- 作者:モリナガ・ヨウ
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 大型本
35分の1、すなわちタミヤを中心とするミリタリー・ミニチュア、戦車大砲装甲車模型を回顧するイラストストーリー。
戦車戦すら可愛く描けてそれなのに雰囲気は出ている著者の絵柄が好みで、「ワールドタンクミュージアム」では解説書もモデル本体と同じくらいに気に入っていたのでこの本を手に取りました。
私は1980年代生まれでミリタリーモデルに興味を持つのも遅く、初めからこの本の終わりにあたる144分の1完成品シリーズ「ワールドタンクミュージアム」があったくらいの冷めた世代でピンと来ない所もあるのですが、それでも丹念に作られた昭和の庶民生活を回顧するTV番組を見ているときのように、体験のしたことのない時代に対するノスタルジーを体験。
表紙のモデルは懐かしい思い出の中にある、そして今でも買えるミリタリー・ミニチュアシリーズNo.20「Sd.Kfz251 ハノマーク兵員輸送車」
模型少年あこがれの最強兵器だった「88mm砲」(現在の定価2940円)
タイガー戦車をも牽引する力で主役とコンビを組む名脇役「18tハーフトラックファモ」(現在の定価は1輌5880えん。タイガー戦車1輌を牽引するのには3輌必要!)
今現在のミリタリー・ミニチュア最新作はNo.293「ドイツ歩兵セット(フランス戦役)」
こんな長い道のりの記憶。
ただ回想するだけでなく、当時の関係者のところへインタビューに行き、ついでに金型作りまで見に行って、さらに脱線して万年塗料皿(「万年社の皿」であって「万年使える皿」ではない!)やジオラマに使うカラーパウダーの会社にまで行って…
今お店でこれといった差もなく全くフラットに並んでいる製品たちが、モデラーとそれを掬い上げる会社の人たちの夢と努力とナニモノカで出来たバックボーンを持っていると実感できました。模型業界社会科見学感覚。
模型工作の分野は新規参入する人があまりにも少なすぎるとしばしば言われますが、普通の少年でも手を入れて簡単に改良できるキットが標準だった時代に始めキットや道具や資料と共にゆっくりと進歩した人間と、始めたときからどこから見たら良いのか分からないほど膨大な資料やパーツが山ほど用意されていて目移りを通り越して目がくらんでしまう所に新規参入した人間を比べれば当然かな、ともこの回想を見ていて思いました。