放課後は 第二螺旋階段で

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力づくで超音速 「世界の傑作機 No.22 ノースアメリカン F-100 スーパーセイバー」

 1950年代の米空軍テストパイロットの回顧録で非常に高評価だったので、それほどのものなのか気になって読んだシリーズその2。その1は F-101 ヴードゥー。

 音速は何とか超えられるだけで実用上無意味、ベトナム戦争期の最弱体機という印象もありますが、1954年の配備開始当時は P&W J57 の搭載により最もパワフル、そして何よりこの機の経験なしに後に続く機は生まれ得ませんでした。

 最大速度は海面高度でマッハ1、高度10700mでもマッハ1.285 とあまりにも差が小さく、ここは後のインテイク設計進歩による推力向上を特に感じさせるポイント。

 超音速飛行中の横転でロールカップリングを起こしねじれるような動きを止めることができなくなりそのまま空中分解する試作機・初期型の特性は恐怖です。これは垂直尾翼の高さ増加で改善されます。超音速飛行により各安定翼の効果が失われる、不足する原理はこう実例を見るまで知らないことさえ知りませんでした。

 本機を含むセンチュリーシリーズ各機が、些細な操作ミスあるいは厳しすぎる制限の超過でたちまち空中分解もしくは操縦不能となる記録を見ていると、超音速飛行に慣れるためだけの高等練習機 T-38、ジャギュア、T-2 などが開発された時代の感覚が見えます。

 ほか、F-100 を原型とした YF-107 ウルトラセイバー の話も収録されています。

■細々箇条書き

  • 出現時期の関係で空中戦に並び核兵器投下能力を重視。動画サイトで時々ネタにされるロケットによるゼロ距離発進装置は、核攻撃により滑走路が消滅しても能力を失わないためのもの。F-100D-90 (Block90) では標準対応。でもこんなものが開発できるなら、無人巡航ミサイルでいいのでは。誘導・照準が人間によって行われる点は優位かもしれませんが着陸不能なのは変わらず、ごく限定的です。
    • 見た目の不安定さにもかかわらず発進成功率は十分高く実用化の域にあったらしい‥‥
      • MGM-13 メースB の完成により配備は無し。

↓ゼロ距離発進 ZELL (Zero Length Launch) の使用シーン

  • 航続能力も安定性もそう高くないセンチュリーシリーズの話を続けて読むと、飛行中は燃料のことばかりが気になり、空中給油はありがたく、しかしその最中タンカーに接近した状態で増え続ける重みを支えるのは若干の不安を感じるだろうなどと想像します。
  • F-100C までの型は主翼にフラップが無かった。エルロンリバーサル抑止のために内翼エルロンを装備していたため。まるで B-47 ストラトジェット。高揚力装置は前縁スラットのみ。攻撃機適性が高められた D型以降は内翼部が増積されると共に後縁フラップ追加。
  • YF-107 の現代の感覚から見ると雑すぎるエアインテイクの配置は核兵器を安定して投下するために下面の気流をクリーンに保つもの。戦闘機なら Mig-21 から Ye-8 への進化くらい頑張って欲しかった。無理かな。http://ja.wikipedia.org/wiki/YF-107
  • F-100 の空中分解多発によるトラウマから採用されたのかオールフライング式の垂直尾翼のほか、スポイラーによるロール機動も盛り込まれていた。
  • F-100 サンダーバーズの解説では、1959年のアジアツアーで演技を終えたパイロットに歩み寄る源田実と、もう一人として徳川好敏が登場。日本初のパイロット、アンリ・ファルマン世代も超音速時代にまだ存命だったとは。1884年生の75歳と超高齢でもない。航空の進歩の速さを感じます。
    • この年は嘉手納(アメリカ領)、板付、三沢、ジョンソン(入間)、横田で演技が行われた。
  • テイルコードが使用されるようになったのはベトナム戦争の迷彩化からで、それ以前は部隊マークのデザインでグラフィカルに識別していたらしい。
  • 日本では 板付に 8th TFW (Tactical Fighter Wing)、嘉手納に 18th TFW、三沢に 21th TFW でそれぞれに3コ飛行隊が配備されていた。
  • 「核弾頭搭載の AGM-12D ブルパップ を目で見てラジコン誘導するとは本当なのだろうか?炸裂時に目が焼けてしまうのでは?」という疑問が本書に掲載。私も気になります。いくら核時代とはいえ事実上の自爆攻撃はさせないはず‥‥かな?確信はできないのがこの時代。