えない不協和音が起こる中、バッフクランの攻撃が始まる。

 「教えてくれ。バッフクランは何万光年も離れた船の居場所が分かるんだ?」カララはそれに答えられない。*1

 戦闘指揮に集中するソロシップの中で、バンダ・ロッタが駆けまわりカララをつけ回す。


 戦闘終了後、バンダ・ロッタは皆が集まるソロシップの緑地に追い詰められる。
 「カララは今は仲間なのよ」とシェリルの説得。
 「今のことなんかどうでもいいのよ!」と応じられないロッタ。
 カララはそれに「でしょう。分かります」などと言ってのける。
 当然「分かるもんですか。そんな利口ぶった言葉が何になるというの?」と返すのがロッタ。
 それでも「分かります」と言ってのけるのがカララ。
 こんな返事をするから「分かるのなら死んでください!」ということにもなる。

 「お撃ちなさい、バンダ・ロッタ」

 カララ・アジバは静かに覚悟を決める。


 高貴な者の義務、それは価値ある存在である自身の生死を決めることも含まれよう。

 カララはゆっくりとバンダ・ロッタに向かって歩く。
 拳銃を何発も撃つも、外し続けるロッタ。
 カララは「しっかり狙って。バンダ・ロッタ」とまで言ってのける。

 「狙っています!」

 カララはさらに歩み寄り、ロッタは撃ち続ける。それでも一発も当てることができない。目の前まできたというのに。

 「弾が…弾が無くなっちゃった…弾が無くなっちゃったよう…弾が…弾が出なくなっちゃった…」


 弾が無くなるまで自分が死ぬことをためらわなかったカララ・アジバ。
 弾が無くなるまでカララ・アジバを仕留めようとしたバンダ・ロッタ。
 弾が無くなるまで止めようとせず本人たちの意志で決めさせようとしたソロシップのクルー。


 「みんなが立派に見える。カララも、ロッタも、ベスもシェリルもだ…悲しいくらい立派に見える…」
 ただ何となくの反発しかできなかったユウキ・コスモは自身の未熟さを痛感する。


 家庭人としての能力があることについては言うまでもなく、その上で自らの生死を受け入れその形を決め、そして他人にもその能力があると認める人間に価値を見る私にとって、この回は非常に印象的。生き方の理想型の一つ。
 ここまでされたらそれは「悲しいくらい立派に見える」というのもよく分かります…

合体メカってことは分離もできるわけで

 イデオンジグ・マックのアームで頭を捕まれたところで合体を解いて、肩より上だけで反撃を仕掛ける。人間型から外れたマシンは何だってできるのだ。

 ここでグハバ・ゲバは戦死。何だか地味な最期です。

違和感があるけれどおもしろいズロウ・ジック

 今回から本格参戦したバッフクランの三機一体戦闘機ズロウ・ジックはブースタの前と左右に1機ずつ子戦闘機がついていて戦闘時に分離するというデザイン。

 編隊をまとめて加速するメカは面白いけれど、左右分離って一体?

インテリにはインテリらしく、そうでないものはそれなりに

 カララ・アジバとジョーダン・ベスの友好関係は行き場のない指導者同士として理で走り、イムホフ・カーシャとユウキ・コスモの友好関係は戦闘で協力して一緒に動く身体感覚で走る。

 今作の主人公ユウキ・コスモの非インテリ的な感性は珍しい印象。作家っていうのは大抵インテリなものだから。

バンダ・ロッタの名演。声優は山田栄子

 トミノアニメが面白い理由のうち一つは、感情が爆発した瞬間の演技かもしれない。
 今回のシナリオはバンダ・ロッタの演技力の冴えにかかっていて、それが成功している。

伝説巨神イデオン』の監督・富野由悠季は、演技を改善する為に何回でもリテイクを許した。放送当時の出演声優達による座談会の中で、山田はこれを嬉しかったと話している。

山田栄子 - Wikipedia

 このエピソード、確認はとれませんが、しかし納得はいく素晴らしい演技。
 「弾がなくなっちゃったよう……!!弾が…!」

カララ・アジバが嫌いっていうの、撤回します

 前回分では嫌いと書きましたが、今回は「ノーブレス・オブリージュとはこのことを言う」というくらいの強さを見ました…
 バランスには欠けるけれど、強いところでは徹底的に強い。
 これが貴族というもの?

ノーブレス・オブリージュでさえ役に立たないかもしれない世界

 これは作品内での言及は一切ない要素ですが、ここでカララが死んだ場合に得るものはただ「バンダ・ロッタが無益に人を殺した」「地球人は凶悪殺人者」ということだけでしかないのではという見方もできます。
 高貴とされるノーブレス・オブリージュの行き方でさえ、大局的に見ればエゴの集積にすぎない?


次回伝説巨神イデオン 第14話 「撃破・ドク戦法」 - 放課後は 第二螺旋階段で
前回伝説巨神イデオン 第12話 「白刃の敵中突破」 - 放課後は 第二螺旋階段で

*1:答えは生体発信器が取り付けられているから…生体の力を使うと何故光年単位の距離という問題が解決されるのかな?