放課後は 第二螺旋階段で

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「タウ・ゼロ」 ポール・アンダースン

タウ・ゼロ (創元SF文庫)
Amazon.co.jp: タウ・ゼロ (創元SF文庫)

 外部の「静止」した観察者と「移動」している宇宙船の経過時間の比は
 1:\tau , \tau=\sqrt{1-\frac{V^{2}}{C^{2}}}Vは宇宙船の速度、Cは光速)
 で表される。
 これは、宇宙船が光速に近づくにつれ外部との時間経過の差が無限大に漸近していくということを意味する。



 男女合わせて50人の乗員を乗せ、船内時間でも数年、船外時間では数十年かかる宇宙の旅に出発した亜光速恒星間宇宙船レオノーラ・クリスティーネ号。
 長い旅、閉鎖された世界、その中で宇宙船の乗員たちは小さな社会を形成する。
 だが、途中で事故が起こり、減速装置が使用不能に陥ってしまう。
 船の外は亜光速の粒子が流れ、人間などたちまち磨り潰されてしまう。修理に出ることはできない。この状態の船を修理するには、粒子が薄い空間まで飛ぶしかない。
 ならば加速あるのみ!
 宇宙船はひたすら加速を続け、光速に限りなく近づき、地球との時間差は広がり続け、他の人類とかけ離れた世界へと突入する。
 「今更減速したとして何になる?」
 それでも船には進む以外の道が残されていない。
 光速近くでの航行を続け、外部との時間差が極限にまで広がった果てにたどり着く世界は?


 速度が上がれば上がるほど吸気量が増し推力も増え無限に加速することが可能な「バサードラムジェットエンジン」というメカニズムと「タウ」の公式、このたった2つの条件から現れる究極スケールの答えは、これぞSFという感じです。
 乗員のうち多数が恒星間飛行からの帰還後地球に馴染めなかった元宇宙船乗員という設定は、登場人物たちに人間としての厚みが出ると同時に、エンターテイメントとして楽しむにはあまりにも重すぎる要素になりそうな「地球への愛着」を減らす効果があって上手いと思いましたが、そのせいでSFという枠にキッチリ嵌ってしまって発展性が無い作品になってしまっているという印象もあります。