戦歴としては、空戦が比較的小規模だった日中戦争とノモンハンの戦い前半が最盛期であり、第二次世界大戦の最前線で戦った機種と比べれば地味なものです。しかしながら、この機種で実戦経験を積んだ者の中から「義足のエース」檜與平*1「B-29撃墜王」樫出勇*2といった後の英傑が生まれています。
本書は「世界の傑作機」シリーズとしては初版1991年と古い部類に入るため、技術的・歴史的解説は比較的シンプルなもので模型の塗装向けの写真・図面資料に重きを置いている印象です。
箇条書きな感想
- ノモンハンの戦い前半での圧勝に気をよくした陸軍がキ43 一式戦隼を開発する際、本機以上という異常な旋回性を求める結果となりました。当然ながらそれは不可能であり2年間も開発が停止したという話には驚かされます。
- 非常にすっきりとしたデザインの機首周りは、星形エンジンのシリンダー間を機銃弾が通る構造ゆえ。モーターカノン同様に機軸と銃の射線を完全に揃える事に何か強いこだわりがあった時代の産物なのでしょうか。若干凝り過ぎ?以下の写真のように、外からは何の武装も見えない設計です。
- 重量軽減と空力のため、主翼と胴体中央が左右一体でそれに前後が取り付けられる構造‥‥ですが、それを止めるのが6mmボルト80本、5mmボルト12本というのはあまりに多すぎでは?何となく大量生産に慣れていない感があります。(先進工業国アメリカ機でも同じ位多かったらごめんなさい)
- 日の丸のインシグニアが白い帯状の塗装の上に描かれているのは防空部隊塗装であると本書で今さらながら知りました。
- 配備部隊別の記録写真集と戦歴紹介を見たところでは、本機から双発戦闘機に乗り換えた乗員はかなり多い印象です。九七式戦闘機→二式戦屠龍など。一式戦・二式戦を飛ばして屠龍へ。初めから双発戦闘機に乗るように育成された乗員は少ないためと思われます。
- 第二次世界大戦中に撮影された写真は、大戦初頭の日本本土防空のような後方寄りの部隊か、あるいは練習戦闘機部隊が大半です。練習戦闘機部隊は燃料供給都合によりアジア中の日本の占領地各地に点在するという配置で、現代の感覚で想像できぬものです。
- 自分が年を取ったせいか、人間の骨格をデッサン的に見る事に慣れたせいか、若いパイロットたちはちゃんと年齢相応20歳程に見えるようになりました。少年のようです。大戦機は現代戦闘機と異なりほとんどレース用バイク的な世界に近いため、若い方が明らかに有利であろうと思います。自分もそれ位の年代なら難なく乗れたんじゃないかなと考えちゃいます。