山口晃が東京大学出版会の雑誌「UP」に連載していたマンガが単行本化された本です。
前半は家庭も美食も全然興味がないので読むのが少々つらかったのですが、後半に会田誠と二人展をした辺りから制作関係の思考日記的内容が増えてぐっと面白くなります。
それでも私が全くの西洋美術派で、日本美術は体系化が行われていない散発的分野という位の認識なので、美術感覚にちょっとよく分からない所が。優れた作家が多数いても、前の作家を踏まえての進化という方式にはなっていないという感覚では割り切れない。
ほか、箇条書きの感想。
- 妻はギャラリストだったとは。そもそも結婚していたんですね。
- ギャラリストの海外仕事の多さ。
- 文京区千駄木辺りに住んでいたという。googleマップで見たらよさげな立地。
- 日暮里の高台に登ると幹線道路沿いのビルが街区区切りの壁のように見えるという。山口晃の絵の中のメカニカルな街のようで、これはいつか確認してみたい。2005年頃執筆分なので今はちょっと街のデザインが変わっているかな?
- ドイツのドクメンタに行った際、作品に対して政治性・社会性のテーマが載りすぎていて退屈という話に共感。現代作品のつまらないものは何を描くのか先行しすぎです。何を描くのかは空気、必然で、どう描きたいのか側に興味を持ちます。100年以上も離れたような作品では社会体制から違ってくるので、テーマ先行でもまた別の面白さが出てくるのですが……
- 絵柄に反してマンガ・アニメ・ゲーム等を見ないどころか、バイクやPC等のメカもぜんぜん使わないらしい。
- 日本の歴史画に詳しく緻密に記憶していることも相まって、何だかおじいちゃんみたいです。
- 私は日本人の平均よりも何段も知らない部類なので、こう常識のように描かれるのが不思議な感覚あります。いまいち日本に馴染めてない。別に外国人という訳でもありません。アメリカ文化との相性が良い理由のうち一つは、まだどこにもない国を自らの手で新たに作るしかない所からかもしれません。
- 日本の歴史画に詳しく緻密に記憶していることも相まって、何だかおじいちゃんみたいです。
- この作風でゲームのコンセプトアート協力など芸術系から離れた作品が無いのは何だかもったいないと感じています。
*1:このページの下段左から2番目参照。デスラー総統登場。 MIZUMA ART GALLERY 山口 晃 日清日露戦役擬畫 ed. /50 http://mizuma-art.shop-pro.jp/?pid=5204063