Amazon.co.jp: すべてがEになる I Say Essay Everyday
森博嗣の一番最初の日記本。1998年分を収録。
イラストレーターの横山宏が雑誌のエッセイ*1で「人間でもメカでも何でも、初期型と末期型が一番おもしろい。初期型はデザイナの妄想がそのまま形になっているところが、末期型になると最後の足掻きでまた妄想が復活してくるところが良い。中間の間は常識的になってしまうのでどうもつまらない」という旨の話を書いていた通り、この日記本は後に出た物と比べるとかなり面白いです。
思うがままにスラスラと書いた「ハイレベルすぎる冗談」や「過激な話」がかなり多め。「馬鹿がやっていることなので放っておきましょう」とか「素敵な恥さらしでしたね」といった具合のコメントは今では絶対ありえませんね(笑)
今回も、以下特に気になった日の感想。ここで各日付に付けられているタイトルは本に掲載されているものではなく、ぼくがblog用に付けたものです。
1月27日「『体が二つあるなら僕はもっと凄い事をやっていた なんて思ったら自信家?』ってフジファブリックみたいに歌いたい気分」
この時期森博嗣は睡眠時間は5時間半、食事は1日1回、大学の仕事は15時間程度に加えて小説執筆という働きをしていたとのこと。
これがホントだとしたら、自分の生産性の低さに絶望してしまいます。自分だったら後日反動が出るくらいがんばっても、それくらいの仕事量を終わらせるには3日はかかってしまいます。。。
世の中の人が皆これくらい働いているというのなら、自分は一生かかっても追いつけないから何にもなれない!
2月21日「作家に送る手紙」
読者から「自分はこういうの嫌いです」という手紙を送ってくる人がいるけれど、そんなの意味が無い。何でそんなにガードを下げるのかなという話。ここはm9(^Д^)プギャー!!ってくらいの今では絶対ありえない語調なのでおもしろい(笑)
読者がこういうことを思ったり書いたりする感覚は分かるんですけど、作家本人に送る人がいるということは初めて知りました。そういう人は世界を革命する気でもいるのでしょうか。
4月23日「限定本」
四国の「レオマワールド」というテーマパークでは、「レオマワールド殺人事件」というそこを舞台にしたちゃんとした作家が書いた推理小説が売られていて、他所でも同様の本が多数出ているという話。
この手の本って、実物どころかネット上でさえまだ一回も見たことが無いんですが、見たことことある人います……?
5月7日「大学では駐車場使用権を一人一台許可という形でしか発行していません」
この日の記述は2003年に出た「迷宮百年の睡魔」に直接繋がっていて驚き。
やっぱり、一人の人間が持ちうるモチーフの数って限られているのかな。
5月12日「『ScaleAviation』発売」
この時期発刊された航空機模型専門誌「ScaleAviation」について「最初だけかもしれないけれど割と力が入っています」と書いているんですが、その「最初だけ」という予想は後から見ると本当に当たっていたので可笑しい。
この雑誌、初期は「航空機だけに的を絞っただけある」と思わせる専門性がすばらしかったのですが、後になると段々ネタがきれてきたのか「普通の模型雑誌の航空機コーナー拡大版」という印象を受ける単調なものへと移項してしまいました。
ごく最近方針変更をして内容を刷新したようなので、それからの内容はわからないのですが……
どういう雑誌なのかをごく簡単に紹介するために表示画像を掲載。
Scale Aviation (スケールアヴィエーション) 2006年 05月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 大日本絵画
- 発売日: 2006/04/13
- メディア: 雑誌
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5月30日「辛口書評は作家にとって無意味」
この項は、つまらないところを減らすことに拘るよりも面白いところを増やすことに集中するほうが断然大事だという話に読めた。
8月21日「ロータリーシリンダーエンジン発売」
この頃、模型用の特殊なロータリーシリンダーエンジン発売。
実際の航空機で一時期使われていた普通のロータリーシリンダーエンジンは、空冷星形エンジンのクランクシャフトを機体側にガッチリ固定し、ピストンもシリンダーも何もかもを回転させて、そこにプロペラを付ける構造をしていました。
模型用のロータリーシリンダーエンジンはそれと違って、単気筒で、ピストンは回転せず、シリンダーは中心軸で回転する構造をしているのが凄い。
どういう原理なんだろう。
ロータリーシリンダーエンジンは、滑油が飛び散ったり回転体が大質量だったりする解消不能な欠点があって後が続かず「時代の徒花」となったメカなので、情報が少なくて原理を理解するのがなかなか難しい……
そこで、検索してみたところ、日本で同様のメカニズムと思われるエンジンを販売している会社の解説ページとカットモデルを見つけることができました。
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http://www.astrohobby-izu.com/newpage11.html
解説を読んでカットモデルを見た感じだと、シリンダーは爆発力で直接回転させられるわけではなく、普通の4サイクルエンジンのクランク軸からもらった力で回ってるみたいですね。これで納得。
「ロータリー」がかかっているのは「シリンダー」のほうではなくて「シリンダーバルブ」という感じの考え方。
細い機首に収まりそうな形状と、バルブ無しでの4サイクルという要素は、模型用としてはいかにも便利そう。
自分は2サイクルやヴァンケルロータリーのインチキぽいところが好きなので、このロータリーシリンダーバルブも面白くて気に入りました。
*1:航空機模型の専門誌「ScaleAviation」掲載。この日記本にも登場しています。