バッフクランに発見されて大損害を出したブラジラー基地を離れ、ソロシップは2分刻みの細切れデスドライブでバッフクランを振り切ることを狙う。
そんな中、フォルモッサ・シェリルは故郷地球で完成したらしい新型コンピュータ「グロリア」を使ってソロシップやイデオンについて調べたいなどと言い出す。
そんなところにちょうどよく、新興植民星ダボラ・スターがソロシップの受け入れを決めたとの通信を送ってくる。
助け船。あるいは誘惑。仲間割れの予感。
我慢しきれなくなったインテリたるシェリルはカララ・アジバを人質にとり、ダボラ・スター経由地球行きを狙って、ブラジラーからもらったらしい小型艇「キャリオカ」で脱走してしまう。
「もう個人的な恨みは無いのですが人質になってもらいます」
行動の是非はともかく、やり方は大人。
出発したのはいいものの、後になってダボラ・スターの受け入れ連絡はバッフクラン発信の偽情報と判明。バッフクラン軍ドク隊に拘束されてしまう。
コスモら戦闘チームは救援に向かう。
救援先ではバッフクランと出会うも、即座に戦闘とはならず交渉に。
「シェリルさんにはここで助けて貸しを作っておきたいんだ」「ここで貸しを作ってイデの研究を急がせる」
交渉準備の間に防諜のためヘルメット接触振動伝達で密かに会話する。コスモは嫌な奴だけれど賢い。
バッフクランとの交渉が一通り進んで準備が整ったところで、コスモ隊は3機に分離したイデオンと、シェリルやカララとキャリオカの交換作業を開始。
「一機前に出ろ!そしたら二人を離す!」
「移動した!パイロットと砲撃手が降りるが見えるか!?」
「よし。二人の人質を離す!いいか?」
「次は二機同時だぞ!こちらは船を離す!」
「三機目だ!変形と同時にキャリオカを返してもらう!」
このやりとりの細かさ、徹底的に信頼していない者同士の交渉らしくって納得感が高くていいですね。
最後に残ったイデオンCメカを渡す瞬間、コスモ隊は離艦する代わりに宇宙服を放出して脱出したフリをする。
Cメカに残ったコスモ隊は、バッフクラン兵がABCと全てが揃ったはずのイデオンを受け取ろうと乗り込むのを確認し強制合体、のちAメカまで戻りバッフクラン兵の頭を銃でぶち抜き射殺排除。
コスモは今までの出来事のせいで何かが切れてしまったのか、手段を選らぬ徹底的な極悪人になってしまった。主人公らしく打撃系の技で気絶させたりするような手間はかけず、迷わずヘッドショット。
敵意もなく、ただ合理的にバッフクランを仕留める。
完全な状態での鹵穫に成功するはずだったイデオンが合体したことに焦ったドクは、とりあえずといった感覚でジグ・マックでイデオンの体を掴む。この攻撃でイデオンのカーシャ担当区画が大破。カーシャは反射的に隔壁の向こうに逃げなければ死んでいた…
合体したイデオンと一対一で戦うドクの重機動メカ。
「他のサムライとは違う!私はジグ・マックを知り尽くしているんだ!」
さすがの技術系、同じ機体を使っていても戦闘力が違う。それでも勝てる見込みは全くといっていいほどない。掴んだイデオンの一部をサンプルとして引きちぎるのがやっとのままジグ・マックは後退を開始する。
そこでイデオンは肩より上だけ分離し身軽になり後退するより先に回り込み、ドク機をあっさり仕留める。
重機動メカ「ジグ・マック」の扱いに人一倍プライドを持っていたドクも、イデオンのことは分からなかった。これにてあえなく戦死。
バッフクラン軍ドク隊を撃破しソロシップに帰還したカララは脱走組の居場所を作るため、自ら犯人役をかって出る。(帰還からこのシーンへの繋ぎ方、省略が上手い気がします)
「お仲間の中にソロシップを脱走したがる方なんていません。私がバッフクランに帰りたい一心で」とカララ。
このとき、脱走組の先頭にいたシェリルをちらりと見る。
「カララのおかげで私は死ぬ思いをしているのよ!」とカララを平手打ちするカーシャ。実際死にかけた。
この事件の罰としてカララは独房へ。
しかしコスモはシェリルの様子がおかしいことに気が付いていた。
バッフクラン兵の頭を迷わずぶち抜く割り切りの良さ(人殺しが一番合理的というしかない状況)と同時に敏感さを持ち合わせるのはかれが主人公だからか。それを差し引いても、こういった感性の部分的な鈍化は人間らしいと感じる。
コスモは違和感の理由を確かめるためにシェリルの部屋へ行き、泣き崩れるシェリルを見て、真の脱走の首謀者だったことを知る。
「私だって他の人がいなけりゃカララにこんな格好いい真似はさせやない。私が脱走の張本人だって名乗ってやったのに‥‥」
「宇宙を逃げ回るのも嫌なら、カララに借りを作るなんて……カララに借りを作るなんて死ぬほどいやよ‥‥悔しい‥‥」
カララ・アジバの高貴な行動はシェリルのプライドを完全に粉々にうち砕いた。
高貴なものの生き方
カララ・アジバは、バンダ・ロッタの復讐心を引き受けるのに続いて、今度は反乱脱走の首謀者という汚れ役を全く躊躇せずに引き受けてしまいました。
凡人にはこんなこととても不可能。高貴な者は「社会的な生」の価値が「生物的な生」の価値を大きく上回っていると見ると良いのでしょうか。
一度は嫌いになったカララ・アジバがどんどん好きになってきました。
そして、それを受けて浮き彫りになるフォルモッサ・シェリルの身勝手さとプライドの高さ!
自分が正しいはず誤ってはいないはずという自惚れで悪手を打ってしまうところには強く感情移入してしまいます。この感覚は好きとか嫌いではない。
小芝居とリミテッドアニメーション
日本のテレビアニメは予算が無くて動かせないので、せっかく動かすからには何かドラマや感情を乗せることになる。
そうすると全ての動きに意味が出てしまう。表現としてノイズレス。
カララが自ら脱走の首謀者役をかってでた直後、後ろにいるシェリルをちらりと見る、他の全員は動かない、というシーンでこれに気が付きました。
とにかくクール
殺しに感情が入ってないですねこの作品。邪魔だから殺して追い払うといった以上のものがない。
戦術にしても突飛なところが無く。
時間が無いのでラストまで盛り上げる
普通の劇場映画は、ストーリー的ラストを迎えた後の時間的ラストにちょっとした説教を入れたりして、観客の頭を冷まして「行ったきり」にしてしまわないよう意識して製作されているらしいのですが、この『伝説巨神イデオン』では最後の数秒までドラマのテンションを上げ続けているので、私はこの世界に行ったきりになってしまいました…