第二次世界大戦末期ともなるとアメリカ海軍が毎週竣工させており、その生産性に比して非常に高い戦果を上げた艦種である護衛空母全体を概観する一冊です。
しかしながら、護衛空母が最も活躍したとされる大西洋における対潜哨戒効果は実は限定的で、実際にはアイスランドの航空基地から出撃するB-24系哨戒機がGIUKギャップ(グリーンランド・アイスランド・ユナイテッドキングダムの間にあるチョークポイント)を埋めた事が支配的であり、この本に書かれている内容は誤っていると事前に知っていたため、若干奇妙な読書となりました。
戦果に関する既述がずれていると認識していても、各艦型の基礎的なハードウェア的な知識を得ることはできます。
また、航空機輸送任務の重要性を学びました。太平洋も大西洋も、前線で使われている単発機はだいたい護衛空母で運ばれているようなものなのです。この点はもう少し掘り下げたくなる要素です。
アメリカ海軍特有の一線級戦闘機・攻撃機を満載した護衛空母はほとんど太平洋のみにおいてみられたものであり、これの成立経緯を考慮すると、日本の護衛空母システムは機材・人的資源枯渇の両面で史実程度が限界であるという確信も得ました。
細かめの話になりますが、よく調べられた本であるにも関わらず参考文献リストが一切ないのは大変残念です。めくるめく護衛空母ワールドへの道筋が見えない‥‥!