第二次大戦の歩兵対戦車戦闘 (オスプレイ・ミリタリー・シリーズ―世界の軍装と戦術)
- 作者:ゴードン・L. ロトマン
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 単行本
World of Tanks において完全に省かれている要素の一つとして「歩兵による対戦車攻撃」があるため気になって読了。英語版では Osprey Elite シリーズの一冊です。
この本を通して、歩兵対戦車火器の多種多様さに驚かされます。パンツァーファウストやバズーカ等のロケット推進成形炸薬弾以前にも、対戦車ライフル・ライフルグレネードの成形炸薬弾・火炎瓶・投擲爆薬・収束手榴弾等々がそれぞれに適した陣地を構築して弱点を狙っています。
これではアルデンヌの森を事実上通過不能と判断するのも分かります。見通しの効かない森は、単に走行するだけなら可能でもわずかな陣地により多大な被害を受けるでしょう。
重戦車が軽火器により履帯を破壊され身動きが取れなくなった所、次は小さな操縦手視察孔への狙撃を受けて破壊されるシーンなどはゲームでも見慣れたものです。
周到に用意された陣地と訓練された歩兵は負けない。
特に日本兵は。
箇条書きメモ
- アフリカの戦いで特に多数の地雷が使用されたのは、何の障害物もない砂漠に防御用地形を作り上げるため。地雷を避けるために動く戦車は対戦車陣地に弱点をさらしている。
- 地雷の特性は有刺鉄線に近い。火力を撃ち込みやすい防御に適した地形を作るが、単独では簡単に撤去される。
- マインプラウ仕様の戦車が作られる理由もこれで理解。火力下でも地雷原を突破する手法である。
- 地雷の特性は有刺鉄線に近い。火力を撃ち込みやすい防御に適した地形を作るが、単独では簡単に撤去される。
- 歩兵・工兵・砲兵・機甲の協調がどれほど強力なのかこれで実感。
- 歩兵と戦車で無線の周波数は合わせられていないため意思疎通は困難であった。
- 戦車騎乗兵はネタにされがちだが、がむしゃらに突っ込んで撃たれるままにしている訳ではなく、偵察機・軽戦車大隊・偵察兵などが先行して脅威度が高い地点をある程度把握しているはず。適切なタイミングで降車できれば「装軌機械化された随伴歩兵」であり戦車の戦闘力をさらに引き出す効果が高いと思われる。
- 現代の兵士は何故歩兵戦闘車から降りるのか?と考えると‥‥
- 走行中奇襲に気がついた時の連絡のしようのなさは想像するだに悪夢だが‥‥
- 現代の兵士は何故歩兵戦闘車から降りるのか?と考えると‥‥
- イギリス軍が装備していた PIAT はバネで成形炸薬弾を撃ち出し、そのバネを縮めるのに90kgの力が必要なことがネタにされがちだが、地面に仰向けに寝て背筋力測定のように単脚に足をかけて全身で後部ハンドルを引くとそう大変な数字ではなさそうだ。バックブラストもない。
- 現代の日本人男性平均背筋力は120kg以上。
- ただし相応の発射反動はあり命中精度は最悪。
- 現代の日本人男性平均背筋力は120kg以上。
参考画像:オードナンス QF 6ポンド砲 - Wikipedia
- 日本軍は槍の先に成形炸薬弾を取り付けた刺突爆雷を多用していたが、これをなぜ榴弾砲や無反動砲で撃たなかったのか不明である。スタンドオフ距離を保つための針状構造物のデザインから、適合する信管や風防を製作できなかった、もしくは単なる「コストダウン」であろうか?
- 火炎瓶はエンジンが動いている車両に対して有効。エアインテイクの吸い込みを使って破壊力を増大させる。戦車は車重が重くフルパワーを出していることが多い。
- 航空偵察で履帯跡を見られて発見される戦車は少なくない。
- 戦車に対する恐怖心を克服するため、壕の上を戦車に通過させる訓練が行われていた。本当なのだろうか?
- 歩兵による肉薄攻撃対策に砲塔後面に機銃をつけた戦車もあるが、採用したのはソビエトと日本のみ。
- 戦車の砲と装甲について「ただし日本とイタリアは除く」という描写が多数。この二カ国が後れを取ったのは確か。
- ジークフリート・ラインの永久要塞でも野戦築城比で+15%の防御効果でしかない。半遮蔽陣地(とは?ハルダウン+カモフラージュネット?)に納められた戦車と突撃砲は+40%もの防御効果を得てトーチカよりも脅威度が高くなる。
- この本は高価‥‥同人誌感覚である。